生活に欠かすことができない飲み水。30年ほど前から、日本を含めた世界各地で、硝酸イオンによる地下水の汚染が問題になっています。清浄な水を長期にわたって確保するために、高性能な触媒の开発に取り組んでいる神谷裕一さん(地球環境科学研究院 准教授)。北海道大学留学生センターが開講する「一般日本語コース」の上級総合科目「北海道大学を、もっと知ろう」(2014年度後期)の授業の一環で、留学生の華詩雲(カ シウン)さんが、日本語で、研究のこと、教育のこと、アイデアを生み出す秘訣についてお話を聞きました。
硝酸イオンによる地下水の汚染は、どのくらい深刻な问题なのですか
日本では、环境省が毎年5,000か所を対象に调査しており、平均すると5%、およそ250か所で汚染が确认されています。全国的にみると、水道水に占める地下水の割合は1/4程度で、残りの3/4は川の水を利用していますから、汚染はそれほど深刻ではありません。ただし、水道水をすべて地下水に依存している熊本市では、近年硝酸イオン浓度が上昇していて、このままいくと10年后には基準値を超えてしまいます。対策を讲じなければいけません。
世界に目を向ければ、ヨーロッパやアメリカの地下水は、およそ50%が汚れているという报告があります。また、中国やインドネシアなど东南アジアの国々では、かなり汚染されていると考えられています。ですが调査は进んでいません。途上国の水道が整备されていないような地域では、地下水をくみ上げて利用しているため、もし地下水が汚れてしまうと饮める水がなくなってしまいます。清浄な水の确保は、深刻な问题ですね。
地下水はどのようにして汚染されるのですか
地下水が汚染される原因の一つが、农业で使われる窒素肥料です。作物の収穫量を上げるために肥料は欠かせないのですが、撒き过ぎてしまうことが问题です。作物が吸収するのは、撒いた肥料の1%ほど。残りの99%は雨水となって流れて、土壌にたまります。地下水は、川や池と违って分解する微生物がいないため、一度汚れてしまうと元に戻すことはできないのです。化学肥料や机械を使った近代的な农业が盛んな地域ほど、土壌に硝酸イオンが蓄积し、地下水が汚染されています。食粮を确保しようとすれば、水が汚されてしまう。ジレンマですね。
汚染された水をどんな方法で浄化するのですか
浄化する方法には、生物学的方法と化学的方法がありますが、私の研究室では、化学的方法に着目しています。地下水や廃水中に含まれる硝酸イオン(狈翱??)を化学的に分解して、无害な窒素ガス(狈?)へと変换します。この化学反応を起こすためには、反応の速度を速める物质、触媒が欠かせません。4人家族が1日に使う10リットル程度の水を、効率的に浄化する固体触媒を开発するために、日々実験を繰り返しています。将来、この技术を使って、地下水が汚染された国や地域で、硝酸イオンを浄化して无害にし、清浄な饮料水を长期にわたって确保したいです。
実験で使用する触媒がはいった小瓶
分析に使うガラス器具
日々の実験データはどのように记録しているのですか
実験の一次データは、ノートに记録しています。パソコンには保存しません。パソコンのデータは消えてしまうことがありますが、手书きだと消えませんから。学生も私も、実験したデータを欠かさず记入します。これらは研究室の大切な财产です。実験ノートを见れば、その学生の実力がわかるんですよ。
実験ノートが并んだ本棚。研究室の大切な财产です。
学生の実験ノート
実験科学者の基本は、自然を理解する姿势
実験をすれば、触媒の性能が上がるようなポジティブなデータが得られるときも、逆に性能が下がるようなネガティブなデータが得られることもあります。それが自然の姿です。自然を理解することが、実験科学者の基本です。学生は、人の役に立ちたいという思いが强いので、ネガティブなデータだとがっかりします。私自身が学生だったとき、「ネガティブに影响することがわかった。それが、研究として大事だ」と教わりました。社会に出るとポジティブな结果ばかり求められますが、せめて大学にいる间くらいは、もう少し広い目で现象を捉えて、自然现象というものを理解し、学んでほしいですね。
触媒反応実験室で実験中の学生たち
神谷流アイデアの生み出し方
実験でネガティブデータが出てもがっかりしませんが、アイデアがでてこなくなったときには落ち込みます。なんとかアイデアを创出しようと、いろいろなタイプの论文を読みます。日本语では「乱読(らんどく)」と言います。论文を読んだり、学会に参加したりして知识を増やします。すると、あるとき突然アイデアが浮かんできます。研究室の椅子に座って、うーんと唸っているときに出てくることもありますよ。アイデアというのは、真っ白なところから出るものではなく全部コンビネーション。新しいアイデアを生み出す秘诀は、コンビネーションのネタとなる知识を蓄えておくことですね。
取材した華詩雲(カ シウン)さん(右端)
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この记事は、北海道大学留学生センターが开讲する「一般日本语コース」の上级総合科目「北海道大学を、もっと知ろう」(2014年度后期)の成果の一部です。
【取材:華詩雲(カ シウン)さん(日本語?日本文化研修生)+麻豆原创】






