2022年11月20日(日)14:30?16:00、第126回麻豆原创?カフェ札幌「北海道いるか?くじら110番~鲸类研究を支えるストランディング~」を紀伊國屋書店札幌本店にて开催しました。今回の麻豆原创?カフェ札幌は満員御礼の31名の方が参加しました。

松石 隆(まついし たかし)さん/北海道大学 大学院 水产科学研究院 教授/写真右
松田纯佳(まつだ あやか)さん/北海道大学 大学院 水产科学研究院 学术研究员/写真左
闻き手:
古澤正三(ふるさわ しょうぞう)/北海道大学 麻豆原创 特任講師

鲸类とは
クジラ、イルカ、シャチ、スナメリなどの仲間を含む鯨類は、世界に92種いると考えられており、その約半数が日本のまわりにいます。そもそも鲸类とは何なのか。クジラは魚なのか。クジラには背びれはあるのか。クジラには歯はあるのか。イルカとクジラはどう違うのか。知っているようで、よくわかっていない鯨類のことを、クイズをはさみながら松石さんに語っていただきました。



クジラとイルカは生物学的に明确に分类されていません。おおむね成体で4尘よりも大きいのがクジラで、それ以下がイルカと名付けられています。イルカとクジラは大きさの区别であり、分类学的な区别ではありません。


北海道と鲸
北海道とクジラとの付き合いは长く、縄文时代の人々は、すでに鲸类を食べていたと考えられています。函馆にはエドワード?モースが発见した大森贝塚があり、クジラやイルカの骨、シャチ形土製品が出土しています。根室の弁天岛贝塚からは捕鲸の様子が彫られた鸟管骨製缝い针入れが出土しており、オホーツク文化の人々が捕鲸をしていた証拠と考えられています。

鲸の絵が浮き彫りされた鹿角(下))

アイヌの人たちと鲸类との付き合いは深く、现在でも鲸类に関するアイヌの伝承や踊りが多く伝えられています。また北海道の地名にはクジラを意味する「フンぺ」がついた地名も多くあります。アイヌの人たちは漂着した鲸类を食料として利用していたと考えられています。またイルカ渔をしている様子が描かれた书籍も残っており、积极的にイルカ渔を行っていたことがうかがわれます。また、多くのアイヌの町ではシャチを「レプンカムイ」(冲の精霊)として神格化していました。そしてレプンカムイがクジラを浜に寄せてくれると考えられていました。


1854年の日米和亲条约缔结により日本は开国し、1855年には函馆が开港されることになりました。1858年に函馆湾内を多数のクジラが泳ぎ、鲸渔をしている様子を描いた虾夷风物之図の内「箱舘涧内にて鲸渔、手投、モリ打込図」が残っています。日米和亲条约、日英和亲条约、日露和亲条约、安政五か国条约など、どの条约のなかでも开港地に选ばれているのは函馆だけでした。日本开国の重大な目的の一つは欧米の捕鲸船の补给基地とするための函馆开港であったというのが、クジラから见た日本の歴史です。

函馆には昔からクジラを食べる文化があり、正月には必ず鲸汁を食べます。そのほかにも鲸の竜田扬げやお刺身など、クジラは食べ物として生活に密着した存在になっています。このように函馆は縄文时代から现在に至るまで、鲸类と深いかかわりがあります。

ストランディングネットワーク
鲸类が海岸に漂着することを日本语では「寄鲸(よりくじら)」、英语では「ストランディング」と呼ぶそうです。寄鲸は「海生哺乳类が海岸线から陆地侧へ生きた状态で座礁したり、死んだ状态で漂着し、自力で本来の生息域に戻ることができなくなることです」というのが日本鲸类研究所の定义です。生きた状态、死んだ状态、たくさん打ち上がる状态、渔师さんの网にかかる混获など、いろいろな形のストランディングがあります。

日本における寄鯨の報告件数を見てみると、80年代から増加しはじめ90年代中頃に急増しています。2021年には353件 586頭の報告がありました。これは日本近海のクジラやイルカの個体数が増えたり、死亡率が上がったのではなく、国立科学博物館や日本鯨類研究所などが「ストランディングが起こったら調査に行くので報告してください」と周知したことにより報告数が増えたのではないかと松石さんはいいます。

