バイオテクノロジーの医療応用の進展で、妊娠初期の胎児の検査にのみならず、着床前の胚の検査や疾患予防を目的とした医療介入が可能になりつつある現状を理解したうえで、「健康とはなにか」「人の尊厳とは?」「生きるとはどういう意味なのか?」を考え、参加者全員が意見交換をする対話の場「第77回 麻豆原创?カフェ札幌」が開かれました。10月19日(日)、会場となった札幌市の中心にある紀伊國屋書店インナーガーデンには、約100人の市民のみなさんが集まりました。この日のために、特別ゲストとして児玉真美さん(メディカルライター)を迎え、石井哲也さん(本学安全衛生本部特任准教授)と大津珠子(麻豆原创特任准教授)が進行を務めました。プログラムの前半は、石井さんと児玉さんからの話題提供、後半は参加者によるディスカッションで構成されました。
石井哲也さんのお话:「出生前の命」の検査と遗伝学的介入について
石井さんは生殖の科学、胎児の検査、胚の検査、さらに卵子や胚の遗伝的改変技术について解説しました。生殖に関わる医疗技术は、女性の体内で生じる受精プロセスを、体外で行うことを可能にしました。体外受精や顕微授精によって受精卵を作り、顺调に成长している胚を选んで子宫に移植する技术です。着床后、胚は胎児へと発达していきます。そして、意外にも受精4週目には将来卵子や精子の元となる始原生殖细胞が作られ始め、増えていくことから、胚の段阶から次々世代の元もすでに生まれているといえます。そしてヒトらしい姿をした胎児に発达していきます。
このような生命の诞生プロセスを知った上で、「出生前の命」をどこまで検査し、人は次世代の健康を得るためのコントロールしたいのか?そもそも健康とは何か?石井さんは会场に问いを投げかけました。2013年には、アメリカ?フィラデルフィアで、胚の段阶で、全ゲノムの解析を経た男の子が生まれています。究极の个人情报であるゲノムが、両亲の同意は得たかもしれませんが、当事者である男の子の同意なく、解析されたことを意味します。さらにイギリスでは现在、「ミトコンドリア置换の解禁」という法案が审议されています。これは、卵子にあるミトコンドリア顿狈础异常に起因する疾患の遗伝を予防するために、患者女性の卵子と、ドナー卵子の间で核顿狈础を取り替え、异常なミトコンドリアを除去すること、また、夫妇の胚とドナー胚の间でのミトコンドリア置换を认めようという法律です。つまり、卵子や胚の改変です。3人の遗伝情报を受け継いだ子どもが生まれるという、非伦理的な侧面もありますが、同时に「ミトコンドリア置换の解禁」が核顿狈础の改変を许す引き金となり、世界的に歯止めがきかなくなるのではないか?石井さんは问题提起しました。
児玉真美さんのお话:?コントロール幻想?
石井さんの话题提供を受けて登场したのが児玉真美さんです。重症心身障害を持つお子さんを育てながら出会った、「アシュリー事件」が、児玉さんの活动の原点です。この事件は、2004年にアメリカ?シアトルで起こりました。身体的にも知的にも重い障害を持つ女の子を手术して、子宫と乳房を摘出、その后大量のホルモンを投与して成长を止めようとしました。どうせ、子どもを生めないのだから、どうせ普通の社会生活を送れないのだから、子宫も乳房も身长も必要ない…。邪魔なだけなら除去してしまおうという医疗行為です。
日本では大きく报道されませんでしたが、世界中で伦理论争が起こりました。この论争に関心を持った児玉さんは、「アシュリー事件」をテーマにしたブログページを开设、事件の成り行きを丁寧に追い続けてきました。さらに、世界でどのような生命を巡る伦理问题が起きているのか、调査を始めたそうです。それらの调査を経て児玉さんは「コントロール幻想」という言叶に行きつきます。私たちは、科学とテクノロジーを使って、人间の身体も能力も、命さえもいかようにもコントロールできるという「幻想」を持ち、その幻想が広がりはじめているのではないか…。それは、幻想にすぎないということに気づいてほしいと、ご自身の経験をもとにしたお话が続きます。
遗伝子诊断も生殖补助医疗も代理出产も「自己选択」「自己决定」だといいます。选択が増えると、それだけ人はハッピーになれるという考え方は、「命の选択」にも当てはまるのでしょうか?子どもを生めなかったら幸せになれない、障害のない子どもを生まないと幸せになれない、知能に问题がない子どもでなければ幸せになれない…。人生の幸せってそんな単纯なことなのか?会场に集まった市民のみなさんも、静かに児玉さんの言叶に耳を倾け、お话の成り行きを固唾をのんで见守っていました。
ディスカッションタイム
休憩を挟んでカフェの后半は、参加者が主役です。8グループに分かれて、「人としての尊厳について」「胎児の検査について」「胚の検査について」「胚の改変について」意见を交わしました。




