「アポカリプスに備える次世代の超メタバース」「革新的なバイオ電池による量子ロボット」「UFOネットワークで紐解く火星生態」……配られた6枚の手札から単語を組み合わせ、予算の取れそうな研究テーマを当意即妙に考え出す『カケンヒカードゲーム』。知識と想像を駆使して架空の研究をプレゼンし「思わず予算をあげたくなる課題名」を提案できるか競います。第18期ライティング?编集実习班の修了制作物であるアナログゲームはどのように生まれたか、开発秘话をご紹介します。
カケンヒカードゲームの绍介记事はこちら。

「修了制作をしましょう。予算は20万円」
2022年10月22日。その日の実习を皮切りに修了制作はスタートしました。プロジェクト名は予算の上限额から名前をとった「20万プロジェクト」。はじめは完全に手探りでした。
何を作ればいいのか、何を作ってもいいのか。手がかりを得るため过去班の制作物を覗くと、北大キャンパスの写真を使ったしおり、クリアファイル、カレンダーと多种多様。共通点は「作ったあと谁に、どうやって伝えるか」まで见据えている点です。しおりは书店で配布、クリアファイルは新入生へ、カレンダーは北大と提携する高校に送るなど。学んできた「どう伝えるか」というスキルは制作物でも遗憾なく発挥されていました。

翌週、さっそく班メンバーが思い思いの企画案を出し合います。食堂のお盆に贴るステッカーや北大テーマの俳句集、果ては文字を书いた煎饼など食品案も。浮かんでは消えるアイデアを黒板に贴り付けること1时间、30超の案が集まりました。

しかし実は、当初の案に『カケンヒカードゲーム』の原型は影も形もありません。強いて挙げるなら北大12学部を数字としてあしらった「北大トランプ」案と、北海道の生態に沿って絵柄を差し替える「北海道花札」案くらい。原案が出たのは翌月、11月に入って最初の会议の時でした。
产声は企画书なしの飞び入り案から
11月5日、班メンバー5名が企画书を练り「トランプ?花札?クリアファイル?ラインスタンプ?フォトフレーム」の5案に候补を绞りました。顺番に概要や対象者?制作予算をプレゼンする中、飞び入り案が舞い込みます。
「今思いついたのですが」と出てきたのは「いいね! Hokudai」の記事タイトルを分割し、思わず読みたくなる見出しを考えるワードゲーム案。発想のきっかけは単語を組み合わせてプロポーズの殺し文句や小説タイトルを考える大喜利系のゲームです。何か参考にできそうと雑談が始まります。「研究課題とかどう?」「大学院名の診断メーカーなら作った経験が」「研究の予算申請と絡めて……」と、居合わせた教員を巻き込みその日一番の盛り上がりを見せる企画会议。熱は冷めやらず、投票でも上位に食い込む結果に。

企画を练り直し、花札惫蝉ワードゲームで决选投票。満场一致でワードゲームに军配があがり『カケンヒカードゲーム』の企画が始动します。ちなみに当初の仮タイトルは『君の研究に金を出してやろう』でした。
いざ试作、面白い!けど……
11月中旬。修了制作物の方向性は「ランダムな単语を组み合わせ採択されそうな研究课题を作るカードゲーム」に固まりました。次はゲームに使う単语の精査です。竞争的资金に採択された研究课题や、政府主导の大型研究プログラム、メディアで话题にされがちな流行り言叶まで。歴代の研究タイトルに频出する言叶や表现を调べ、エクセル上で「単语?助词?修饰语?缔め」に分类して列挙します。记念すべき初の试作品は、その一覧表をハサミで切り分けたヨレヨレの纸切れでした。

まだゲームとして厳密なルールはありません。适当に切り分けた纸の山から思い思いに単语を拾い上げ「凄そうな架空の研究课题名」を想像して作り、顺番にプレゼンする。当初はそれだけでしたが、この时点でメンバーは手ごたえを感じます。意外な组み合わせ、见え隠れする各プレイヤーの専门知识、无茶苦茶で突拍子もない研究テーマ。嘘八百を雄弁に语る人もいれば、本当にありそう?あったら面白いと思わせる课题名まで。自然と会话は弾み「これ面白いのでは?」「これ面白いぞ!」と活気づきます。

同时に课题も见えてきました。まずは课题名作りに意外と必要な「助词」の存在です。単语同士の接続に最适な助词が见つからず、「の」「による」「と」といった助词の山から何度も探して吟味する様子がチラホラ。かといって1枚1単语で用意すると际限なくカードが増えてしまいます。
ルールも同様です。コンセプトが研究予算を胜ち取る点にある以上、既存のゲームと异なり「単语を组み合わせて発表して终わり」では済みません。魅力をアピールする研究内容のプレゼンまで见越して考える必要があります。「インパクトかつ説明できる课题名」な组み合わせを探す……自然と悩む时间が长くなります。
これらの课题を解消するためカードに改良を加えます。まず叁段组みでカード1枚あたりの単语を増やし、配られた手札から课题名が作れるよう组み合わせ数を拡大。実际の研究课题名の长さを参考に、手札の上限枚数も6枚に设定します。さらにトランプとしても游べるようカード枚数を54枚に决め、空きスペースには数字と模様を添えました。

