柴田 夏実 (2024年度選科B/北大水産科学院)
商业施设に现れるクマ、民家の屋根を駆け回るサル……。近年、市街地における野生动物の出没が度々报じられます。こうした野生动物と人间の共生を目指すうえで欠かせないのが、これらの问题を取りまく人々の「感情」の理解です。
大学院时代、キツネの生态学やエキノコックスの疫学に関する研究を进めるなかで、科学研究が社会から隔离されていることに疑问を覚えたと话す颁辞厂罢贰笔の池田贵子先生。惭4-2の讲义では、池田先生が取り组まれたキツネに関するリスクコミュニケーションの事例を通して、獣害问题の解决に必要な感情的理解のためのアプローチを学びます。

野生动物のもつリスク
野生动物はしばしばマスコットとして扱われ、ときには観光资源になることもある存在です。北海道では、クマやキツネをモチーフにした可爱らしいグッズを目にする机会が多く、笔者もつい手を伸ばしてしまいます。
こうしたベネフィットが存在する一方で、野生动物は农作物を荒らす、感染症を媒介する、市街地に出没するといったリスクを持っています。野生动物によって引き起こされる被害、いわゆる「獣害」の问题は、科学だけでは解决できない场合がほとんどです。これは、リスクの性质?程度の见积もりが困难であることや、リスクの重要度?対応コストの认识が人によって様々であることに起因します。
では、何をもって獣害问题が「解决した」と言えるのでしょうか。多くの场合、獣害をゼロにすることは不可能なので、獣害问题の解决は以下のように捉えることができます。
- 被害を最小限に食いとめる、これ以上増やさない(知识?行动)
- うまくやりすごす(态度)
前者は适切な知识?行动の获得ということで纳得できますが、后者は少々漠然としていますね。実はこの「うまくやりすごす」が意外と重要であるというお话はまた后ほど……。

獣害问题におけるリスクコミュニケーション
獣害问题の解决を目指すうえで必要なのが、リスクコミュニケーション(リスク対応における利害関係者のコミュニケーション、以下リスコミ)です。獣害问题におけるリスコミは、「平时のリスコミ」「有事のリスコミ」に大别することができます。例えば、クマが市街地に出没するケースを想定すると、クマが人里に降りてこないようにする対策の立案が「平时のリスコミ」、出没したクマを山に返す/駆除するといった対応の検讨が「有事のリスコミ」にあたります。
人间は有事の际、情报を理解するのが难しくなり、直感的な判断をする倾向にあるため、リスクに対して実态からかけ离れたイメージを持ってしまう可能性があります。また、有事のリスコミは専门家が主导するため、原则として市民が主体的に関わることはありません。どうやら、市民参加が必要となる「平时のリスコミ」に问题解决のカギがあるようです。

キツネは悪者?
平时のリスコミは一体どのようなものなのか、そしてどのように獣害问题を解决しうるのか、実际に池田先生が取り组まれたキタキツネに関する事例をもとに确认していきます。
キタキツネは、エキノコックス多包条虫と呼ばれる寄生虫を媒介し、人间にエキノコックス症を引き起こすことで知られています。エキノコックス症は肝机能障害などを伴う疾患で、现在も人间を対象とした特効薬は存在しません。1980年代以降、キツネの感染域?感染个体数は徐々に拡大?増加しており、过去20年间では毎年10-30人の新规患者が报告されています。また、近年では都市部に定着したキツネが饵付けなどによって人驯れしてしまうこともあり、キツネと人间の接触频度が上がることによる问题の深刻化も悬念されています。
札幌市内の公园では、キツネが频繁に出没することに対する市民からの苦情に头を悩ませていました。そこで、公园、行政、そして研究者である池田先生との协働が始まります。市民に対する讲义やキツネの観察などを行う「パークライフカフェ」をはじめとして、搁笔骋を意识した构成のキツネ観察ツアー、など、キツネやエキノコックスのことを市民に知ってもらうための様々な取り组みが実施されました。その结果、公园に寄せられるキツネに関する苦情は以前の1/10に减り、リスコミは大成功を収めました。これらの活动においては、定期的な情报提供や、亲しみやすい体験?教材が功を奏したと言えそうです。ところが、池田先生は「これだけが成功の理由ではない」と语ります。

「やっちゃダメ」では不十分
人間がリスクやベネフィットをどのように捉えるかに着目して野生動物管理に活かす、Human Dimensions of Wildlife Management(野生動物管理における人間事象)という学問分野が存在します。害獣を含む動物の保全のために発達したこの実践的学問におけるキーワードは、Acceptance(受容性)とTolerance(耐性)です。
このアプローチが用いられた过去の事例からわかったことは、リスクのみに焦点を当てて特定の行动を禁止する注意唤起は市民の础肠肠别辫迟补苍肠别を下げる一方、その动物のプラスの侧面を同时に提示することで础肠肠别辫迟补苍肠别が上がるというものでした。ここでいう础肠肠别辫迟补苍肠别は、単に「そこにいてもいい」という许容のみを示すものではなく、「どうにかして共生したい」という感情をも内包する语です。
キツネに関するリスコミの事例でも、リスクだけでなくプラスの侧面を提示することでエキノコックスへの础肠肠别辫迟补苍肠别が上がったことや、「自分で何とかできる」という感覚が得られる体験によってキツネへの础肠肠别辫迟补苍肠别が上がったことが、ひそかに成功を支えていたようです。この「自分で何とかできる」という感覚の获得は、先述した獣害问题の解决「うまくやりすごす」の达成に寄与します。その种に対する础肠肠别辫迟补苍肠别が高まることで、知覚リスクが必要以上に高まるのを防ぐことができるのです。獣害问题を乗り切るためには、正しい知识をインプットするだけでなく、过度な不安を抱えずに「うまくやりすごす」意识をもつことが重要なのかもしれません。

おわりに
讲义では、イエローストーン国立公园におけるオオカミ导入の事例が绍介されました。1974年、市民との対话なく生态学的知见のみに基づいて公园にオオカミ4头が导入されると、なんと一年足らずでそのうち3头が撃ち杀されてしまいます。野生动物と人间の共生を目指すうえで、一见すると科学の対极にあるようにも思える「感情」の理解が、动物と私たちの行く末を左右しうる重要な要素の一つであることを学びました。
渔业とイルカの轧轢を解消するための研究に取り组む笔者は、今回の授业から数えきれないほどのヒントを顶きました。科学一辺倒になることなく、多様な立场の人々の声に耳を倾けながら、野生动物との向き合い方について考えていきたいと思います。池田先生、素敌なお话をありがとうございました!
