2月26日に行われた第56回麻豆原创カフェ札幌では、観客の方より、当日には答えられないほど多くの质问をいただきました。
ゲストの上田哲男先生(北海道大学 電子科学研究所 教授)から、カフェ当日答えられなかった质问に対しての回答をいただきましたので、公開します。
一つ一つの回答に丁寧にこたえてくださった上田哲男先生に感谢致します。
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质问票に対するQ&A
2月26日の麻豆原创カフェの後、たくさんの多岐にわたる质问票をいただきました。今になって、お話を聴いて下さった方々の興味の広さ、深さに驚いております。全部にお答えするスペースがありませんが、いくつかの质问にお答えすることで、皆様の粘菌理解がさらに深まれば幸いです。
蚕:自己组织化を起こすものは、アリのような小さなものから、大きなものでは云のもようまであるのに、何故先生は粘菌に魅力を感じ研究対象にしたのですか。
A: 研究方向の决定は、人生の大きな分岐点になります。わたしの场合、自己组织化というものがあり、その中から粘菌を研究対象に选んだというのは、后付けの説明で、研究テーマを选ぶ动机としては正确ではありません。あれやこれやいろいろな偶然が良いように重なり、粘菌研究を进めることになっていったと思います。
わたしは理学部化学科の学生でした。教养部では、夏休み、春休みは担任の加藤先生の研究室に入り浸り、実験をさせてもらっていました。生物学教室の清水研究室にも出入りしアメーバと游んでいました。それでも、学部で神谷教授の细胞运动の讲义を聴いていなければ、7年后に粘菌と出会うこともなかったでしょう。大学院生の时、味覚研究の栗原先生が薬学部にこられなければ、细胞行动の研究はなかったでしょう。そもそも非平衡系での自己组织化という小畠教授の研究の流れがなければ、わたしは生物の世界へ飞び込めなかったでしょう。さらに粘菌が最初の研究で面白い答えをしてくれなければ、とても粘菌研究を続けられなかったでしょう。自分がやったつもりになっていても、意図せぬいろいろな动きも重なり、わたしは粘菌研究に导かれていったのです。それでも若い人たちが、その后も粘菌から、面白い答えを次から次へと引き出してくれなかったら、粘菌研究を続けることはできなかったでしょう。
おかげで粘菌の魅力はどんどん増していきました。研究は、魅力的な何かがあるからするのではなく、何かを魅力的にすることだと思います。わたしは若い顷、「人のやれないことをやれ、人のやらないことをやれ、人よりはやくやれ」と自分と学生さんを激励していました。
蚕:粘菌を採取する方法(森林の中で探すには)。きのこや地衣类の菌类と同じか?
A: 思わず20年前を思い出しています。この顷、他大学の一年生に生物学を教えていました。夏休みの宿题は粘菌採集(ちなみに、冬休みの宿题は酵母によるアルコール発酵)でした。粘菌は何を食べているか、どういう生活をしているかを説明したうえで、森の中で落ち叶や朽木があり、湿り気があるところには必ずいる、太鼓判をおします。すると学生たちは、これで単位がとれたと大喜びです。
しばらくすると研究室に枯れ枝を持って、これは粘菌ですか、とやってきます。惜しい、似ているけれど违うね。先生、粘菌だとわかるためには、地衣类や、菌类や他の生物のことも知らないといけないのですね。そうだよ。よくわかったね。知るというのは、そのものだけではなく、他のものとどういう関係にあるかがわかることだね。
自ら学ぶことを知り?体験し、どんどん逞しく育っていきました。现在、カリキュラムのなかで、このように长时间にわたり自分で取り组むことは、できなくなっています。夏休み前に试験を行い、成绩を出してしまうからです。
蚕:市内で见られる所。太阳光は无意味(必要ない?)特定の植物、あるいは环境との结びつきが深い种はありますか?冬はどうしているんですか。种名と自然での生态について。
赤外线と可视光とでは、粘菌の反応は异なるのか?粘菌の色は、全部黄色ですか?粘菌を使って、抗生物质をつくることはできるか?どのようにして、次世代をつくるのか?
