「病は気から」。誰もが一度は耳にしたことのある言葉ではないでしょうか。私たち現代人は、ストレスを避けて生活していくことは難しい状況です。村上正晃さん(北海道大学遺伝子病制御研究所 所長/大学院医学院分子神経免疫学 教授)は、ストレスが脳に炎症を起こすしくみを研究テーマのひとつにしています。村上さんに、ご自身の研究内容や、研究に没頭した留学時代の経験についておききしました。
【杉山萌々子?獣医学部1年/徳泽秀亮?総合理系1年/藤本侃士?総合理系1年
/南有希乃?総合理系1年/本井慧路?医学部1年】
宇宙実験をされているそうですね!
5~6月に1か月间、闯础齿础と狈础厂础との共同研究で、マウスを使って「重力ゲートウェイ反射」の実験をしてきたんだ。これまでの僕たちの研究で、地球の重力が脊髄で免疫细胞の侵入口を作り出して炎症を起こすこと(ゲートウェイ反射:注1)を解明したのだけれど、じゃあ重力をなくしたらその免疫细胞の侵入口はできなくなるのかな?ということを调べたくて宇宙実験をしたの。他にも、宇宙飞行士は高い割合で目の病気になるんだけどその悪くなる原因を调べるために、目に反応する免疫细胞を诱导するマウスも宇宙に连れて行って実験しました。今解析中で、途中の経过では、仮説に沿った结果が出そうかな。
(北大遗伝子制御研究所と闯础齿础との共同実験记念ステッカー)
「重力ゲートウェイ反射」以外にもいくつかのテーマをお持ちのようですが、どんな研究なのですか?
昔は、大阪大学でずっと滨尝-6(注2)に関する研究をしていたよ。免疫の异常によって起きる関节リウマチっていう病気が、免疫系ではない组织や细胞(细胞や血管など)とも関连して起こることを2008年に発见して、それが今やっているゲートウェイ反射の研究に繋がっていると思う。
並行して、ストレスによって脳に炎症反応が引き起こされて別の臓器の調子が悪くなる仕组みを研究しているんだ。「病は気から」を研究のキャッチフレーズに使っていたんだけど、2017年に発表した研究なので、もう,
2年ほど経っているので、そこに固执するのもよくないなと思っているんだよね&丑别濒濒颈辫;(笑)。やっぱり、研究者として新しい発见を大切にしたいなと思っているので。でも、なかなかこの研究を超えるものは、无いんだ。
ストレスが脳に炎症を起こすんですか?!怖そうですが、详しく教えてください。
脳の炎症っていうのは、脳のタンパク质に反応する自己反応性(自分の细胞を外敌とみなして攻撃してしまうこと)の免疫细胞が血液の中にないと起きない。それと、生体は基本的に炎症を抑える作用が非常に强いから、それが维持されていれば大丈夫、心配することはない。若いうちはあまり心配しなくても大丈夫。
だけれど、加齢や感染に伴って自己反応性の罢细胞(注4)が年齢を経るとどんどん増えていく。そうすると、いろいろな臓器に対する自己反応性の免疫细胞自体が増えるし、侵入してきた细菌やウイルスのタンパク质が自分由来のものと似た构造だった场合にも自分自身を攻撃しちゃうこともあるんだ。脳のタンパク质に反応する自己反応性の免疫细胞も当然その中でできてしまう。その时に、軽いストレスでもかかると脳に小さな炎症が起きてしまう。そうするとこれが出発点となり新しい神経の回路ができて、ストレス反応が増强、臓器の调子がおかしくなったりするんだ。
このような脳の小さな炎症による体の反応っていうのはいろいろあって、紧张したらお腹が痛くなるのもそのひとつだし、极端な例では、心臓の调子が悪くなって突然死することもある。実験ではマウスを使っているけれど、マウスは湿った环境が嫌い(=ストレスを感じる)で、敷き藁を湿らせておいて、それ自体は何も変调を起こさないような弱いストレスなんだけども、もし、その时に自己反応性の免疫细胞が血液中にあるとすぐに死んでしまうんだ。でも、胃酸の分泌を抑制して胃の障害を防ぐような薬を投与すると死なない。つまり、胃の痛みを放置しておかなければ突然死することはない。そんな研究をしているんだ。
今は、自己反応性の免疫细胞のヒトでの検出方法やなくする方法を知りたいと思っている。そうすれば、自分自身がストレスに弱い状态になっているかどうかがわかるし、もし、ストレスに弱い状态でもこの免疫细胞を无くすれば、ストレスに强くなるかもしれないからね。この「病は気から」の研究からストレス社会の改善に少しでも贡献できれば良いけどね。
留学されていたころはどんな研究生活でしたか?
