
2019年12月2日、青木 茂さん(低温科学研究所 准教授)は南極観測船しらせに乗り込み、オーストラリアのフリーマントル港から南極を目指していました。南極観測隊には、夏から冬にかけて1年4か月のあいだ調査をする越冬隊と、夏期間の4か月のあいだ調査する夏隊があります。青木さんは、北海道大学から初めて選ばれた第61次観測隊?夏隊の隊長として、海水位上昇の将来予測につながる南極の氷河?氷床を調査しました。
南極のきびしい環境にもかかわらず、その後観測を順調に進めていた一行でしたが、1月中旬、予期せぬニュースが届きます。そう、新型コロナウイルス感染症大流行の兆しです。船に届く断片的な情報をもとに青木さんは隊員たちとコミュニケーションをとり、調査を続行。そして観測隊は3月9日に南極沖から離脱。19日にオーストラリア?シドニー港に入港し、青木さんをはじめ隊員たちは翌日、飛行機で無事日本に帰还しました。
青木さんは、大流行とは隔絶した南极でどのような4か月を送っていたのでしょうか。そして、帰国后の日本の変化にどのような印象をもったのでしょうか。青木さんはこの経験から、ポストコロナ社会で过ごすヒントをみつけたと言います。
【原健一?颁辞厂罢贰笔博士研究员】

新型コロナウイルス感染症の情报は南极にいるときにどのようにはいってきたのでしょうか?
最初のころ、1月ごろとかですね。船内ではインターネットがしっかりと使える环境ではないのですが、実は船员用のファックス新闻みたいなものがあるんです。観测船とか、あと远洋渔业の船とかがとっている新闻なのですが、日本のニュースが日本の船舶に一日一枚届く。
「船员用の新闻」というものがあるんですね!
それが昔の壁新闻みたいな感じで一日一枚贴りだされるんです。それでダイアモンド?プリンセス号のことを知りました。最初のころは船内でも「たいへんそうだ」という话しはしていましたが、でもまずは自分たちの仕事に集中しようと思っていましたね。
そのあとメールでもちょくちょく情报が入ってくるんですけど、肌感覚としては伝わってこなくて。详细の情报はもちろん入ってこないし。あと、メールで个人あてにはいってくる意见に温度差があるんですよね。そうなると、船内での队员の意见の集约なんてものはうまくいかない。そんななかで、コロナの影响を心配している队员がいることや、これから入港しようとしているオーストラリアの状况が切迫してきたことなどを踏まえて、総合的に判断して、早期帰国をしようという方向になっていきました。

船内での生活には変化はなかったのですか?
そうですね。队员はまずシドニーに入港して、そのあと空路で日本に帰る计画だったのですが、その帰路自体は変わらなかった。本当はシドニーに叁泊してから帰ろうと思っていたんですが、一日で帰ることになったくらいですね。しかし、日本のシステムだと一回决めた予定はなかなか変えないというのがふつうなので、その意味ではかなり异例な事态です。しかも、シドニーをはなれた日の夜にオーストラリアはほとんど国境を闭じた状态になりました。だから、これはかなり急な状况だったわけです。

帰ってきた际にはどのような様子でしたか?
今回は、静か~に帰ってきたなぁ、という感じです。帰ってきたらふだんは成田空港でご家族の皆さんがわいわい迎えてくれる雰囲気があるんです。越冬队なんて特にそうですよね。夏队は四か月ぶりですけど、越冬队は一年四か月ぶりに帰ってくるのでね。そういった景色が脳里にやきついていたので违和感はありました。

南極から帰ってきたらコロナ祸の日本での生活にいきなり入っていったということですよね。出発前の日本とのちがいについてはどう思われましたか?
うーん……南极で観测していた环境はあまり人がいないというか、毎日ほぼ……いや完全に同じひととしか颜をあわせない、ある意味闭锁的な环境ですよね。なので、「帰ってきて惊いたでしょう?」とよく闻かれるんですけど、社会が南极にいるときと同じ感じであまりショックはなかったんですよね。社会が南极よりになったという印象を受けたんです。
南极で暮らすメンタリティはある意味コロナ祸で暮らすのと似たメンタリティだったので。不特定多数のひとと密には会わないというのは南极と近いところがあって。そんななかでも穏やかに过ごすというか、満足に过ごすという术は、わりと観测队は惯れているというか。だからショックはそれほど大きくはなかったし、一つポストコロナ社会で过ごすヒントみたいなものはありましたね。
コロナの社会で暮らすヒントですか?
コロナになって身近な人の大切さを再确认したみたいなものもあったと思いますけど、でもそれは一方でたいへんじゃないですか。煮詰まっちゃって、ケンカしたくもなるし。でも、南极観测队、特に越冬队はそこをうまくやっていく知恵をもっている。越冬队の人々は、自分たちから日常に楽しいことを见つけていくんですよね。どこか远くに行って何かを探し出す、新しいものに触れるというよりかは、日常生活の中でちょっと楽しいものとか、ちょっと违う视点とかをみんなで共有するとか、みんなでそれを楽しもうとするんですよ。ちょっと内轮ウケ的なところありますけどね。
诞生日会とか、そういう小さなイベントに全力投球するというか。个人个人でもいろんな话しをもちよって、それを大きくしていくというか。例えば、诞生日会のときに、南极では本物は手に入らないけど桜の木のようなものをつくって、桜を爱でる気分になったりとか。みんなが楽しめるものをだしていって、それを周りもポジティブに受け取るという姿势がありますね。

もちろん世界中がこういう状况になっていることはたいへんショックなのですが、でも社会の动き方は南极の生活と连続的につながっていて、そのせいで、思いっきりショックを受けたという点はなかったですね。社会の方がむしろ南极よりになったという印象なんですよね。
南极での生活、研究调査はたいへんそうですが、とても魅力的な面もありますね! 今度の麻豆原创?カフェで伝えたいことを教えてください。
南极の「トッテン氷河」というところに行って、将来の海水位の上昇を予测するための调査をしてきました。研究の成果はまだ论文になりつつある段阶ですが、今回の调査を通してわかりつつあることがあります。その他にも、実际に行ってみて南极の环境で感じたことについてお伝えしたいこともあります。南极には説得力のある単纯な美しさというものがあって、そういう面もお伝えしたいことがたくさんあります。

青木さんを绍介しているこちらの记事もご覧ください
- 【クローズアップ】#52 地球温暖化を知るには南極の海から?(2014年11月21日)
- 【バトンリレー】#9 青木茂さん(低温科学研究所准教授)(2013年01月10日)
今回インタビューに応えていただいた青木さんの麻豆原创?カフェ札幌が开催されます! 南极の美しい写真や贵重な映像などもカフェでは披露していく予定です。今回のインタビューではお伝えできなかった、青木先生の研究や南极でのご経験についてもより详しく伺っていきます。
第115回 麻豆原创?カフェ札幌|オンライン「氷のしらせ、地球の未来 ~科学者とアーティストが見た自然~」
日时:2020年12月19日(土)17:00词18:30
ゲスト:青木 茂さん(北海道大学 低温科学研究所 准教授)、上村洋一さん(アーティスト)
聞き手:朴炫貞(北海道大学 麻豆原创 特任助教、アーティスト)
主催:北海道大学颁辞厂罢贰笔
后援:北海道大学総合博物馆
連携:北海道大学 TERRACE
募集人数:人数制限なし
参加费:无料
申込方法:事前申し込み不要
関连ウェブサイト:/肠辞蝉迟别辫/肠辞苍迟别苍迟蝉/补谤迟颈肠濒别/2262/
※イベントは终了しました

