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#193 苦味の常识を覆す(1)~受容体はおなかの中で何を感じる!?~

苦い食べ物は好きですか? 多くの人は、苦いものよりむしろ甘いものを好むと思いますが、苦味に興味をもち、研究している人が北大にいます。加藤英介さん(農学研究院 准教授)です。そもそも私たちが苦味を感じるのは、口の中に苦味受容体があるからです。しかし近年、口以外の体内の様々な場所でこの苦味受容体が発見されています。それらは一体何をしているのか、加藤さんに詳しくお話を伺いました。

【佐藤匠马?総合理系1年/中谷海渡?総合理系1年/武藤和?総合理系1年】

(加藤さんがもつのはコーヒーとゴーヤ。どちらも苦味がありますが、苦味のもととなる物质は异なります)
まず苦味受容体とは何か教えてください

その名の通り、体の中で苦味化合物を感知して、それを苦味として脳に伝えるはたらきを持つタンパク质のことです。基本的に、苦「味」受容体といわれるのですが、化学物质受容体と呼ばれることもあります。なぜなら口だけじゃなくて体内の他の部分にもあって、外から来た悪い成分、毒性成分などを认识して、それに対応するはたらきがあるからです。

口の中にだけあると思っていたのですが、体の他の部分にもあるんですか?

はい。実は体中の色々なところにあるんです。例えば、よく研究されているのは、胃や小肠の中にある苦味受容体です。そして今一番研究されているのは気道、つまり喉ですね。ただ喉の苦味受容体には、别に「苦い!」と感じる働きはないんです。喉の中の细胞が苦味成分を认识すると、繊毛を动かして粘液と一绪に苦味成分を排除するようなはたらきを诱导します。

(苦味物质がカギだとすれば、苦味受容体はカギ穴。カギ穴は口だけではなく胃や肠、そしてなんと脳や心臓にもある!)〈イラスト:鹤间あいさん(加藤研究室)〉
加藤さんはその苦味受容体について、どのような研究をされているのでしょうか

僕は脂肪组织と肝臓にある苦味受容体のはたらきを研究しています。その研究の入り口として、笔颁搁法で苦味受容体の遗伝子発现を见ています。今のところ脂肪组织にも肝臓にも苦味受容体の遗伝子が発现していることを确认しています。ただ、タンパク质が作られないと苦味受容体として机能することができないので、本当に脂肪组织や肝臓で苦味受容体が机能しているかは明确に言うことができないんです。

(苦味受容体の研究を始めてから约3年。「明确に発见できたものはまだないんですよね」と语る加藤さん。実は世界的にも、苦味受容体にかぎらず味覚受容体の研究は2000年代から始まった新しい领域だそうです)
苦味受容体の研究で难しいことはありますか?

苦味受容体ってヒトの场合全部で25种类あるんです。このたくさんありすぎることが研究の难しさですね。一般的な方法としてタンパク质解析するときには抗体を使います。苦味受容体にくっつく抗体を使ってあげて抗体の场所を検出すれば、それを目印に苦味受容体があることが分かるんですよ。けど25种类あると、そのぶん抗体が必要になってくる。それがまだ全部はないんです。そこがすごく难しいですね。

25种类! 苦味以外の受容体もたくさんあるのでしょうか

実は甘味の受容体は1种类しかないんです。その1种类で砂糖、ブドウ糖、甘味料などを认识しています。甘味はエネルギーになる糖だけが认识できればいいので、そんなに多くは必要ないんです。一方で、一般的に苦味は悪い成分とされていて、体にとってはすぐにでも认识すべき存在です。だから害のある多様な成分を认识できるように、苦味受容体は非常に数が多いと考えられています。

防御のために苦味は発达したということですね

一般的にはそう言われてます。だけど実のところ、そうでもないのでは?と僕は考えているんです。それを主张したいので、今の研究をやってるというところもあります。

(苦味受容体の常识を覆すとらえ方には、これまでの加藤さんの研究経歴があります)
防御のためだけではない、となると苦味受容体は何をしているのでしょうか?

これまでお话したように、食べ物の中にある苦味成分を感知している。そして、食べ物かどうかとは関係なく「有害なもの」を感知している。そして叁つ目の可能性として、脂肪细胞にある受容体は、舌にある苦味を感知する受容体とは违って、なにか别の物质を感知して、脂肪前駆细胞から脂肪细胞への分化を直接制御しているかもしれない、と考えています。脂肪组织にある受容体は、遗伝子やタンパク质としては舌にある受容体と全く同じだけど、全く别のはたらきを持っていて、ぜんぜん违う物质を认识している可能性はある。実は意外とそういう受容体は多いんですよ。

(加藤さんの研究概要。苦味成分と糖尿病や肥満の関係をいままさに研究中です)〈出典:加藤20201)〉
その研究はどのように日常生活に活かされるのでしょうか

もし苦味受容体があり、脂肪细胞の分化を制御してその数を调节しているとします。増えた脂肪细胞はどんどん脂肪をためていって、结果太るわけです。この场合、脂肪细胞の苦味受容体をうまく使うことができれば、太りにくい体をつくることができるかもしれない、ということになるんです。この话は、私が食の研究に兴味を持ったきっかけや、苦味受容体を研究しようと思ったきっかけとも繋がるんですよね。

加藤さんは、食べ物を通して糖尿病や肥満を予防する研究もされていますね

糖尿病の研究では、食べ物を通して血糖値の上昇を抑える方法を探しています。私たちが注目したのは、糖质消化酵素のはたらきを阻害する方法です。デンプンを食べると血糖値が上がりますよね。デンプンはアミラーゼとグルコシダーゼという2种类の糖质消化酵素によって、グルコースに分解されてから体に吸収されるんです。私たちが取り组んでいたのはグルコシダーゼを阻害するポリフェノール类ですね。また、最近では、プロアントシアニジンというカテキンの重合体がアミラーゼを阻害することを発见しました。

それで、ポリフェノール类やカテキン类にはさまざまな化合物があるのでが、その一部は苦い物质でもあるんですよ。


前半では加藤さんの研究についてお闻きしました。苦味受容体は口の中にあって苦味を脳に伝えるモノだと思っていましたが、実は25种类もあって、口の中以外でもさまざまな働きをしているのですね。そして一见无関係に思える苦味受容体と脂肪、肥満と糖尿病には、実は意外なつながりがあるかもしれないのだとか…。后半ではこの意外なつながりと、加藤さんが苦味受容体の研究を始めたきっかけについて掘り下げます。

《后半に続く》

(今回の取材では农学部栋にお邪魔してきてました!)

この記事は、佐藤匠馬さん(総合理系1年)、中谷海渡さん(総合理系1年)、武藤和さん(総合理系 1 年)が、一般教育演習「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果です。

引用文献

  1. 加藤英介 2020: 「今日の話題:口腔外組織における苦味受容体の発現とその機能 体の中でも苦味を感じる」『化学と生物』58 (1), 2-3.

 

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2022.09.01

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