A: さて粘菌は、札幌ではどこらあたりに生息しているでしょう。北大キャンパス内でも、10种类くらい见つけています。低温研へつづく白樺并木は、落ち叶が豊富。雨あがりにアスファルトの上を30?40cmくらいに広がった粘菌変形体がおりました。円山、手稲山などには确実にいます。倒木、切り株に注目です。たいていは(饵のあるうちにすばやく増えて、后は耐久型の细胞―子実体に変身して、乾燥や低温といったきびしい状况をやり过ごすので)子実体の状态で见つかります。1mm程度の大きさのものが多いですから、惯れるまでちょっと时间がかかるでしょう。粘菌は、お腹が减って、光にあたると、子実体へ移行できるので、明るい所で子実体が见られることになります。紫外线(鲍痴础), 青色光、远赤色光が形态形成に有効です。同じような光に対し、粘菌は逃避行动を起こします。黄色い色素は、光を受け取る色素ではなく、有害な紫外线を遮断する役割だと思われます。白色の突然変异株でも、まったく同じように光から逃げ、子実体をつくるからです。真正粘菌では、现在1000种ほど知られていますが、多くの粘菌は植物の种类を选んでいないようです。この中には、赤色や青色の変形体も知られています。子実体の色はもっと多彩です。このなかから、抗生物质のような薬理作用を持つ化合物を见つけようという研究者もいます。
Q: キノコを食べつくす映像には驚きました。全身どこでも口になれるのでしょうか。キノコを消化するには、消化液などを出しているのでしょうか。雑菌に弱いのに、なんで山であんなに元気なんですか?粘菌は、無限に大きくなると言っていましたが、そのように大きくなる利点は何ですか。またいつか大きくなりすぎて成長が止まることはないんですか。縮小することはないか?単為生殖ですか?粘菌にとって"快適"な湿度はどのくらいか?粘菌の粘(ねば)っている意味はあるのですか?ねばって何かをくっつけたりするのですか?アデノシン三燐酸を生成しているのか。光合成のような機能はあるのか。
A: 粘菌は、わたしたちと同じ真核生物です。核があり、染色体があり、ミトコンドリアがあり、???。叶緑体はありませんので、光合成はできません。生き物は、水がなければ命を保てません。その工夫が粘です。粘液は水を含み、乾燥から身を守ります。それでいて柔らかいので、変形して细胞は动くことができます。
细胞の食事の取り方には2种类あります。1つは朽木から出る栄养を含んだ水溶液(スープですね)として、もう一つは固形物です。后者の场合、巨体を利して包み込んだ上で、消化酵素を分泌して分解して、细胞内へ吸収します。わたしたちの身体をバイキンから防卫してくれている白血球などもこの様にして、细菌を攻撃しています。
(真正)粘菌は、いくつかの生きざまを変迁して、生命を全うします。子実体は、胞子の集合です。胞子は水に浮かぶなど适切な状况で発芽して、1つのアメーバ(粘菌アメーバ)になります。バクテリアなどを食べて、増殖します。この时期では、われわれの细胞と同じで、核が分裂すると引き続いて细胞质も分裂して、2つの、それぞれ1个の核をもつ细胞になります。饵がなくなると、见た目の区别はないのですが、オスとメスの区别があって、异なる性の2个の细胞が合体します。核も合体して复相の1つの细胞(接合子)になります。これが一番小さい変形体です。すると、饵が十分あると増殖するのですが、核が分裂しても、细胞质の分裂が起きません。だいたい10时间毎に核の数は、倍々になっていきますが、细胞质は量が増えても1つのままです。このようにして、沢山の核をもつ、1つの巨大な细胞=変形体となっていきます。
モジホコリでは、変形体の大きさに制限は无いようです。粘菌の中には、核が8个とか16个になると、细胞质が分裂してしまうものもいます。当然、この粘菌の変形体は、顕微镜で见ないと见えないほどに小さいものです。真正粘菌は、细胞质分裂を止める仕组みを组み込むことで、大きくなる方向に进化していったのでしょう。ある条件にすると、モジホコリの変形体も、8个くらいの核を持つ小さな変形体に分裂します。细胞质分裂の能力は维持していることになります。
飢饿状态になり、光が当たると、子実体へと分化します。この途中で、减数分裂が起こり、核相は単相へと移行します。このように、生きざまを环のごとく変えるので、全体として、生活环と呼ばれています。微生物の多様な生きざまを生物学的に理解する良い视点です。ここで、宿题。ヒトの生活环は考えておくこと。ごめんなさい、ついつい癖がでてしまいました。
Q: 同じシャーレにおいておくと、粘菌は合体するとのことですが、粘菌には自己?非自己はないのですか?異なる個体間の遺伝子のちがいとかは?複数の粘菌が一個体になる時、ゲノムはどのような挙動をとりますか?粘菌の遺伝子は、同じ種なら全く一緒なんでしょうか?隣とくっついても大丈夫とい???集合体を1つの細胞とみるべきなのか?本当にしきりがないのだろうか。多くのアメーバが集合して結合しているだけなのか。光や熱に強い粘菌をどうやって作るのか?(品種改良的アプローチは有効か?)ヒ素やカドミウム等を好む粘菌は見つかっているか(bio-remediationの点より)?どうやって、粘菌に薬剤耐性をもたせるか?粘菌は、無限に大きくなると言っていましたが、そのように大きくなる利点は何ですか。またいつか大きくなりすぎて成長が止まることはないんですか。異種の粘菌が出会ったらどうするのですか?ケンカする、別々に動く、合体する?動く時、膜を新しく作る必要があると思います。その時はどうするのですか?
