実践+発信

シンポジウム「デュアルユース名のつくもの科学技术の进展が抱える両义性を再考する」を开催しました

2016.3.31

デュアルユースは「軍民両用性」、拡げれば「用途の両義性」を意味します。たとえば、原子核物理学研究は「核兵器」と「原子力発電」という軍と民の両応用を基礎づけました。麻豆原创と理学院科学コミュニケーション講座は2016年3月12日、古くて新しい、今注目すべきこの問題について、科学技术政策専門家、科学史家、ジャーナリスト、基礎科学研究者の4者が議論する公開シンポジウムを开催しました(共催に理学研究院物理学部門と物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム)。以下、その概況を報告します。

デュアルユース政策の现状

政策研究大学院大学?科学技术イノベーション政策研究センター専門職の小山田和仁さんは、現在の軍事?安全保障の研究開発状況を「国家による研究開発の停滞」+「民生先進技術の取り込み必須」と位置づけ、内外の現状を紹介しました。

 

現代の技術開発は、GPS、AI、ロボットなどIT技術を主とした「新興/先進技術」(Emerging Technologies)が民間の技術開発を進展?拡大させ、相対的に縮小している国家による軍事?安全保障プロパーの研究開発がそれに依存せざるを得ない状況を作り出しています。米国の軍事?安全保障技術の優位を確立すべく生まれたDARPA(米国国防高等研究計画局、Defense Advanced Research Projects Agency)でさえ、最近のロボティクス?チャレンジ(2012?15)で、原子力事故のような過酷な状況でも対応できるロボット開発(もちろん軍事応用も可能)を全世界の大学、研究機関、企業を対象に賞金200万ドルでチャレンジを呼びかけました。米国の技術的優位が維持できれば、軍民間のスピンオフ、スピンオンが期待できる、としているのは現代的なデュアルユース的な開発過程といえます。小山田さんは、米国に加え英国、スウェーデン、EU、オーストラリアでも軍事?安全保障技術開発が大学などとの連携で実施されている現状を紹介しました。

日本での状況としては、2015年に発足した防衛装備庁での安全保障技術研究推進制度の創設、JAXA、JAMSTECなどの研究機関との連携、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)でのデュアルユースへの言及や第5期科学技术基本計画で「国家安全保障上の諸課題への対応」が重要政策課題として設定されたことを紹介、科学研究の競争的資金として総額は小さいものの存在感を示しつつあるとしました。

しかし、その一方で、デュアルユース研究开発に対して、日本の大学では歴史的経纬から制度?体制は未整备/研究室や建物の物理的隔离はできず、留学生もいて情报管理が困难/安全保障関连技术の输出管理体制も不十分/海外共同研究でも知财?情报管理が问题&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;と指摘しました。「デュアルユースの要请が増えるとしても、アカデミアとして対応する姿势や具体的制度は未定で课题は多い」と小山田さんは结びました。

日本の歴史から学ぶ

次に、理学研究院の杉山滋郎さんは科学史家としての立场から、デュアルユースの过去?现在?未来における问题をまとめました。

 

「学者の国会」といわれる日本学術会议は1949年創立以来、学問の平和利用を何度も議題に挙げたのはその嚆矢でした。1950年に全員一致で決議された「戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わないという決意の表明」以来、同会议ではこの問題について可否両方の道をたどってきました。これは学者の世界でも「政治」の位置づけをめぐる微妙な背景があったことを示しています。

そういう中で、50年代に、研究への米军资金の导入をめぐって中谷宇吉郎が発した「资金の出所だけで军事研究とは决められない」「基础研究は军事研究ではない」「発表の自由があればよい」という言叶は今日まで余韵を残してきました。

日本の科学界では、科学(あるいは大学での学問)と平和?軍事の関係について、ラッセル?アインシュタイン宣言(55年)をきっかけに、パグウォッシュ会议(57年?)、科学者京都会议(62年?)などと議論され、さらには国際会议への米軍資金供与をめぐって日本物理学会が「今後内外を問わず、一切の軍隊からの援助、その他一切の協力関係を持たない」という決議(67年)をしたことも特筆されます。