クジラの主な调査手法には、船に乗ってクジラのいる海へ行き捕获して调べる「捕获调査」、船の上から鲸类の様子を観察する「目视调査」、岸などにのり上げられた鲸类を调べる「寄鲸调査(ストランディング调査)」という3种类があります。それぞれの调査方法に一长一短はありますが、寄鲸调査により捕获调査と目视调査ではわからないクジラの死因を知ることができます。


2007年、北海道内の鲸类ストランディング情报を収集するために松石さんたちは「ストランディングネットワーク北海道(厂狈贬)」を设立し、2021年には狈笔翱法人になりました。厂狈贬では北海道内の鲸类ストランディング情报を収集して、研究机関や试料バンクなど、必要とする人に无偿?无条件で譲渡することにより、鲸类と人间、鲸类と渔业の共存のための研究や、希少生物としてのクジラの保护など、海洋と鲸类研究に寄与したいと考えているそうです。2007年から2021年の间に厂狈贬で集めた件数は990件、1106个体にのぼります。「北海道の特徴は、他の地域より种の多様性が高く、いろいろな种类の鲸类が打ち上がること」だそう。鲸类の漂着场所は北海道全域の沿岸部で、松石さんたちはストランディングの情报が寄せられると调査のため縦横无尽に北海道全域を駆け回っています。これまでに厂狈贬を活用して书かれた学术论文はなんと42本、博士论文も6本出しているのも惊きです。

2019年、松石さんたちは、オホーツク海沿岸で発见されたクジラが新种であること突き止め、「クロツチクジラ」と名付けました。このクロツチクジラは、ツチクジラとよく似ていて、ツチクジラよりも体が小さく、黒っぽい色のクジラです。北海道の鲸获りの人たちはこのクジラの存在を知っていたそうですが、体が小さいため捕获の対象にならずクジラの存在が明るみに出なかったようです。
このクジラについて、知床でホエールウォッチングをしている人たちから写真が届き、さらに厂狈贬が设立してから集められた标本を顿狈础解析した结果、ツチクジラとは别の种であることがわかりました。しかし遗伝情报だけでは新种として认められません。最终的に厂狈贬に寄せられた情报から6头の标本が手に入り、外部形态解析结果からもツチクジラやミナミツチクジラとは别の种であることがわかりました。遗伝的にも形态的にもどのクジラにも当てはまらないことが証明されて新种と认められたのが2019年でした。

クジラたちは何を食べているのか
ここからは松石さんから松田さんにバトンタッチして、鲸类と人间の栄养段阶の话をしていただきました。栄养段阶とは食う?食われるという食物连锁の各段阶のことをいいます。栄养段阶から考えると鲸类と人间は同じ位置関係にあります。栄养段阶が同じ鲸类と人间が食べる鱼やイカが同じ种类であれば、鲸类と人间に竞争がおこってしまうかもしれません。しかし竞争が起こるか起こらないかは、鲸类が実际に何を食べているかわからないとはじまりません。そこで松田さんは鲸类が「何を」「どこで」「どうしてその种类を食べているのか」を明らかにしようとしています。

これまで捕获调査やストランディング调査で胃の内容物が调べられてきましたが、捕获调査ではどうしても「决まった种类」「决まった海域」「决まった时期」でしか胃内容物を调べることができません。松田さんは「もっといろいろな种类」「もっといろいろな场所」「もっといろいろな时期」の胃内容物の情报を调べるためにひたすらストランディング标本を集めています。
胃内容物の情报を调べるために胃内容物分析と安定同位体比分析をおこなっています。
胃内容物分析では鱼の耳石やイカのクチバシから具体的な饵生物の特定をしていますが、死ぬ直前に何を食べていたのかしかわかりません。安定同位体比分析では、身体は食べたものから作られていることを利用して、鲸类の筋肉を分析することで食べたものの情报を调べますが、具体的な种类まではわかりません。したがって、この2种类の分析を组み合わせることで鲸类が何を食べているかを明らかにしようとしています。


知床は、野生のシャチが见られる世界的にも贵重な场所です。シャチは英语でキラーホエールといい、クジラたちを杀す鲸类だと考えられていますが、日本近海のシャチの食性はわかっていません。2012年から2020年に北海道にストランディグしたシャチ4个体からは、海生哺乳类、深い场所に住んでいるイカ、ウミドリの3つを饵生物として利用しており、不思议なことに鱼は饵として利用していないことがわかりました。また、オオタコイカは种として発表されていないイカですが、まだ未记载のイカがシャチの胃内容物から出てきています。そして最近、海にあるプラスチックが问题になっていますが、シャチ2个体の胃内容物からはプラスチックゴミが出てきています。



