
著者:福岡伸一 著
出版社:20051100
刊行年月:2005年11月
定価:945円
「ノーベル赏を受赏した研究でも,実は间违っていることがある」と闻いたら,世の中の人々はどう思うだろうか。多くの人は,そのようなことがあるとは想像もしないだろう。ノーベル赏といえば科学者の最高の栄誉であり,その対象となる研究成果はもはや完全に実証された揺るぎのないものであると谁もが考える。しかし,実际にはノーベル赏を受赏した研究が后で否定されたり,受赏后も议论の対象となったりしている例もあるのだ。本书で取り上げられているプリオン説も,ノーベル赏の対象となりながらも今なお賛否両论の议论が続いている学説のひとつである。
プリオン説とは,异常型プリオンというタンパク质が病原体となって,狂牛病やヤコブ病といった「スポンジ状脳症」とよばれる病気を引き起こすという説である。细菌やウイルスではなくタンパク质が病原体であるという全く新しい説だったことから,世间の注目を集めた。この説を提唱したアメリカのスタンリー?プルシナーは,1997年にノーベル医学?生理学赏を受赏している。
本书は,プリオン説をもう一度客観的に见直し,果たして本当に正しいといえる理论なのかどうかを検証するという立场で书かれている。検証の対象は,プルシナーの研究手法からデータの解釈,研究结果の示し方にまで及ぶ。その検証の过程で,ノーベル赏まで受赏したプリオン説にも,実は様々な弱点があることが明らかにされていく。异常型プリオンが病原体であることを疑わせるデータが,确かに存在するのだ。そして最后には,スポンジ状脳症が异常型プリオンによるものではなく未知のウイルスによるものであると考えたとしても,それまでのデータは説明可能であるという结论に到达する。
しかし,现状では反プリオン説は学界の主流とはなっておらず,依然としてプリオン説が优势である。プリオン説を否定するデータはまだ多くはなく,その一方で支持するデータは続々と积み上げられている。
科学の世界では,通説を否定する主张は学术论文の形でなされるべきである。十分な根拠に基づく结论なしに,本书のような书籍として仮説を発表することは,科学の成果を公表する一般的な手続きとは异なっている。笔者自身,そのことは认识しているようだ。しかし,たとえ反论のための十分なデータが得られていない状况であっても,本书のような指摘と仮説を示す书籍が存在することには意义がある。科学の理论とは必ずしも确立されたものばかりではなく検証により常に変化しうるものであり,それこそが科学の発展であるということを示すことになるからだ。
高田知哉(2007年度颁辞厂罢贰笔选科生,旭川市)