放射線の一種である陽子線を操ることで、ガンを治療する最新の治療法があります。医学研究科教授の白圡博樹さんは、呼吸などによって微妙に動く病巣に、極めて高い精度で陽子線を当てる技術を開発し、国際的にも阳子线治疗の先端を走っています。
私たち大学一年生からなる取材班は、研究の世界とはどういうものか、大学での进路をどう考えるべきかについてヒントを貰うべく、白圡さんに迫りました。先生の考える研究のありかた、そして研究を目指したきっかけとは?
【松田直辉?総合理系1年/上条友夏子?医学部1年/斉藤骏?医学部1年】
先生にとっての「研究」とは何でしょうか
研究には二つあります。ひとつは职业としての研究です。やはり医学ですから、研究のための研究ではなく、患者さんに元気になっていただかなければなりません。でも、どうしても治せない患者さんも半分はいます。ですので、次に同じような症状の方が来た时には治せるように、とモチベーションに変えて研究に取り组んでいます。今の立场になってからは、なかなか病院で患者さんとコミュニケーションをとることが少なくなっていますが、その分、研究で少しでも患者さんのためになるように顽张っています。大学でできることは「目の前にいない人をなおす」ということですから。
もうひとつはプライベートとしての研究、真理を追究する研究です。兴味や関心のある分野を学ぶことで、今まで见えてこなかった事が明らかにできないかと探っています。自分の弱い分野を得意な人と一绪に研究する时间が、ある意味で幸せですね。
饱くなき探究心と尽きない好奇心が白圡さんの行动の支柱にあるのでしょう。そして、厳しい临床の现実がさらに意欲を高めることを学びました。いくつもの言叶から白圡さんの闘志を感じることができました。
次に、阳子线治疗の研究への素朴な疑問をぶつけてみました。

放射线というと「危ない」というイメージがありますが…
放射线を「安全」というのは言い过ぎかなと思いますが、例えば手术で使う刃物を思い浮かべてください。「メス」というのは「ナイフ」のドイツ语で、「ナイフ」というと凶器に闻こえますが、どちらも同じものです。実际、ナイフは医疗において极めて役立っているわけです。同じように放射线もただの道具で、よく切れるナイフだと言えます。放射线には発がん性といった性质もありますし、従来の放射线治疗法では正常な组织も壊してしまう副作用もありました。でも、适切に使うことで、治疗の有用性が格段にあがります。

実际、阳子线治疗を适切に行うと副作用がほとんどありません。小さいがんの场合、患者さんが何も感じないうちに照射が终わります。痛みを感知する皮肤や粘膜に阳子线を当てて伤つけることなく、呼吸などで动いているがんのみに照射することができる、动体追跡という北大が开発した技术も役立っています。

こういった最新の技术を知らない人が世の中にはたくさんいます。放射线に対する患者や医疗従事者の印象が変われば放射线治疗はもっともっと普及するはずと感じました。
最后に、このような先端的な研究に至る道についてうかがいました。
数ある医学分野の中で、どうして放射线科に进もうと思ったのでしょうか
僕が放射线医になろうと思ったのは卒业间际、最后の最后です。様々な科を考えましたが、优秀な人は上の学年にも周りにも山ほどいたので、「自分じゃなきゃいけない」というか、「自分を生かせる余地」が全然ないと思ったんですね。结局、诱ってくれる先辈がいて放射线科に入りましたが、やりがいは予想以上でした。人が少ないので责任をすぐもたせてくれて、次々にいろんな仕事ができました。促成栽培、なんて言ってましたね。
僕が重要だと思うのは「困难とチャンスはうらはら」ということです。そこをどう乗り越えるか。例えば第一印象の良くない放射线という世界に、好んで飞びこもうとはしないかもしれません。しかし、関わる人の少ないこの未开拓な分野だからこそ、自分を生かせる场面がたくさんあったんです。
カナダとイギリスの留学でも同じことに気が付きました。海外では放射线诊断と放射线治疗の分业が进んでいて、それぞれ素晴らしい研究者もいました。日本では分业はすすんでいませんでしたが、逆にそれが强みだと思ったんです。动体追跡技术は、がんを见つけるための诊断技术と、がんを治すため治疗技术の融合です。この分野ならガツガツしなくても、ゆっくり研究しても絶対胜てる、と。僕はあんまりがんばらない方の道を选んでます(笑)
実际に困难をチャンスにしている白圡さんの言叶には、奥深さがありました。そして、自分がいるべき场所は放射线科にある、先生の眼差しがそう语っていました。私たちもこれから何度も困难に出会うでしょう。そんな时に、白圡さんの言叶を思い出してみようと思いました。
后编では、白圡さんが绍介する3册の本から、さらに白圡さんのルーツに迫ります。
この记事は、松田直辉さん(総合理系1年)、上条友夏子さん(医学部1年)、斉藤骏さん(医学部1年)が、全学教育科目「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果物です。