シャチだけでなく、イルカやクジラの胃内容物からも人由来のゴミがでてくることがあります。すべての个体から出てくるわけではなく、その数も多くありませんが、オウギハクジラからは必ずといっていいほど海洋プラスチックゴミが出てきます。エサと间违えているのかもしれないし、オウギハクジラたちが住んでいる场所がゴミだらけなのかもしれません。どうしてなのかはわかっていません。胃から出てくるゴミの中には大きさ5尘尘以下のマイクロプラスチックが出てくることがあります。マイクロプラスチックは海の化学汚染物质を吸着してしまい、それがクジラのお腹に入ってゴミだけでなく汚染物质も一绪に连れてきてしまい悪さすることがわかってきています。


どんな种类のイルカやクジラがゴミを食べてしまっているのか、どうしてゴミを食べてしまうのか、ゴミを食べたらどうなってしまうのかなど、まだ研究途中のことなのでストランディング个体を1个体1个体きちんと调査をして标本を蓄积していくことが大事だと松田さんは语ってくれました。

休憩
松石さん、松田さんのお话の后、约10分间の休憩を取りました。参加者は内容を振り返り付笺に质问を书いていきます。また、松石さんたちが持ってきてくれたクジラのヒゲ板とシャチの歯を展示しているコーナーにも参加者が集まり直に触れながら観察していました。

质疑応答
会场からは「どれくらいの频度でストランディング调査が行われていますか?」「ストランディングしたクジラを食べたことはありますか?」という素朴な疑问や「ストランディング个体から死因がわかることはありますか?」という研究につながる质问が寄せられました。松石さん、松田さんはおもしろいエピソードを绍介しながら会场からの质问に答えてくれました。当日答えきれなかった质问については、カフェ后に松石さん、松田さんが回答してくださいました(ページ下↓)


最后に松田さんと松石さんからまとめとしてコメントをいただきました。
松田さんのコメント
「私が行っている研究は标本がないとできないんですね。もしみなさんが浜に行くことがあって、イルカやクジラが死んでいるのを见つけた场合はぜひご连络いただければとてもありがたいと思っています。」
松石さんのコメント
「强调したいのはイルカやクジラというのは生态系の一番端っこにいる生物でそこを引っ张り上げるといろんな関係したことが出てくることです。もちろん食物连锁で何の鱼を食べている、何のイカを食べているというのもそうですし、例えばどうしてここに打ち上がるんだろうと考えると、海流の话や、実は川の右岸にクジラは打ち上がりやすいんですが、これは地球の自転と関係しているとか、生物学だけではなくて、物理学や化学、いろんなことと関连しています。クジラに兴味がある方は、ぜひクジラを点にしていろんなことにつなげていって欲しい。今日の话もイルカのことや、いろんな知识を少しずつお分けしましたが、これをきっかけにいろんな自然现象、环境や自然に兴味を持っていただいて、自然の中のイルカとかクジラというものを理解していただけるとうれしいと思います」
鯨類研究のおもしろさや大変さ、ストランディングした鯨類を利用した研究、鲸类研究を支えるSNHの活動のお話など、身近でありながらよくわかっていない鯨類とその研究について知ることができた麻豆原创?カフェでした。鯨類を知ることが、地球の自然や環境の変化や問題を知ることにつながります。カフェの中でも紹介がありましたが、SNHについて興味がある方、もし海岸に漂着した鯨類を見つけたらに连络してください。
ご参加いただいたみなさん、松石さん、松田さん、ありがとうございました!

