石田隆悟(2023年度グラフィックデザイン実习/学生)

今回の講義は、北海道新聞社で自然環境の取材を行い、近年はクマ関係の取材を担当する通称「クマ担」として動物と人間に関わる報道を行ってきた内山岳志さんを講師に迎え、『野生動物にまつわる问题を報道すること』と題して行われました。
内山さんは北大工学院を卒業後、北海道新聞中標津支局で知床を中心に自然環境をテーマに取材、後の札幌本社では新型コロナウイルスやヒグマ问题を中心に取材を行い、今年の春まで北海道全土を舞台に自然環境と人間の関わりについて報道してきました。近年動物の個体数回復に伴い彼らの世界と人間の世界の境界が曖昧になってきました。この講義ではヒグマ问题を中心に、野生動物の立ち位置を「保護対象」から「管理対象」にシフトしていく際に報道が果たす使命と発信者としての姿勢を述べられました。
道内の野生动物の现状

「道内にクマは何头いるでしょうか?」というクイズから讲义は始まりました。答えは「1万1700头」で、ここ30年で倍増しています。「ではエゾシカは?」答えは「69万头」。过去10万年で最多水準の个体数です。
何头いるか?という最も基本的な情报ですら、正确に把握することは不可能で、あくまで推定である。そして本当の所は研究者でも分からない、报道される数字を疑うという意识を持つことを内山さんはクイズの回答を発表するたびに説明していました。数字を疑い自分の目撃経験や感覚と照らし合わせる作业をすることは、动物のことを自分事として考えることにつながります。また个体数の観测は変动を知り、管理のための第一歩としても重要です。
もたらされる问题
シカやクマの个体数は増えています。それに伴って人间との轧轢も増えていきます。
交通事故、农业被害、感染症、昔はとにかく自然を守ろうという流れが强かったのですが、近年ここまで被害が増え、适切な生息场所で适切な生息数に抑える必要性が顕在化してきました。
全道で相次ぐヒグマの出没。道东ではヒグマの鉄道事故が散见されるようになりました。また直近でも大千轩岳で北大生が亡くなるなど深刻な事例が発生しました。ここで内山さんから「覚えてほしいヒグマの出现3パターン」を教わりました。
① 長距離移動する若いオス:遠くに行きたいという分散本能
② 老練な成獣:人間は怖くないという経験を積み、人に馴れた個体
③ 子育てする母クマ:子殺しをするオスを避けるため人里に避難
以上の様なヒグマの本能や行动理由を知り、「今日ニュースで登场したクマはどのタイプだろう」と考えることが不必要に恐怖を煽られないために大事だと言います。
それではお待ちかね、翱厂翱18の话题に入りましょう。
今年翱厂翱18/アーバンベアが新语?流行语大赏に入るほど全国的に话题になり、今もっとも有名な个体といっても过言ではありません。今年の春翱厂翱18は意外にもあっけない最期を迎えました。駆除后の调査から若いうちから牛を袭っているかなり肉食に倾いた个体だったことが分かりました。「翱厂翱18怖いね」で终わるのではなく「翱厂翱18だけが肉食なの?他のクマも肉を食べてるんじゃない?」と考えてほしいと内山さんは説明し、明治以前のヒグマは肉食であり、今のヒグマもそうなっているのでは?という可能性を説明しました。
さらに今年道内で発生した2件の死亡事故を踏まえ、「ヒグマが人间を袭う3パターン」についても解説がありました。
① ばったり遭遇:ほとんどの事故はこれ、気づいたときにはクマ側もやるしかない状況
② 子連れの母クマの防衛:本能的に子供を守るために攻撃
③ 積極的な攻撃:好奇心、エサとして認識(今年の事故はこれに該当する可能性が高い)
保护から管理への転换点
事故が目立つようになり北海道はついに、捕获目标(今年は〇〇头获る、など)を决め保护管理政策に「保护」だけでなく「管理」という意味合いを付けました。これまで守ってきた自然や野生动物をコントロールしきれなくなり、ついに戦う必要性が出てきてしまったのです。
具体的な管理策としては「ゾーニング」があります。クマの生息地/缓衝地帯/防除地域/排除地域のようにエリアを分け、衝突を防ぐというコンセプトです。一方で実际は「草刈り」くらいしか実现できておらず、実行力の低さが目立っています。他にも対策の妨げになる物は多く、警察の许可が无いと市街地での発砲ができない警职法の存在、特に「駆除のたびに集まるクレーム」はハンターや行政に多くの负荷を掛けます。クレームのほとんどは该当地域「外」からのもの、国民の捕获駆除への理解、合意が急务となっています。
报道することの课题

そこで、大きな役割を果たすのが报道です。クマ问题报道の使命の1つにヒグマの存在そのものや対策の実行に対する合意?理解を形成することがあります。合意を形成できれば不要な対立を无くすことができます。报道の力だけでなく世论のもつ力の凄まじさを知る内山さん。例えばもしも通学中の子供が袭われ死亡した场合、ヒグマを敌対视する流れはエスカレートし、クマを絶灭させようという意见が出てくる可能性は十分にあり得ると内田さんは言います。野生动物は敌ではありません。もちろん味方でもありません。
また、クマではないものがクマに见える「ゴーストベア」を减らしたいと内山さんは言います。これは人间の本能である怖いものが见えやすくなるという认知作用によるもので、クマ报道を行うと実际に「クマらしきもの」の通报が増えるのです。内山さんは、受信者の「正しく恐れる」姿势を育てることも报道の役割だといいます。また、私たちも出没背景や人间を袭う理由といった「知识」や「解釈」をあらかじめ知っておくことで、かなりの恐怖を和らげることが可能だと内山さんは语ります。
一方、近年の野生动物问题は未曽有の事态であり、「ここにはクマは出ないだろう」といったようなこれまでの経験が通用しないといった特徴があります。この课题に対してもスピード感を持った対応を行い、北海道を野生动物との共存の先进事例にしていきたいと説明しました。
おわりに
「クマが絶灭してもいいと思うひと?」质疑応答の最后に、内山さんは受讲生に问いかけました。手を挙げる受讲生はいませんでした。クマに絶灭してほしくない理由は何でしょうか?
多様性の担保?かわいそうだから?自分に害があっても?もちろん生活必需品ではありません。絶灭させてしまおうという动きも本当にあると言います。
クマはいたほうがいいという意见を自分なりの视点と根拠を持って答えられるようになりたい、なってほしいという言叶で本讲义は缔められました。読者のあなたも今日お风吕に入りながら考えてみてほしいです。「クマって必要でしょうか?」

授业に参加して
クマの唸り声や生臭いにおい、クマスプレーの実戦的な使用法など、最前线ならではの経験谈が盛りだくさんでリアルさ全开の讲义でした。ヒグマ、野生动物が良くも悪くも(主に悪く)注目されている现状は対话の机会の提供や解决のために动く絶好のチャンスでもあると感じています。过大评価、过小评価をしないためにも自分の意见や感覚、立ち位置を定めた上での発信?受信を心がける大きなきっかけになりました。
