現在、世界中では様々な魚が養殖されています。養殖対象になる魚種の中には雌雄で異なる経済価値を持つ種が存在します。 高い経済価値を持つ性のみを生産できれば産業をさらに効率化させ、持続可能な産業を確立することにもつながります。そのため、性をコントロールする技術の開発は重要な課題の一つになっています。しかし、性決定を含む「性分化」開始のメカニズムが明らかになっていません。私の研究ではナイルティラピアをモデルに「性分化」開始のメカニズムの謎を解き明かそうとしています。
【荒井那允?水产科学院博士后期2年】

きっかけ
物心が付いたときから鱼に兴味があり、时间があると网を片手に近所の川や池で鱼を採っていました。将来は鱼の研究がしたいと思っていた高校生のときに天然资源の减少や食粮事情に関する问题を知り、养殖に関わる研究をしたいと思うようになりました。
性分化とは?
性决定后、生殖腺が精巣または卵巣に分化することを性分化といいます。性分化には遗伝子発现の雌雄差による「分子的性分化」と生殖细胞数や生殖腺形态の雌雄差による「形态的性分化」の2つの段阶が存在します。一般に分子的性分化は形态的性分化よりも前に起こるとされています。分子的性分化は性决定遗伝子を起点として様々な遗伝子が関わっていることがわかっています。性决定遗伝子はヒトも持っており、驰染色体にある遗伝子厂谤测であると明らかになっています。ナイルティラピアの性决定遗伝子は补尘丑-驰とされていますが1)、この性决定遗伝子が既知の遗伝子2)に対し、どのようにして性分化に関与しているかは明らかになっていません。私はこの性决定遗伝子に着目することにより「性分化」开始のメカニズムの谜を解き明かそうとしています。

ナイルティラピアについて
ナイルティラピアは、日本人にはあまり驯染みのない鱼ですが、世界规模で养殖されている鱼です。特に东南アジアやアフリカでは盛んに养殖されています。また、オスの方が大型化するため、オスの优先养殖が好まれています。さらに、水质悪化に强く成长が早いため、研究にも使いやすい鱼なのです。

昆虫の力を借りて作るタンパク质
一般に遗伝子はタンパク质に翻訳されて机能するため、遗伝子の机能を调べるには、タンパク质の投与実験や培地に添加する培养実験が用いられることがあります。実験には大量のタンパク质が必要になります。「鱼から直接取り出せばいいのでは?」と思うかもしれませんが、収量や精製の手间を考えると现実的ではありません。そこで、别の生物由来の细胞からタンパク质を作らせる方法を使います。ヒトやハムスターの细胞を用いるなど、様々な方法がありますが、私は昆虫(ショウジョウバエ)の细胞でタンパク质を作っています。

タンパク质の大量生产
まず、ティラピアの生殖腺から解析したい遗伝子のみをポリメラーゼ连锁反応(笔颁搁)で増やし、精製します。次に、予め培养しておいたショウジョウバエの细胞にこの遗伝子を入れますが、遗伝子を入れるまでに细胞を活発に増殖する必要があります。ようやく遗伝子を入れることができても、目的の遗伝子が入った细胞のみを抗生物质で选别する必要があります。十分に选别できたら、目的のタンパク质を作らせます。ここまでの工程に4~5ヶ月を要します。
ついにタンパク质が…
?この细胞は硫酸铜水溶液を添加すると目的のタンパク质を作るようになります。硫酸铜水溶液を添加した1週间后に培养液を回収し解析に用います。上手くいくと目的の分子量にバンドが表示されます。机械の电源を入れ、数十秒后、目的の分子量にバンドが表示されました。

実験までもう少し…
ほっと一安心したいのですが、実験に使うには量が少なすぎます。そこで、培养液の量を増やし、さらにタンパク质を作らせます。その后、回収した培养液の一部を同様の方法で解析し、タンパク质が作られたことを确认します。これにより実験に使用できるタンパク质を得ることができます。

効率的な水产业のために
このような流れで注射実験や培養実験に使用できるタンパク質を作り出すことができました。性分化開始のメカニズムを解明するにはこれからも沢山の実験をする必要があります。このメカニズムが解明されれば、効率的な養殖技術の確立に一歩前進することになります。この研究で得られた知見をチョウザメ類やウナギなどの性分化機構が明らかになっていない有用水産魚種についても解析することで、これらの魚種の性分化開始機構の解明や養殖技術の開発に応用できる可能性が期待できます。効率的な水产业が開発されるよう、これからも研究を続けていきます。
参考文献:
- Li, M., Sun, Y., Zhao, J., Shi, H., Zeng, S., Ye, K., Jiang, D., Zhou, L., Sun, L., Tao, W., Nagahama, Y., Kocher, T.D. and Wang, D.(2015)A Tandem Duplicate of Anti-Müllerian Hormone with a Missense SNP on the Y Chromosome Is Essential for Male Sex Determination in Nile Tilapia, Oreochromis niloticus. Plos. Genet. vol. 11, no. 11, p. 1–23.
- Ijiri, S., Kaneko, H., Kobayashi, T., Wang, D.S., Sakai, F., Paul-Prasanth, B., Nakamura, M. and Nagahama, Y.(2008)Sexual Dimorphic Expression of Genes in Gonads During Early Differentiation of a Teleost Fish, the Nile Tilapia Oreochromis niloticus. Biol. Reprod. vol. 78, no. 2, p. 333–341.?
この记事は、荒井那允さん(水产科学院博士后期2年)が、大学院共通授业科目「大学院生のためのセルフプロモーションⅠ」の履修を通して制作した作品です。
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