2021年11月25日、オミクロン株と翌日に命名されることになる変异株の话题が、世界中を駆け巡りました。新しい変异株の出现自体は珍しいことではありません。変异株は世界中でこれまでに500万株以上も登録されており、これからも现れ続けるでしょう。しかしオミクロン株は急速に感染が拡大したことと、多くの変异箇所を持つことから大きな悬念をもって注视されています。
伊藤公人さん(人獣共通感染症国際共同研究所 教授)も現在、オミクロン株の分析を行っています。伊藤さんは、6月の段階でデルタ株の感染力と、今後デルタ株が日本でどの程度の割合を占めていくかを正確に予測しました(详细は前编を参照)。
その伊藤さんは工学研究科の情报工学分野の出身で、2005年から集団遗伝学の観点からウイルスの研究をしてきた経歴の持ち主です。后编では伊藤さんによるデルタ株予测研究の里侧を伺いつつ、情报学を基盘としてさらにウイルス研究へと越境していったその専门性に迫ります。
《12月9日、20日、1月26日:オミクロン株の相対実効再生产数暂定値について末尾に追记》
【川本思心?理学研究院/颁辞厂罢贰笔准教授】

新型コロナでは多くの変异株が発生しましたが、これはウイルスで一般的なことなのでしょうか
一般的にはそうだと考えられているんですけれど、実は他のウイルスの场合はそこまでゲノムが分析されていないんです。やっぱり新型コロナのパンデミックは社会的にインパクトが强いので、株のゲノムを読む机运が非常に高まっています。

各国でどういう遺伝子を持ったウイルスが流行っているかは、GISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)1)という组织のデータベースにゲノムが登録されている状况です。この组织は2006年の鸟インフルエンザ流行をきっかけに2008年にできました。世界中の研究者が参加していて、日本では国立感染症研究所もこのデータベースに参加しています。今の対策に重要なのはもちろんですが、今后のウイルス研究にとっても重要なデータです。せっかくあるデータなので大切に解析していかないといけないですね。

流行対策には迅速さが求められますが、データの登録にはどれくらいかかるのでしょうか
登録の速さに関わるのは、感染者何人につき何人からサンプリングするのか、読む遗伝子配列がどれくらいの长さなのか、あともう一つは読むスピードですね。実际にサンプリングされてから登録されるまでのタイムラグは国によります。日本だと2~3ヶ月ぐらいはかかるんじゃないでしょうか。イギリスは早いですね。1~2週间でデータベースに上がってきます。そこは国や机関の方针やお金のつぎ込み方によると思います。だから今起きてる感染の状况というよりは、やっぱりちょっと前に起きたものが反映されることになります。
もちろん、今どういう株が流行ってるかを割とリアルタイムで把握できる検査もあります。日本の场合は全ゲノムを読むのではなくて、ウイルスの特定遗伝子だけを読んで、どの変异株なのかを调べる笔颁搁スクリーニング検査という方法をやっています。
私の研究でも、厚生労働省のアドバイザリーボードに出した资料2)の结果と、贰耻谤辞厂耻谤惫别测谤补苍肠别に出した论文3)の结果は、骋滨厂础滨顿のゲノムデータを使っていました。でも登録に时间がかかって最新の状况を追えなくなってきたので、最近はスクリーニング検査のデータも使って解析しています。

世界中から毎日ゲノム情报が登録されているとなると、大量のデータを扱うことになりますね
新型コロナウイルスの场合、今はダウンロードすることすら难しいぐらいデータが膨大になっています。例えば骋滨厂础滨顿のデータベースの场合、一回にダウンロードできる配列数の上限は10,000本です。新しく研究を始める方にとっては、500万本全てをダウンロードするだけでも大変な作业です。またデータが多すぎて、遗伝子配列の対応関係、アライメントが取るにも工夫がいります。なので情报科学の技术が必要で、私も専用のプログラムをたくさん作って研究してます。

情报学の専门性が活かされているわけですね。元々は情报学分野にいた伊藤さんがウイルス研究をはじめたのはなぜでしょうか
情报学のひとつの応用先が生物の情报学「バイオインフォマティクス」だったので、情报学分野にいたときから勉强をしていました。そうしているうちに2005年に人獣共通感染症リサーチセンターができるという话があって、バイオインフォマティクスの専门家を探していたので、それで移りました。

感染症のウイルス研究がいいなと思ったのは、ウイルスだったらゲノムも小さいし、何かできるかもしれないと思ったというのは少しありましたね。サイズが大きい人间のゲノムを解析するのは无理だなと思っていたんです。ただ、それは素人考えで、特に小さいから简単というわけではなかったですけれども(笑)。
専門を一から勉強するのは大変でした。アミノ酸の名前が覚えられないので、サーバーにアミノ酸の名前をつけたりしていました。僕が一番よく話を聞いたのは高田礼人先生(人獣共通感染症国際共同研究所 教授)ですね。ずっと同じ建物、というか同じ部屋でいたので、高田先生のとこで勉強させてもらいました。いろいろウイルスについても大分詳しくなったので、それは良かったと思います。


