2026年3月7日(土)13:00-15:00、北海道大学工学部フロンティア応用科学研究棟2Fレクチャーホールにて、2025年度麻豆原创修了记念シンポジウム「动物を『育てる』『観せる』『伝える』──饲育?造园?展示から考える、动物园という场」を开催しました。
2025年度の颁辞厂罢贰笔受讲生と一般参加者、合わせて114名もの方が来场しました。

动物园について、新たな角度から考える机会に
札幌のとある動物園の閉鎖や、上野動物園のパンダの返還など、最近、動物園に関するニュースが多い印象です。こうした状況を背景に、2025年度を締めくくる修了记念シンポジウムでは、「動物園」をテーマに、改めてそのあり方を考える機会としました。

はじめに、开会にあたり、颁辞厂罢贰笔の奥本素子部门长より挨拶がありました。颁辞厂罢贰笔では修了后も学びを継続し、社会の中で问い続けてほしいという思いから、毎年その时々の社会的课题や関心の高いテーマを取り上げ、共有の场としてシンポジウムを开催していると述べました。
近年、科学技术は単なる活用にとどまらず、倫理的?社会的観点を踏まえた実装のあり方が問われています。しかし、こうした議論は人間中心の視点に偏りがちであり、それが環境問題や持続可能性の課題とも深く関わっているのではないかとの指摘がありました。
今回のテーマである「动物园」は、人间以外の生物の视点から环境や社会を捉え直す刺激的なテーマとして、本シンポジウムが参加者に新たな视点をもたらし、ものごとを多角的に考えるきっかけとなることへの期待が示されました。

次に、本シンポジウムの聞き手役を務める麻豆原创特任助教の大内田美沙纪より、企画趣旨の説明が行われました。冒頭では、自身が制作したビジュアルを提示し、今回のゲストの若生謙二さんと本田直也さんが関わる複数の動物園展示の要素を組み合わせた「架空の動物園」を紹介しました。あわせて、生息環境展示が本来目指すのは、個々の展示を超えて動物園全体を一つの関係性として設計することである点に触れ、本ビジュアルはその厳密な再現ではないことを補足しました。
そのうえで、本シンポジウムでは、饲育?造园?展示といった異なる視点から、动物园という場の成り立ちや背景、そこにある制約と可能性、そして何を伝えようとしているのかについて、多角的に捉えることを目的としていると説明しました。
生息环境展示がひらく、ヒトと动物の関係
続いて、动物园デザイナーとして全国の多くの展示に携わってきた若生谦二さんによる讲演が行われました。若生さんはまず、野生动物の生息环境と暮らしを「可能な限り」植物や地形によって再现するという基本姿势を示し、こうした考え方に基づく展示を「生息环境展示」と呼ぶと説明しました。これは、动物に本来の行动や习性を発挥させるとともに、来园者の理解を深めるために不可欠なものです。

讲演では、ときわ动物园の事例が绍介されました。しなる木々を活かした环境の中でテナガザルが活発に动く様子が映像で示され、人工的な鉄パイプでは引き出せない行动が生まれることが强调されました。また、鉄素材は热伝导率が高く、动物にとって快适とは言えない场合がある点にも触れ、素材选択の重要性が示されました。
展示设计においては、まず「メッセージの创出」を重视し、意図をもった空间づくりが必要であると述べました。加えて、敷地内外の环境を読み取ることや、生息地のランドスケープを理解するための现地调査を欠かさないこと、さらに堀やネットなどの囲いをランドスケープとして活用することなど、具体的な设计の视点が绍介されました。
また、動物を見下ろすのではなく見上げる関係性を重視する姿勢や、樹木の移植に立ち会うといった実践にも触れられました。こうした取り組みの積み重ねが、生息環境展示の質を支えています。さらに、この考え方が中学校理科の教科書に掲载されたことにも言及し、社会的な認知の広がりへの手応えが語られました。
最后に、动物福祉について、环境の充実と行动の选択肢を広げることの重要性が示されました。土地や植物といった「见える环境」と、温度や湿度などの「见えない环境」の双方を整えることが不可欠であり、生息环境展示はその実践であるとまとめられました。
饲育と保全をつなぐ実践知と環境デザイン
続いて、本田直也さんによる讲演が行われました。本田さんは、円山動物園で長年饲育技術者として勤務した後に独立し、現在は生息域外保全センターの運営と動物園デザインの両面から活動を展開しています。

