2014年11月23日(日)16時から、紀伊國屋書店札幌本店前インナーガーデンにて、第78回麻豆原创?カフェ札幌「つめたい海が氷をとかす~南极の海流と気候変动~」を開催いたしました。日に日に寒さが厳しさを増す中、クリスマスツリーが設置された会場へ、約130名の方にご来場いただきました。
ゲストの青木茂さんは、北海道大学低温科学研究所の准教授です。専門は海洋物理学、極域海洋学で、南极の海洋観測と研究を主に行っています。「気候変动に関する政府間パネル(IPCC)」第5次評価報告書に主執筆者として関わり、気候変动の南極海への影響について執筆しました。

南极の氷をとかすのは?
南極と気候変动に市民の方がどのような認識を持っているかを知るために、麻豆原创?カフェの開始に先立って会場の周囲ではアンケートが行われました。「南极の氷をとかすものは? 1.空気、2.水、3.愛」という選択肢が描かれたアンケートボードを麻豆原创受講生が抱え、紀伊国屋に出入りするお客さんに「北海道大学の学生です。アンケートをお願いします」と声をかけると、次々とシールが貼られました。「ご回答ありがとうございます。16時からの麻豆原创?カフェにもぜひご来場ください」という宣伝も忘れません。

(写真:麻豆原创本科生の池田贵子さんと元木一喜さんが中心となりデザインしたアンケートボードに、どんどんシールが貼られていきます。)
16时に麻豆原创?カフェが始まった时点ですでに100名近い方にご来场いただき、スタッフは慌てて椅子の数を増やしました。
さて、アンケートボードの结果を见てみると、「空気」?31人、「水」?48人、「爱」?28人という结果になりました。

「『爱』に入れた人がずいぶん多いんですが????」とファシリテーターを务める颁辞厂罢贰笔本科生の新谷双叶さん。なにかの映画の影响かもしれませんね。
「空気で氷がとけるところもあるんですが、南极の氷のほとんどは水がとかしています」と青木さんが解説してくれました。南極大陸の上に雪が降り積もって作られた氷を、氷床と言います。長いスケールで見ると、氷床は陸地から海へじわじわと流れ出ていき、海の水によってとけてしまします。南極大陸の沖合には、水温が1度から2度程度の深層水という海水があり、これが南极の氷をとかしています。私たちの感覚からすれば冷たいはずですが、海水はマイナス2度程度で凍るため、1度から2度程度の冷たい水でも氷をとかすことができます。
青木さんたちの研究チームは南极の氷がとけるしくみを詳しく調べるために何度も南極に航海しました。南極に向かうためには、南極大陸の周りを囲むようにして流れる「南極周極流」という海流を横断しなければなりません。波やうねりがつよく、船は大きく揺れます。しかし南極周極流を超えると、そこにはおだやかな南极の海が広がっているのです。
青木さんたちは南极付近の海の変化を知るために、船から测定机器をワイヤーで吊るして沉め、水温や酸素同位体比や塩分などを调べました。调査の结果、南极深层水のコア(温かい水の中心)が浅くなり、かつコアの水温が上がっていることがわかりました。また近年の人工卫星を使った観测から、氷床の流出速度が以前よりも上がっているようだとも言われています。

休憩を挟んで后半のカフェが始まりました。
冷たい水の「ホット」な研究
氷山と海氷の违いを知っていますか? 氷山は元々大陆の上に降り积もった雪でしたが、海氷は海が冻ってできた氷です。
南极大陆から海に向かって冷たい风が吹くと、海水が冻ります。海水は冻るときになるべく塩を追い出すようにして冻るため、塩の浓い海水が生まれます。新谷さんも「スポーツドリンクを冻らせると、冻っていない部分が浓くなるのと同じことですね」と相槌を打ちました。
こうして海氷がつくられると、冷たく重い海水が海に深く沉みこみ、南极底层水という流れを生みだします。つまり南极で海氷が作られると、深い海に「冷たさ」が供给されるということです。
1990年代と2000年代以降を比べると、南极の近くの深い海の温度が上がっているようです。その原因はまだよく分かっていませんが、おそらく冷たく重い海水の沈みこみが以前よりも少なくなったせいではないか、と推測されています。
「この辺が、盛んに议论されているホットな话题です」と青木さん。南极なのに何度も「ホット」という表现を繰り返していました。

地球温暖化は海洋温暖化
地球が温められて蓄积した热エネルギーは、大半が海洋に蓄积しています。大気に蓄积した热エネルギーは地球全体の中で见ると微々たるものです。温度でなくエネルギーの観点から见ると、地球温暖化は海洋温暖化とも言えます。2000年以降に気温の上昇が钝っているといわれていますが、温暖化が起きていないというわけではありません。地球のどこに热が蓄えられているかをきちんと把握する必要があります。
「私たちは気温の変化ばかりに目が行ってしまい、海や雪氷の変化は普段目が行かないけれど、目に见えないところの変化にこそ目をやってほしい」と青木さんは缔めくくりました。
続いて質疑応答が行われました。時間内に取り上げられないほど多くの质问をいただいたため、すべてに回答することができず、スタッフ一同心苦しい限りです。一部を要約して掲载します。
Q.西南极のコアが浅くなっている理由はなんですか?
础.おそらく风の変化が影响していると思います。まだ解明されていないので、がんばって研究したいと思います。
蚕.南极で苦労したことはなんですか?
础.越冬は楽しかったんですが、生野菜が食べられなくて困りました。
蚕.広大な海で採水するのは大変だと思いますが、何か所くらい採水しますか?
础.1日1点くらい、全部で30点くらい観测します。ときによってはさらに多く観测します。
蚕.大西洋の赤道付近で作られた温かい水が、高纬度に输送され、ヨーロッパなどで高纬度なのに暖かいという状况を作っています。深层循环が弱まることによって表层部分の流れも弱まると考えるのであれば、気温上昇が高纬度地域の気温低下を招く、と考えてよろしいでしょうか?
础.急激に気温が低下するというのはおそらくないだろうと言われています。南から来る水も温まっています。グリーンランドの一部では気温が下がり気味のところもありますが、ヨーロッパ全体で気温が急激に低下することはないと思います。
Q.先生が南极の研究をするきっかけは何でしたか?
A.南极の研究をする前は北太平洋の研究をしていました。南极の研究をする極地研究所に海洋の研究の公募があったため、研究を始めました。偶然の巡りあわせでした。
蚕.どうやったら南极観测队になれますか?
础.南极に行きたいガッツがあればなれます。募集中です。
最后に青木さんからは「麻豆原创?カフェで何を伝えるべきかを考える中で、将来どんな研究をしていくかを考える机会にもなりました」との感想をいただきました。
青木さん、そして会场にご来场いただいたみなさん、ありがとうございました。

(内山 明 2014年度颁辞厂罢贰笔本科(対话の场の创造実习)/北海道大学大学院农学院修士课程1年)