西浦博さん(元北大、現京都大学大学院医学研究科 教授)とも共同研究をしていますね
去年からはじめた「異分野融合によるCOVID-19の流行解析のためのデータ科学基盤の整備」を一緒にやっています。厚生労働省アドバイザリーボードに出した資料もこのプロジェクトの研究によるものです。コロナの予測は、感染症疫学と集団遺伝学の両方とも理解していないとできないんですが、その二つの分野を合わせる形でやってきました。やっぱり复数の分野をちゃんと使っていくと色んなことがわかるなと感じます。
2014年から2019年までは「大规模生物情报を活用したパンデミックの予兆、予测と流行対策策定」というプロジェクトで、研究代表者が西浦先生で、私は分担者でやってました。その目标は、西浦先生の専门の感染症数理疫学と、私のバイオインフォマティクス?集団遗伝学を合わせて新しい予测シミュレーションを作ろうというものでした。今回、デルタ株予测の仕事ができたのは、このプロジェクトで作ったインフルエンザの予测シミュレーションの考え方をコロナに当てはめられたから、という歴史的な背景があります。

感染症対策にはまさに异分野の融合が必要です。分野をとびだし、他の分野と共同するには何が大事でしょうか
そうですね、やっぱり复数の分野を知ってると武器にはなるかなっていう気はします。けれども、必ずしもみんながそれをやる必要はないんじゃないかな。自分の専門性の高い分野で活躍してもいいわけですし。
やっぱり他の分野に出ていくのは结构大変ですよ。勉强には10年、15年ぐらいはかかりますしね。だから面白いとは思うんですけどもそれなりに大変なので、もし出てくんだったらすごく兴味があるっていうかな、そういう分野に出ていくのがいいのかなっていう気はします。

12月9日追记
オミクロン株の相対実効再生产数についての暂定结果が、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード资料6)で公开されました。伊藤さんの式が使われており、共同研究者でもある西浦さんが资料として提出しました。
それによると、南アフリカ全国のデータからの计算では9.4倍。首都もあるハウテン州のデータでは4.2倍。同じくハウテン州のデータから别な方法で推计すると3.3倍となっています。
ただし资料では、これらの数値は过大であり、本来のオミクロン株の伝播性を表していないと钉を指しています。その理由には、デルタ株に置き换わってオミクロン株が急増している地域ばかりと限らず、デルタ株が减っているだけの地域もあること、感染が下火になり、他の株がいない状态でオミクロン株が出现したためオミクロン株が大多数を占める状况が起きていることなどがあげられてます。そして资料では、デルタ株からオミクロン株に置き换わりつつある他の国での状况を、引き続き分析する必要があると指摘しています。
12月20日追记
12月16日のアドバイザリーボード资料7)で、伊藤さんの方法を用いると、オミクロン株の実効再生产数はデルタ株の3.97倍と示されました。今回はデンマーク全国のデータからの算出となります。南アフリカのデータでの结果と同じく高い実効再生产数が示されましたが、确定値とはまだいえないと资料では指摘しています。
1月26日追记
1月13日のアドバイザリーボード资料8)にて、各国の研究者の分析や、伊藤さんの分析も踏まえたオミクロン株の特徴についての新たな知见が示されました。ある人が感染してから、别の人に感染させるまでの时间の平均である「平均世代时间」は、オミクロン株は2.1日であり、デルタ株の4.6日より大幅に短いことがわかりました。
従来の相対実効再生产数の计算では、デルタ株とオミクロン株は同じ世代时间であると仮定していました。しかしオミクロン株の平均世代时间が2.1日だとすると、相対実効生产数は2程度になることになります。
伊藤さんや共同研究をしている高田礼人さん、西浦博さんを绍介しているこちらの记事もご覧ください
- 【クローズアップ】#167 新型コロナを情报科学でつかまえる(1)~変異株はなぜ入れ替わりで流行するのか~(2021年11月25日)
- 【クローズアップ】#122 新型コロナ対策、研究と政策現場での6ヶ月~西浦博教授ロングインタビュー~(2020年07月31日)
- 【チェックイン】#80 エボラ出血熱の解明に取り組む人獣共通感染症リサーチセンター(2015年02月05日)
参考文献:
- (2021年11月30閲覧).
- (2021年11月30日閲覧).
- (2021年11月30日閲覧).
- (2021年12月9日閲覧).
- (2021年12月20日閲覧).
- (2022年1月26日閲覧).