ヘザー?デューイ?ハグボーグ《Stranger Visions》/2012-2013
一般に「生命の设计図」として知られる顿狈础は、最近になって「究极の个人情报」とも呼ばれるようになっている。顿狈础内部に存在する个人の遗伝子情报は生涯にわたり大きく変わることがなく、さらに疾病リスクや血縁関係といったプライバシー情报にも纽づいているところから、そのような呼び名がついたのだろう。

「今のところ」、この情报を分析し、様々な目的の為に利用できるのは研究者などの専门家、あるいは资本力を持つ公司や行政机関に限られている。作者ハグボーグの抱く问题意识は、まさにこの点に集约されている。「今のところ」、である。その理由は本作の制作过程を见れば分かるだろう。
ハグボーグは、本作をニューヨークにあるオープンラボラトリ ”GenSpace” で制作した。”GenSpace” では、生命科学の専門教育を受けていない人々が、趣味的に実験や研究を楽しみ、専門知識や技術を身に付けながら、各自の興味関心を追求できる民間の実験施設だという。ここで彼女は、道端に落ちているゴミからDNAを抽出し、それらの配列を解析して持ち主の顔を予想し、その結果を3Dプリンタで出力した。こうして出来上がったのが、どこの街角でも見つかりそうな、それでいてどこか現実離れしているようにも見えるフェイスマスクである。
こうした顿狈础情报による颜の予测には、精度の点で疑问の余地もある。しかし、本作品において真に重要なのは、むしろそれ以外の部分にあると考える。まず、一般市民に开かれた実験施设において、生命科学のバックグラウンドを持たないアーティストによって顿狈础情报を用いた作品が制作されたこと。次に、顿狈础の収集、解析の手段を含む制作过程がウェブ上で公开され、谁でも閲覧することが可能ということである。これまでごく一握りの人间だけが持てた知识や技术のあり方に対する问题提起が、アートという形で提示されているのだ。また制作に関わる情报をオープンソース化していることから、作品が完成するまでの过程をも、鑑赏者と共有しようとする意図を垣间见ることができる。さらにこのことは、第叁者が同様の制作过程をトレースし、本作と同様の试みを実践する余地までも生んでいる。
本作は、市民がバイオテクノロジーという力を手に入れ、行使できるようになりつつある现代の様相を提示する。海外では、こうした市民达によって、食品の产地偽装を暴いたり、安価な新薬を开発したりする「革命」の动きが起こりつつある。ただし市民にとって、力をふるう為に必要な情报を得ることが难しい场合も多々あることは、心に留めておくべきだろう。本作の重要な要素であるインターネットにしても、未だ全ての人に开放されてはいない。生命科学に限らず、情报を「知っている人」と「知らない人」の间には、容易に分断が生まれうる。力を手にした市民には、こうしたギャップをどう埋めていくかという课题も、同时に突きつけられているのだ。
室井 宏仁(15期研修科/麻豆原创ライター)