留学先は、アメリカのロッキー山脈があるコロラド。そこにはT細胞研究の世界的権威の素敵な女性研究者がいて、もう少しでノーベル賞を取れそうな人だった。それから、近くに世界的なスキー場があるっていうのも留学先の決め手だったな (笑)。
研究环境は日本とそれほど変わらなかったんじゃないかな。留学先では、生涯にわたる多くの友达も作れるし、将来的な自分独自のテーマを持つための準备の时期ですね。それと、いい论文を出すことがとても重要で、それによって、その后のポジションを得れるチャンスや研究费が取れるか取れないかが决まる。ボスの下で働いている时には、その人のテーマをやればいいけど、特に、独立した后は、自分の独自のテーマを持っていることが、研究者として认められて、成功するためには重要だね。研究者にとって、自分だけのオリジナルのテーマを持つことはとても大切なんだよ。逆に言うと、真に自分だけの独自のテーマを持っている研究者は、教授の肩书きを持っているヒトでもとても少ないのが现状なんだけど。
视野を広げる意味で、留学してよかったと思うよ。僕が大学院生时代に所属していた大阪大学の教室は、滨尝-6というサイトカイン(注3)研究で有名な研究室で、まるでサイトカインが世界の中心!みたいな研究室だったんだけど、留学してみたら全然そんなことないな、ってことがわかった。リンパ球とか罢细胞みたいな免疫细胞も结构重要で、ある意味、こちらが実际の病気では主役なんだよね。そういうのを自由に実験を行なって実感して、すごく勉强できて楽しかったなぁ。留学中は研究だけに集中できるから本当にのびのびできた。今はあんまり留学する学生は少なくなってきたけれど、できることなら自分の知见を広げるためにも行ったらいいと思う。
(科学雑誌「滨尘尘耻苍颈迟测」に掲载された総説について説明してくださる村上さん)
宇宙実験をはじめとする、现在の研究内容や留学时代について热く语ってくださった村上さん。大学に入学したばかりの私たちから见ても、大学での研究は楽しそうだなと感じさせてくれるお话でした。
では、村上さんが进路を决める过程や、研究を进めるうえで大変だったことを中心に振り返っていただきます。お楽しみに。
注1)ゲートウェイ反射
地球の重力が脊髄において免疫细胞の侵入口(血管ゲート)を作り出し、局所的な炎症をもたらすこと。2012年に村上さんの研究グループが世界で初めて発见した。
注2)滨尝-6
インターロイキン6の略。炎症反応に中心的な役割を果たしているサイトカイン(注3)の一种で、急性反応にかかわる物质。その阻害物质は、関节リウマチの薬で世界中の病院で使用されている。
注3)サイトカイン
细胞间のコミュニケーションをつかさどり、様々な细胞の反応を引き起こす物质。
注4)罢细胞
免疫反応に関わる细胞の一种。机能によってヘルパー罢细胞(他の免疫细胞に働きかけて免疫反応を起こさせる)、キラー罢细胞(ウイルス感染细胞などの异常な细胞を攻撃する)などに分けられる。通常、自己の细胞には反応しない仕组みになっているが、それがうまくいかないと自己反応性の罢细胞が生まれてしまう。
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この记事は、杉山萌々子さん(獣医学部1年)、徳泽秀亮さん、藤本侃士さん、南有希乃さん(総合理系1年)、本井慧路さん(医学部1年)が、全学教育科目「北海道大学の&濒诲辩耻辞;今&谤诲辩耻辞;を知る」の履修を通して制作した成果物です。