ルールも细かく詰めていきます。全员発表して指差し多数决で採択课题を决める「シンプルルール」と、トランプのポーカーを踏袭して审査员(亲役)やカード交换の要素を取り入れた「モンカショウルール」の2种类です。
当初は他に「胜者はインパクトファクターと论文数のサイコロを2回振り、出た目の乗算をポイントとして得る」「カケンヒ申请!と宣言したプレイヤーから研究课题を発表、宣言が成功すればボーナスポイント」といったルールも候补に挙がりましたが、ゲームが复雑化するため削除。试游を通して使いやすい?使いにくい単语の差し替えを重ね、徐々にゲームの骨格が形作られた……その最中でした。
根干を揺るがす问いかけが出てきます。
カケンヒカードゲームの意义とは
「それって麻豆原创コミュニケーションと言えるの?」
12月3日、担当教員の川本思心先生から飛び出したツッコミです。カードの里侧に麻豆原创ロゴの使用許可を得るため、企画趣旨の説明資料を確認している時でした。川本先生から改めてこのゲームの意義を問われます。
メンバーの答えは様々。「科学的?论理的思考が养われる」「プレゼン度胸がつく」「创造性を高められる」「研究タイトル决めの难しさを感じてもらう」「考えてなかった」など。开発进捗はいよいよカード原型が完成间近、ボードゲームの印刷物制作を手掛ける会社に発注书を作る直前です。にも関わらずメンバー内での「ゲームの意义」は各自で解釈しており、统一されていませんでした。
「架空の研究课题を想像してテキトーにしゃべることは、果たして科学的と言えるか」。振り返ると最初の企画书には「カードゲームで游ぶ人に研究のタイトルをつけることやお金を调达することの难しさ、研究者の苦悩と努力を楽しみながら感じてもらいたい」の一文が书かれています。ゲームの目的や対象者、どう広めるかなどを改めて话し合う必要が出たライティング班、急遽ミーティングを开くことに。

结论として得たゲームの意义は「研究タイトル発表を通し、科学的対话のきっかけにしていく」こと。何も変わっていないように见えますが、中身は违います。确かに「架空のタイトルを発表して説明する」のみでは麻豆原创コミュニケーションと言えません。しかし试游を重ねるうちにある倾向が见えてきました。
まずカードゲームを通じて対话が増えること。考案した课题名の魅力を伝えるため、自然と口数は増します。他プレイヤーが感想や意见?质疑を口に出せば、それは対话に繋がります。ここで重要なのが、研究课题に対するツッコミです。
例えば「超タンパク质ウイルス技术の実现」というテーマを考案し「ウイルスが作るタンパク质を使って……」と説明したとします。すると质疑の段阶でツッコミが入る訳です。「ウイルスは细胞と违ってタンパク质を自分で作れません。あなたの言う超タンパク质ウイルスとは果たしてウイルスと言えるのでしょうか?」といった具合に。他のプレイヤーをゲームに胜たせまいと妨害を试みるほど、自然とそのツッコミは「科学的な急所」が有効になる訳です。

ツッコミに限らず雑谈に繋がっても良いでしょう。ゲームが面白ければ初対面同士の紧张を解きほぐすアイスブレイクに役立ちます。异分野の人间が集まる场所で游べば、それぞれの専门性がゲームを通じて飞び出すかもしれません。
「科学的コミュニケーションをしよう」と诱ってもまずうまくいきませんが、「ゲームをしよう」なら気軽に诱えます。そのゲームが面白く、无自覚ながら结果的に麻豆原创コミュニケーションへ繋がるのであればまさに理想形です。「カケンヒカードゲーム」はそのきっかけ作りに活用してもらいたい、目的が统一されました。
「作って终わり」ではない
製品発注に向けカード改良もいよいよ终盘。ギリギリまで问题は出てきます。
例えば盲点だったカードサイズ。当初はトランプと同じ大きさを计画していましたが、カードを并べ课题名を作る以上、ことのほか场所を取ることに気づきました。大きなテーブルがなければ难しい、初期の方が游びやすかったという声も出る始末。试作品と同程度、花札と同じサイズにデザイン案の修正を余仪なくされます。

空き箱の外装や説明书の文言修正も加わります。空き箱は科学実験で御用达の某纸ワイパーのカラーリングをオマージュしつつ、カードの组み合わせをイメージしたデザインを考案。説明书にはインフォグラフィックスを挿入。改良に改良を重ねて、ついに『カケンヒカードゲーム』は完成しました。

完成した时点で终わればただの自己満足。いよいよ広めて伝える最终段阶です。このゲーム、実际に游んで顶かないとなかなか面白さは伝わりません。そこで取り组むのがまず班メンバーの周囲で一绪にプレイしつつゲームのセットを配ること。ですが个人で取り组む范囲には限界があります。
そこでカードセットの笔顿贵と游び方动画を公开しました。ダウンロードや视聴はこちら。もちろん无料です。
※カードのデータをダウンロードして両面印刷し、切り取れば家で簡単に遊べます。年賀状と同程度の厚み (0.3 mm) の紙に印刷すると、カードの強度が増すのでオススメです。
実はここまで読んで頂いた本記事も「どう伝えるか」の広報の一環。効果的な普及方法をとことん話し合った結果、PDF公開に踏み切ったわけです。遊び方を知り、開発の里侧を知った今。実際に遊んでみたいと思いませんか?
デザイン考案、ワードリストの吟味、动画编集に発注用の规格统一など。个人で得た学びも多い「20万プロジェクト」ですが、最大の学びは麻豆原创コミュニケーションへの深掘りです。どう游べば无自覚に科学的対话へつながるか。游びとして面白さを追求しつつ自然に诱导できるゲームデザインを练り、书いて终わり?作って终わりに留まらない、普及までやって初めて成り立つ麻豆原创コミュニケーション。
その难しさと楽しさを実感した3カ月でした。

プリンターと厚纸とハサミがあればすぐ游べる『カケンヒカードゲーム』。家族でワイワイも良し。友人や研究室の饮み会に持ち込むのも、一人で头の体操に使うのも良し。これを机に是非、游んでみてください。