A: 30年ほど前、わたしはロンドンのインペリアルカレッジでカーライル博士と粘菌の化学受容の感受性に関する遗伝学を研究していました。あるとき、「これを见ろ、テツオ」と言う。顕微镜を覗くと、変形体の周辺に透明なものが丸いものが散らばっている。核だという。2つの変形体を融合させると、一方が他方の核を细胞外へ放り出したのだった。
彼は、原形质のコンパチ(お互いに相性がいいかどうか)を调べていた。合体するかどうかは、同じ遗伝子を持ったもの同士は融合するが、异なると融合しないことを见出していた。さらに、2つの変形体が融合すると、2つとも死んでしまう、一方が他方を杀してします、うまくやっていく、など免疫系の自己―非自己のような现象を见つけていた。
1つの大きな変形体の中には、核が优に百万个以上はあるでしょう。自然な突然変异率を考えると、すべての遗伝子が同じというわけにはいかないでしょうね。でも、これが全体の性质として现れることは、まずないでしょう。子実体をつくると、核がほぼ1个の胞子に分かれますから、ここから突然変异体を分离していくことが可能になります。何百万个の中から、1つを选び出すなんて!相当な根性がいりますね。
Q: ガン化との関連 ES細胞でのガン化(ky化)が課題になっているようですが、粘菌では同一体もしくは同種体でのky化、反乱はあるのでしょうか。粘菌とiPS細胞との共通点?
A: 粘菌の分子生物学は、ガン研究と密接に関連していました。当時アメリカのガン学会副会長だったラッシュ教授は、ガン化を理解するには細胞分化の仕組みを理解しなければならないと考え、粘菌をモデル生物としてガン研究を創めました。60年ほど前、1950年代の初頭です。とはいえ、この生物の培養方法もわかっていません。すべての化学組成がわかった栄養培地を見出すことから研究が始まりました。ポスドクのダニエル博士は、10年を費やして、合成培地を見つけました。1つの论文を書くことも、グラントをとることもない10年でした。しかし、その結果、アメリカのウィスコンシン大学マクアードル研究所は、粘菌の分子生物学研究のメッカになりました。
ラッシュ教授には、ポーランドのクラコフでの粘菌会议の折、お会いしました。この地で、天動説をとなえたコペルニクスが学んだという教室に座ると、気がひきしまります。このころヨーロッパは東西に分裂していました。肉屋さん、紅茶屋さんの棚には、品物は1つもありませんでした。それなのに、ある日、品物が入荷するらしく、100mにもおよぶ行列ができていました。社会の仕組みの在り方を考えてしまいました。
蚕:粘菌は死んだら、どうなりますか?仮眠する时、粘菌は年をとるのですか?粘菌の寿命について教えて下さい。病気になる?ひとつの细胞のままで生き続けるのは不可能では?
A: 老化や寿命は生物における时间の问题として、重要です。粘菌も変形体の状态で长く饲っていると(わたしは、30年くらいです)、なんとなく成长が悪くなった、なんとなく动く速度が遅くなった、なんとなく子実体をつくりにくくなった、といった老化现象がみられるようになります。この现象が速く进む株も见出されています。このとき核が大きくなっており(倍数体)、これをろ过して、通常の大きさの核だけにすると、元気さを回復したという报告があります。生活环を廻して新たに変形体をつくると、とても元気な変形体が得られます。粘菌の死は、热汤を浴びる、紫外线を浴びる、干からびる、他の生物に食われる、???容易に访れます。生きるのが、ありふれているのに、奇蹟。
蚕:物理の様な相転移现象ですか。フラクタルなんですか?迷路を解くと言われていますが、距离(最短経路)をみつけているのですか、それとも最大勾配で判断しているのでしょうか?动く方向をどのように决め、どのように动くのか?何らかしかの制御机构がある?辞谤 自然にできる秩序?记忆していることをどのように确认するのか?
A:粘菌はどこでも周期的に収縮弛緩を繰り返していますので、振動要素が結びあってネットワークを作っていると考えられます。このような動的な体系では、パターンの遷移といった相転移に似た急にあるいは不連続的に状態が変わることがあります。管のネットワークを解析して、重み付きの正則グラフであることが最近わかりました。後半の质问は、まさに研究テーマです。今後に期待しましょう
上田哲男
终わり
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