総合博物馆の南侧に、小さいけれど味のある石造りの建物がぽつんと立っています。何だか歴史を感じるのですが、どのようないわれがあるのでしょうか?
今回からスタートする新企画「过山(すぎやま)博士の本棚から」では、北大の歴史にまつわる疑问に过山博士が答え、そのエピソードを绍介していきます。
過山博士が何者かって? それはね…
ちょうどいま、资料を持って出てきましたよ。
「おや、こんにちは。私が过山です。歴史の研究をしています。
ああ、この建物に目を付けるとはスジがいい。これは1927年に建造された昆虫标本室です。建造物としても、それにまつわる人々の物语にも、なかなか面白いエピソードがあるのです。
この建物の背景には、日本の昆虫学の础を筑いたといわれる松村松年(しょうねん)の存在がありました。松村が切り拓いた昆虫学は、连绵と受け継がれ、现在も北大を象徴する分野のひとつとなっています」
贵重な标本を守る、不燃构造の昆虫标本室
札幌农学校が开学当初の大通付近から现在の场所に移転して以来百十余年の间、学生や教职员、市民の憩いの场として亲しまれている「エルムの森」。木漏れ日に辉く芝生を眺めながら歩いていると、ツタの红叶に彩られた石壁の建物、旧昆虫标本室が姿を现します。
昭和2(1927)年に建てられたこの标本室は、壁は石造り、床と天井は鉄筋コンクリート造の混构造です。当时の図面を见ると、昆虫标本を火灾から守るために札幌特产の石材が使われているほか、耐火シャッター付きの窓枠を採用した不燃构造となっていることが分かります。




日本の昆虫学の础を筑いた学者、松村松年
この昆虫标本室の建设を実现したのは、松村松年という人でした。松村は、札幌农学校农学科を卒业した翌年の明治29(1896)年、24歳で同校の助教授となり、明治35(1902)年、昆虫学教室の初代教授に就任。以来、昭和9(1934)年に同职を退くまで30年余り、世界的に遅れていた日本の昆虫学分野をリードし、飞跃的に発展させました。

松村の研究対象は、现在の研究者では考えられないほど広いものでした。特に力を注いだウンカ类などの半翅目をはじめ、チョウなどの鳞翅目、ハチなどの膜翅目、カなどの双翅目までを扱い、松村が命名した昆虫は、日本产に限っても约1,100种を数えます。また、英独文150编、和文100编の研究论文、50册の単行书を着し、それらを积み上げると松村自身の背丈をはるかに越えたといいます3)。

なかなか作ってもらえなかった昆虫标本室
松村のこれほどの活跃にもかかわらず、この昆虫标本室は、すんなりと建ててはもらえませんでした。その背景には、独裁的なところがあった当时の総长佐藤昌介と、松村の负けん気の强さによる确执があったと考えられています。昭和2(1927)年に昆虫标本室が建てられたのは、同年に职を辞した佐藤総长による恩赦的な计らいだったのかもしれません4)。同年6月26日付の小樽新闻は「(前略)松村博士は常に不燃质の标本室の必要を説いてゐたが今回愿望がかなひ(中略)建る事となり博士は渐く息をついた(后略)」と报じており、松村の悲愿成就の喜びが読み取れます。
こうして作られた昆虫标本室は、松村の退官后、后任の教授となった内田登一の代の初期まで标本室として利用されました。その后、昭和11(1936)年に农学部新馆(现在の农学部の中心となっている建物)が落成すると、昆虫学関连讲座は新馆に移転。昆虫学教室だった建物は、その后しばらくの间、北方文化研究室として使用され、昆虫标本室は资料室となりました5)。现在、この石壁の建物は、大学文书馆が北大の歴史的资料を保存するための书库として利用されています。



今なお在り続ける、松村の遗したものたち
松村が昭和9(1934)年に退官するまで门下生と共に作り上げた昆虫标本群「松村コレクション」は、昆虫学教室を受け継ぐ研究者たちによって维持されています。その総数は30万点とも50万点とも言われていますが、正确な数字は定かではありません。
また、松村が昭和元(1926)年に创刊した昆虫学の欧文誌『インセクタ?マツムラーナ』は、第二次世界大戦の时を除いて継続して出版されており、现在は农学研究院纪要の昆虫编として、年1册、世界中の研究者に届けられています。

后编では、松村の昆虫分类学を受け継ぐ研究者の一人である大原昌宏さん(総合博物馆?教授)にお话をうかがいながら、松村门下の研究者たちや昆虫标本のことをご绍介します。
【佐々木学?颁辞厂罢贰笔本科生/北海道大学职员】
资料提供?参考文献:
- 『昭和二年度 北海道帝国大学農学部新営工事設計図 昆虫標本室新営工事平面及各部詳細』 北海道大学事務局所蔵
- 大原昌宏教授(総合博物馆)提供
- 札幌市教育委員会『札幌昆虫記 (さっぽろ文庫)』北海道新聞社(1990)
- 岩沢健蔵『北大歴史散歩』北海道大学出版会(1986)