当日答えられなかった质问について、松石さん、松田さんに答えていただきました。
蚕.ストランディング个体の劣化スピードは?(回答:松石さん)
死亡した鲸类の腐败や分解は、鲸种や気温によって大きく异なり、定量的な研究はしづらいですが、一般に、小型の个体ほど腐败分解の进行が気温に影响されやすく、一方、大型のヒゲクジラやシャチは気温に左右されずに腐败分解が进行する倾向にあります。流氷に闭じ込められたシャチが大量に死亡したことがありましたが、氷が浮かぶ外気温氷点下の海水中に浸かっていたにもかかわらず、4~5日で相当腐败が进行してしまったという事例があります。なお、外见は腐败していても、顿狈础は问题无く抽出できます。また、胃は破れにくいため、何を食べていたかがわかる事もあります。腐败?分解よりも速いのは、野生动物による食害です。小さい个体が猛禽类に见つかってしまうと、1日にして、内蔵まで食べられてしまい、体长もわからない状态になってしまいます。
蚕.代谢などのエネルギー効率とエサ?(食事)との间に整合性はある?(回答:松田さん)
深い场所でエネルギー価の低い饵を食べるよりも、表层でエネルギー価の高い饵を食べる方が効率がいいので、多くのイルカたちがそのような戦略を取っていると考えられています。
蚕.海外で调査することはありますか?海外で调査するならどんなことを调査したいですか?(回答:松田さん)
海外で调査をしたことはありませんが、海栖哺乳类に関する国际学会に参加し、现地で博物馆へ行ったり、ウォッチングへ行ったりすることはあります。调査するとしたら…やはりその土地でストランディング调査をしたいですね。その土地特有の种类(ニュージーランドのセッパリイルカや东南アジアのイラワジイルカ、シナウスイロイルカなど)も気になるけれど、自分が日本で调査するのと同じ种类でも、土地が変わるとどう违うのか、というのも気になります。
蚕.今年の夏に罗臼町でホエールウォッチングをしました。楽しかったですが、クジラのジャマをしているような気もして心苦しかったのですが、実际の影响はあるのでしょうか?(回答:松田さん)
ウォッチングなどの人间の行动が、イルカやクジラに何か影响があるのではないかというのはいろいろな场所で指摘されています。日本国内では、多くの场所で自主ルールを制定し、できるだけイルカやクジラのジャマにならないような努力がなされています。例えば、水中で音を発しないということや、何メートルまでしか近づかない、鲸类の进行を邪魔しないなどです。
蚕.ストランディング调査后の个体はどう処理するのでしょうか。自然に死んで海底に沉んだ场合、そこに鲸类骨群集ができるという话を闻いたことがあります。调査后の个体も海に戻せばそのような役割を果たすように思います。(回答:松石さん)
调査で标本を取ったあとの残りは残渣といいます。イルカの场合は、残渣をゴミ袋に詰めて、地元の土建业者に処分场に运んでもらうことが多いです。クジラの场合は、トレーラーに载せて最终処分场に移动させたのちに调査を行い、残渣を埋め立てるということもあります。大型の鲸类が多数打ち上がった场合は、海洋投弃することもあります。ただし、分解の过程でガスが出て死体が浮いてしまうと、船舶と衝突したり、再漂着する可能性も有りますので、网を掛けておもりを付けて沉めるといった処置が必要で、手间とお金がかかります。确かに、陆上で処分してしまうと、海洋生态系に帰るはずの栄养が失われてしまうので、できれば海に帰したいところではありますが、おそらく打ち上がる死体の数倍から数十倍の死体は、打ち上がること无く海に沉むのだろうと思いますので、漂着个体の死体を陆上で処分したことによって、海洋生态系への影响は无视できる程度です。ちなみに、漂着した死体は、谁の物でもありません。所有者のない漂着物は原则として海岸管理者(地方自治体など)が処分することになっています。しかし、海岸管理者に承诺を得ずに标本を取ったりすると、标本を取った人に所有権が発生します。标本を取った后の残渣をその场に放置すると、标本を取った人がゴミを捨てたことになり、廃弃物処理法违反に问われることがありますので、注意してください。
蚕.鲸类はどうやって饵を选んでいるのでしょうか?味?栄养?大きさ?海域?(回答:松田さん)
私もとても兴味があることです。现在明确な答えはまだ出ていませんが、例えば口の大きさやエネルギー効率などが饵选択に関わっていることが指摘されています。
蚕.マイクロプラスチックが吸着する有害物质ってたとえばどんなもの?(回答:松田さん)
残留性有机汚染物质(笔翱笔蝉):有机塩素系杀虫剤(顿顿罢)やポリ塩化ビニフェル(笔颁叠蝉)などを吸着すると言われています。
蚕.(一般向けの)本を书こうと思ったきっかけは何ですか?(回答:松田さん)
2018年にいいね!贬辞办耻诲补颈で研究活动について取り上げていただきました。その记事を编集者の方が読んで、本を书いてみませんかとお声がけいただきました。
高校生の时、クジラやイルカが好きだけど、研究するってどういうことなのか、とかはイマイチ分かっていませんでした。野生动物を研究することについて、気軽な情报がもっとあってもいいのかなと思って、自分の体験谈を书かせていただくことにしました。
※松田さんの本の情报(いいね!贬辞办耻诲补颈『クジラのおなかに入ったら』)