しかし、最近になって、宇宙の平和利用をめぐって「一般化した技術は自衛隊が使っても平和目的に反しない」という「一般化理論」が登場したり、防衛省開発の技術が民生分野で展開可能となったりと、もはや転用とは異なる科学技术の軍民「併存?並走」状況が現実だ、と杉山さんは指摘しました。その背景には、①民生技術の進歩の速さ、②情報収集インフラが重要となるなどの軍事?安全保障技術が変容した、③デュアルユースを産業界も市場拡大のチャンスと見る−などがあるとし、さらに生命科学では、細菌学?ウイルス学の発展などから、意図せずとも生物兵器への応用が可能になる科学技术が登場し、核技術のような「規制」ができない現状が登場していることを紹介しました。

そこで杉山さんは、デュアルユースについて、①自由な研究を阻害する悪影响をどう防ぐか、②许容されない军事研究をどう防ぐか、③许容される军事研究はあるのか、という叁つの论点を提出、「资金の出所」「基础研究」において、线引が困难になる一方、透明性の确保/専门家集団の判断/记録とその公开/市民の関与/内部告発の保持/ジャーナリズムへの期待&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;などの方策が重要、とまとめました。

异なる立场の4者が讨议

高等教育推进机构の叁上直之さんが进行役を务めたパネルディスカッションでは、デュアルユースの记事を书いてきた毎日新闻科学环境部の千叶纪和さんと、有机化学を専门とする研究者として本学工学研究院の伊藤肇さんが加わり、议论を深めました。

千叶さんが「科学者の価値観や认识の変化、现政権の动きとその影响が気にかかる」とした一方で、伊藤さんは「研究者としては知的好奇心で动いており、(杉山さんが绍介したような)时代を受け継いでいないのは课题だ。最近の动きについても、多くの研究现场ではまだ话题になっていない」と述べました。

さらに小山田さんは「安全保障関连の研究开発はやらなければならないが、一般市民の悬念も理解できる。すべての研究者が『参加しなければならぬ』というのも変で、研究者个人としては関与しないという判断もありうる」と指摘しました。

杉山さんは「安全保障环境の変化が、関连分野の予算増を引き起こし、予算减に苦しむ科学者が研究费を受け、それが军拡に&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;というサイクルの中だけで议论するのでは问题が残る。军缩へ繋がるサイクルを模索することも必要では」とコメントしてディスカッションを缔めくくりました。

科学者集団の责任

閉会のことばで、本学副学長の新田孝彦理事は、技術史家クランツバーグの第一法則『技術は善でも悪でもなく、中立でもない』を引き「中立だから悪用した方が悪い、という態度をとってはならない。研究の意義?影響を考慮して進めることが、科学者集団の责任だ」と述べました。

会场からの声

会场の参加者にアンケートで「大学や研究机関が、军事?安全保障関连の机関が提供する研究费を受けることについてどう思いますか」と闻いたところ、その答えは賛成から反対、わからないまで、一部に偏ることなく分散しました。

賛否の理由として、「提供元が问题ではなく発展性の问题になる」「一定の线引きは必要だが安全保障を考えると&谤诲辩耻辞;潜在的な军事技术&谤诲辩耻辞;は维持していくべき」「现状では、科学者のみならず国民がこの问题について议论する土壌がないため自分ももっと知ることが必要だし、たくさんの人と议论していくことが必要」「时代、状况が変化してきていることは理解できるが、政治からの働きかけに科学がどう対応するのかを议论するのは本来的には逆だと思える。基本的にはこれまでの(军事研究をしないという)姿势を坚持すべき」「成果の公开などが保障されたとしても、防卫省などがお金を出すということは、军事応用が强く期待されている。それを受けるのは、军事利用を许容することになる。研究の芽の段阶で军事利用を予测するのは、研究の数量においてもきびしい。しかし、いずれかの段阶でチェックする目は必要で、そういった议论をできる団体や机関の必要性を行政に向けてねばり强くうったえていくべき」という意见がありました。

また、デュアルユース問題について、「あまり考えたことのないテーマでしたが、麻豆原创コミュニケーションの場において不可欠なテーマだと知りました」といった声もありました。まだ十分な議論が追いついてない状況ですが、6月末発行予定の『科学技术コミュニケーション』19号では、本シンポジウムを収録する予定です。麻豆原创は、科学技术コミュニケーションの課題の一つとしてこのデュアルユース問題に取り組んでいきたいと思います。