前编では、「地域」をキーワードとして観光学を研究している西山徳明さん(観光学高等研究センター 教授)の活動に迫りました。後編では、西山さんの「今」をつくった3冊の本を紹介します。3冊に共通するのは「见る力」。西山さんとこれらの本との関わりをまとめました。
【叁浦叶子?総合理系1年/石井夏树?水产学部1年/五十嵐元?総合理系1年】
観光学のバイブル
『観光?リゾート開発の人類学―ホスト&ゲスト論でみる地域文化の対応』バレーンL スミス 編、三村浩史 訳(勁草書房/1991)
この本は、文化人类学分野の観光学に関するバイブルのような一册です。本来、文化人类学者たちは、観光学を憎んでいたわけですよ。文化人类学者は、近代化に侵されていない民族の文化がいかにして変容していくのかを研究する人たちです。自分たちがせっかく南海の孤岛に行って、长期间かけてその社会のメンバーの一员として生活しながら観察しているのに、そこに観光客が来てズタズタにされる…
でもこの本を书いた人达は、はじめて「そうじゃない」と言いました。约15年にわたって世界の11の事例を追跡调査して、そこで起きた文化変容を追跡しました。结论として、近代化自体がそれらを変容させているだけであって、観光が犯人ではないことを証明した本なんです。
(西山さんのお部屋には各国の品々が。こちらはフィジーの置物。世界中で研究していることが伺えます)
観光学には人类学や社会学などの理论系の研究や、実业系の研究もたくさんありますが、やはり観光客と地域社会との関係が重要になります。そのためには理论系と実业系の両方をしなければいけない。で、10年前に観光学高等研究センターをたてる时に、先端的な研究をするために「地域」をキーワードにしようという动きになりました。
私の人生に影响を与えた一册
『中国の知恵―孔子について』吉川幸次郎 著(筑摩書房/2012)
『中国の知恵』は、『论语』の解釈、読み方の话をしています。それを通して、孔子について考えていく本です。春秋戦国时代の政治思想家である孔子は、いろいろな领主が群雄割拠しているところに、自分の理想とする政治の在り方を説いて回ります。ところが、どこに行っても上手くいかず、一生流浪して终わりました。しかし、いい弟子に恵まれ、何人かの弟子が孔子の言行を书き上げました。それが『论语』です。
僕が高校1年の时、この本の着者の吉川幸次郎先生を呼んだ讲演会があって、それがきっかけで『中国の知恵』を読みました。ところがこの讲演がまたぜんぜん面白くなくて…(笑)、だけど…この本にはちょっと惹かれてね…僕は全くの本嫌いでしたが、一生のうちに何回か一生悬命本を読んだ时期があって、そのひとつがこの本なんですよね。
『论语』って教育书なんですよね。僕が『中国の知恵』を読み返して思ったのは、孔子が考えていた、「自分が何か理想とするものを人に诉えていって自分を买ってもらい、自分の思想や考え方を认めてもらって役に立つ」ということと、自分のやっている「地域に入って自分の考えを诉えて、地域を良くしよう」ということに、繋がりがあった、ということです。それと、もう一つ、『论语』には孔子の弟子との兼ね合いなどのエッセンスが书かれています。僕は『中国の知恵』を通して、人间が人间として、亲子、友达、それから组织、そういうものを、どう考えていくのか、付き合っていくのか、まとめていくのか、といったことを学んだんです。
僕の価値観のほとんどは、孔子の本を読んで形成されたのかな。孔子の生きる姿势に影响を受けたと、最近すごく思います。
学生に読んで欲しい本
「信ずることと知ること」「美を求める心」小林秀雄着『考えるヒント3』(文春文库/2013)
高校から大学になるかぐらいの时に小林さんのエッセイ『信じることと知ること』を読んだときに、なんかそこにすごくヒントを感じたんですよ、これものすごい大事なことちゃうかなと思って。
人间は、教养とか知识、あるいは概念でものごとを理解しようとすることで、本当の人の心とか、美しさにシャッターを下ろしてしまって、非常に贫しい精神的な生活を送っている。目の前にあるものとちゃんと向き合う力を失っているというわけです。そういうことで君たちはいいのか、と『信ずることと知ること』では言っているんですよ。
(西山さんが手を置いているのは「信ずることと知ること」が収録されている蔵书『小林秀雄全集第十叁巻』)
『美を求める心』も実は一绪です。路端の紫の花を见たとき、最初は「きれいな花だな」と思って近づいて见ようとしたのに、「あっ、スミレの花か」って概念と置き换えたとたんに安心して立ち去ってしまうわけです。でも本当はその美しさっていうのは、别に「スミレの花」という美しさがあるわけじゃなくて、その花そのものの美しさがあるってことなんですよ。なまじ、「スミレの花は美しい」っていう概念が头にあるから、本当のその花の美しさと付き合うチャンスを捨てている。さかしらな素人っていうのは、本当の美に出会えなくなっている、ということを言っている。
そこに、観光学のひとつの考え方の大きなヒントがあるんです。実は、今回インタビューを受けて初めて気がついたんだけどね(笑)。観光学研究で地域に入ってみると、地域には学歴が高くなくても大変な知恵がある人がいるんです。だから学者たちが一方的に教えてあげようって构図は実は全く逆なんですよ。気づかなかった価値を见つけ出す、それとおんなじようなものがもっと地上にたくさんある。そういうものの価値や大切さに気づくのが大事だなと。この歳になって、あなたたちに闻かれて、こんな风にしゃべってるのはおかしいな…と思うんだけど(笑)
(今回とりあげた二编は、文春文库の『考えるヒント3』で読む事ができます)
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どの本も西山さんの研究や考え方の元になり、まさに西山先生の内面を表した本でした。最后の「学生に読んで欲しい本」では、知识や教养を蓄えようとし始めている私たち学生に対して、西山さんはあえて「知识や教养で物事を理解することは、本当の美しさにシャッターを下ろしてしまうかもしれない」というメッセージを送ってくれました。自分の视野に无いものについて「そのもの自体」を纯粋に见られる学生でありたいと思います。
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この记事は、叁浦叶子さん(総合理系1年)、石井夏树さん(水产学部1年)、五十嵐元さん(総合理系1年)が、全学教育科目「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果物です。