讲演ではまず、恵庭市に设立された保全センターについて绍介がありました。学校法人と连携することで、収益性の低い保全事业と教育を両立させるモデルを実现しているといいます。本田さんらの専门性は特定の动物种ではなく「环境のデザイン」にあり、建筑环境学の知见を活かして、施设内に高山帯から热帯まで多様な环境を再现しています。环境省からの依頼にも応じながら、多くの絶灭危惧种の保全に取り组んでいます。
また、野生動物の保全研究には、生息域内の研究者と動物園などの生息域外の饲育技術者との連携が不可欠であり、双方の視点から知見を積み重ねることの重要性が示されました。動物園は世界的なネットワークの中で命をつなぐ役割を担うとともに、展示や饲育を通じて来園者の保全意識を高める場でもあります。
さらに、本田氏は饲育における「実践的知」のあり方についても論じました。饲育は多くの要素が相互に作用する複雑な営みであり、単純化せず全体として理解する必要があります。その中には、言語化?数値化できる「形式知」と、経験に根ざした「暗黙知」があり、とりわけ後者が重要な基盤となります。ベテラン饲育員は、状況に応じた判断を直感的に行うことで適切な対応を導き出しており、こうした知は容易には言語化できません。
動物との関わり方については、擬人化する「一人称的かかわり」や、距離を置いて観察する「三人称的かかわり」に対し、相手の環世界を共有する「二人称的かかわり」の重要性が強調されました。饲育技術者はこの二人称的な関わりを通して動物を理解し、その知見を言語化していく役割を担います。
最後に、保全センターではこうした知を育むための教育にも取り組んでいることが紹介されました。身体的な経験を通じて暗黙知を形成し、それを言語化?論理化し、最終的に体系化?概念化していくプロセスが、饲育と学びの両面において重要であるとまとめられました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、事前に実施したアンケート结果を见ながら议论が进められました。来场者が动物园にどのような関心やイメージを持っているのかを手がかりに、日本の动物园の现状や役割、展示の考え方について话し合いが行われました。
議論は、教育?保全?レクリエーションといった動物園の役割に加え、ヒトと動物がどのような関係を築いていくのかという点にも広がりました。若生氏の展示デザインの視点と、本田氏の饲育?保全の現場からの視点が交わり、それぞれの立場から動物園のあり方について考える時間となりました。

なお、本パネルディスカッションの详细およびアンケート结果については、今后 JJSC にて公开を予定しております。ぜひお楽しみに!

新たな視座とともに ― 閉会の挨拶
シンポジウムの最后には、松王政浩センター长より闭会の挨拶がありました。松王センター长は、かつての天王寺动物园の印象に触れつつ、今回の讲演を通して动物园や动物に対する见方が大きく変わったと述べました。

若生さんの讲演からは、生息环境展示によって动物にとって过ごしやすい环境を実现しながら、「见下ろすのではなく见上げる」という関係性を通じて动物のストレス軽减を図る新たな取り组みを知ったといいます。また、本田さんの讲演からは、小さな絶灭危惧种の保全に向けて、生息域内外の知见を统合しながら取り组む実践の重要性と、その中で暗黙知を言语化?体系化していく试みの意义が示されたと振り返りました。
こうした話を踏まえ、ヒトと動物の関係は単純な対立ではなく、多様なコミュニケーションの上に成り立っていること、さらにその視点は科学技术コミュニケーション全体にも通じるものであるとの考えが示されました。特に、どちらか一方に偏らない「第三の視点」をいかに見出すかが重要であり、それは容易ではないものの、現場での実践を通して形づくられていくものだと述べました。
最後に、このシンポジウムが修了生にとって自身の視点を見つめ直す契機となり、それぞれの場で「第三の視点」を問い続けながら科学技术コミュニケーションを実践してほしいとの期待が語られ、締めくくられました。

动物园というテーマを通して見えてきたのは、ヒトと動物の関係の奥深さ、そしてものごとを多角的に捉えることの大切さでした。本シンポジウムで生まれた問いや気づきが、これからの実践の中でそれぞれの形に育っていくことを願っています。