
著者:栃内 新 著
出版社:20090100
刊行年月:2009年1月
定価:820円
「ダーウィン医学」という言叶をご存知だろうか。
これまでの医学はもっぱら无病息灾だけが望ましいという前提に立って、病気が引き起こす厄介な症状をいかに早く缓和するか、原因を取り除くか、ということに関心をよせてきた。これに対し「ダーウィン医学」は、病気について异なる见方を取る。病気の症状が示す体の変化を解明し、そうした変化がヒトの进化にとって有利な意味を持っていることに着目する。すると、これまでの常识が鲜やかに覆されていくのだ。
たとえば风邪をひいて热が出ると、解热剤を処方して热を下げる。これが、医学の常道だった。
しかしダーウィン医学では次のように考える。风邪の症状を引き起こすウイルスは高い温度に弱い。だから身体が発热すればウイルスの増殖が抑えられる。またウイルスが身体から取り除かれるためには、リンパ球などの免疫细胞が働く必要がある。そうした免疫细胞の働きも、体温が高いほうが速やかに进む。だとすると、解热剤を用いて热を下げることは、ウイルスの味方をしているようなものではないか。ダーウィン医学は、病気になって出る症状が、身体にとって大事な意味のある変化だと教えてくれる。
进化という光を当てて病気を见る视点も兴味深い。500万年ぐらい歴史をさかのぼると、ヒトとチンパンジーは同じ祖先に行き着く。そこからヒトは、四足歩行から完全な二足歩行をするように进化した。
二足歩行によってヒトは、器用に使える手を获得し、文明を筑いた。しかし同时にヒトは、3つの苦しみを背负うことになったという。腰痛と内臓下垂そして难产である。
四足歩行では水平に寝ていた背骨が、二足歩行になって立ちあがる。その结果、上半身の重みを腰骨が支えるようになった。このため腰痛と内臓下垂を避けがたい体型になってしまった。さらに、下がってくる内臓を支えるために骨盘が発达する。しかし骨盘が発达すると产道が狭くなり、こんどは难产という问题が生じる。
さらに着者は続ける。难产を乗り越え、安全な出产の确率を増やすために进化した性质の一つが「つわり(悪阻)」だというのだ。つわりは、妊妇が妊娠初期に特定の食べ物やにおいに対して吐き気を感じる症状である。一时的なもので、自然に解消されてしまうため、医师も重要视してくれない。
しかし、つわりの効用についてアメリカのダーウイン医学の研究者が次のようなデータを示している。强いつわりを経験した妊妇は、つわりをほとんど、あるいはまったく経験しなかった妊妇に比べ、流产の确率が约半分だというのだ。
じつは、つわりを引き起こす食物の中には、胎児の奇形の原因となる可能性をもった物质が多く含まれている。つわりがひどい期间は、胎児に奇形が発生しやすい妊娠叁ヶ月ごろと重なる。これらのことから、つわりが妊妇を、奇形を引き起こす原因物质から远ざけてくれているともいえよう。难产を强いられる替わりにリスクをできるだけ减らしておきたい、そのためにつわりという症状が効果的に働いている。ダーウィン医学は、こう考えるのだ。
こうしてみると、世代を重ね、非常に长い时间をかけ获得した身体の利点を、生活环境を急変させてしまった文明社会では负の遗产であるかのように捉えていることに気づく。そして、私たちヒトも进化という试行错误の末裔で、未だ不完全な生物のひとつであり、そこそこ数百万年の人类の歴史で急に都合よく身体の仕组みを変えることなどできないとわかる。すると、风邪の症状も腰痛もつわりも、ジタバタせずにおとなしく受け入れてみようという気になる。この本は、病気や老化に纳得するための&辩耻辞迟;読む薬&辩耻辞迟;としても有効だ。
中村景子(2005年度颁辞厂罢贰笔本科生,札幌市)