宮内 紗久良(2025年度選科B受講生)
麻豆原创での学びもいよいよ最後のモジュールとなりました。モジュール6では、「社会における実践」として、科学技术コミュニケーションの分野で積極的に実践活動をされている方々からお話を伺います。モジュール6-1の講義では、「大学の先生芸人」という異色の肩書きをお持ちの黒ラブ教授先生をお招きし、科学にあまり関心がない人へ科学を魅力的に伝えるためのポイントと、先生が取り組んでおられる実践内容について伺いました。

「大学の先生芸人」って?
学生时代から麻豆原创コミュニケーターを志し、特定の専攻にこだわらず幅広い分野を学んでこられた先生。现在は、大学で科学の伝え方に関する研究を进めるかたわら、吉本兴业所属のお笑い芸人として日々ステージに立っていらっしゃいます。もともとはお客さんが笑って科学を学べる「科学漫谈」を中心としたネタを披露していましたが、最近では公司や国からの依頼で科学実験とお笑いを组み合わせた「実験お笑いワークショップ」を実施する机会も増えているそうです。そのほかにも、テレビなどのメディア出演、本の出版、科学馆の特别展のプロデュース、笔辞诲肠补蝉迟での配信など、幅広く実践活动を行っておられます。
先生の実践活动の大きな特徴は、お客さんに「理科嫌い」の人が多いということです。一般的な麻豆原创ショーは小中学生向けのものが多いのに対し、よしもとの剧场の客层は高校生以上がほとんど。小中学生に比べて理科嫌いな人の割合が増えるため、よりアウェーな环境になります。时にはお客さんから「せっかくお笑いを见に来ているのに、わざわざ勉强の话なんて闻きたくない!」という反応をされることもあったそう。とはいえ、そんなお客さんにも楽しんでもらいたい。そうした思いで、理科嫌いのための科学コンテンツに力を入れていったといいます。

わかりやすく、魅力的に伝える
「大学の先生芸人」である先生が専門とするのは、科学技术コミュニケーションとお笑い。これらには実は共通点も多いといいます。
例えば、人が笑うまでの過程は、①わかりやすい、②楽しい、③(笑うまでではないが)おもしろい、④笑う、の4つの段階に分けられます。数字が大きいほど技術力が必要であり、日ごろ先生はこの流れに則ってお客さんに笑ってもらえるようにネタを作っているそうです。一方、科学技术コミュニケーションにおいては人を笑わせる必要はなくとも、「わかりやすい」「楽しい」と思わせる技術を身につけることは非常に有効です。そのため、人を笑わせる技術と科学をわかりやすく魅力的に伝える技術は地続きであるといえます。

ではここで、科学の伝え方について考えてみましょう。
研究所の一般公开などで、科学にあまり関心のない人へ自分の研究を説明するとします。この场合、话し手の多くは元々科学に関心がある人なので、科学に関心のない层の気持ちがなかなか想像できません。さらに、人间は自分が苦労して学んだことでも、一度理解してしまえばその记忆を単纯化してしまう倾向があります。一度自転车に乗れるようになると、乗れなかった顷のことを思い出せなくなってしまうのと似ていますね。一方で、お客さんはそれほど科学について知りたいと思っていない场合や、兴味のないことに头を使いたくないと思っている场合がほとんどです。そのため、一生悬命科学の魅力を伝えているつもりでも、お客さんには「なんだか难しそう」「自分には无理」というマイナスの感情だけが残ってしまうこともあります。
そのため、科学をわかりやすく魅力的に伝えるには、自分の価値観や感覚だけにとらわれず、まずステークホルダーを知ることが大切です。
もっと知りたい!を轴にする
自然人类学の研究绍介を例に、科学をわかりやすく魅力的に伝える方法について考えてみましょう。まずは、以下の説明を読んでみてください。
自然人类学とは、人骨などから人类について学ぶ学问です。自然人类学は、人骨に残された情报から社会や生活を復元する「生物考古学的な研究」と、集団の起源や系统を追求する「系统学的な研究」の大きく二つの分野に分けることができます。
いかがでしょうか。これは、説明の论理を轴としてストーリーを作った例です。学问を系统立てて説明しており、自然人类学についてすでに知っている人が相手であればこの説明でも十分に伝わるでしょう。しかし、科学に兴味のない人にこの説明をしても、研究の魅力はうまく伝わりません。
研究の魅力を伝えるポイントは、伝えたい内容の前に「知りたい!」と思わせること。先ほどのストーリーを、闻き手の感情の変化を轴とて书き换えると、次のようになります。
みなさんは时代剧を见たことがありますか? 江戸时代と闻くと、ちょんまげや悪代官など、色々なイメージが浮かびますね。でも、実际に过去へ行くことはできないのに、どうやって昔の暮らしがわかるのでしょうか。多くの场合、絵や日记などの史料をもとに过去を読み解いていますが、本当に大変な时期だと、忙しかったり疲れていたりして史料があまり残っていません。さらに、当时の当たり前すぎることは史料に书かれておらず、调べることができません。そこで、「自然人类学」という学问で昔の人の骨を调べることで、史料には残っていない过去の出来事を知ることができます。
このように説明してみると、どうでしょうか。先ほどと比べて、少しは自然人类学について兴味が涌いてきたのではないでしょうか。このように、结论の前に「知りたい!」と思えるような前フリを作ることで、お客さんに伝わるストーリーを作ることが重要です。
「魅力的に伝える」3か条
さらに、科学は热いお汤のようなものだと先生は言います。热いお风吕に惯れるのに时间がかかるように、难しいことを理解するには时间がかかります。そのため、情报を一度に伝えるのではなく、お客さんが理解するためのタイムラグを设けつつ、细切れに伝える必要があります。
また、科学技术コミュニケーションに取り組むうえで直面する課題として、「わかりやすさ」と「正確性」の両立があります。先生の場合は、お客さんに説明を理解してもらうよりも「納得がいく」「腑に落ちる」という満足感を得てもらうことを大切しているそうです。
正确性を维持したまま、お客さんに伝わるように情报量を适切に减らすことがベストですが、结局のところ相手に伝わらなければ意味がありません。そのため、お客さんに満足してもらうため、时には极端に情报を付け足すこともあるといいます。
先生による科学を魅力的に伝えるためのポイントをまとめると以下の通りです。
① 感情を軸に、論理的に
② タイムラグを考えて
③ 伝えたい人によっては正確性を重要視しない
誰かに料理を振る舞うときのように、相手を思いやることが科学技术コミュニケーションにおいて重要だと学びました。
おわりに
讲义の中では、実际に「ボルン?オッペンハイマー近似」に関する科学漫谈をご披露いただきました。ネタを拝见して笔者が実感したのは、比喩の力の伟大さです。「スーパーコンピューターはよく当たる占い师のようなもの」のように、闻き手が思わず「どういうこと?」と闻きたくなるような意外性のある例えが効果的に使われており、まさに本讲义でお话いただいた感情を轴にしたストーリーを展开しておられたのが印象的でした。
すぐに実践したくなるような伝え方のノウハウを详しくお话いただき、非常に学びの大きい讲义となりました。大寒波の札幌を軽快なトークで盛り上げてくださった黒ラブ教授先生に、改めて感谢申し上げます。
