北海道のちょうど真ん中にある十勝岳では、山の斜面がパタパタ。それが気になる私は、朝からパソコンをカタカタ。 山に登っても気づかないほどの非常に小さな変化ではありますが、確かに斜面が動いています。きっと私たちの见えないところ、つまり山の内部で「なにか」が起きているはずです。北の大地の火山で何が起きているのか、海辺でしらすを食べて育った私が明らかにしてみせます!
【近内雪乃?理学院修士1年】
私の日常
AM 5:05 起床。
AM 5:30 バナナとヨーグルトを食べてバイト先のカフェに向かう。
**バイト**
础惭10:15 お腹がすいた。帰り际の私を店先のドーナツが诱惑してくる。
础惭10:30 学生部屋の键を开ける。デスクトップ笔颁の电源ボタンを押す。窓を开けてカラスにおはよう。
リュックを下ろしてクロックスに履き替える。ティファールでお汤を沸かす。
础惭10:35 今日のお供はコーヒーではなく红茶の気分。今日は十胜岳パタパタしてるのかな。
大规模计算机センターにログイン。今日もがんばるぞ。

どうしてパタパタしているのか気になる気になる!
北海道のちょうど真ん中に位置する十勝岳という火山で、山の斜面の傾きがパタパタ変化する「傾斜変動」という现象が起きています。先月は10回パタパタ、今月は1回だけパタパタ。10分で小さくパタパタしたかと思えば、次は1時間くらいかけて大きくパタパタ。さっきはゆっくり斜面が下がって終わりだったのに、今度はゆっくり斜面が下がってから急激に上がったり…。この斜面の傾きの変化は100万分の1°程度と非常に小さいですが、確かに山の斜面が動いています。
私はこのパタパタがどうして発生しているのか気になるのです。「傾斜変動」は地面の傾きの変化なので、地面が動けば火山活動だけでなく地震や地滑りといった他の自然现象でも確認されます。その場合は比較的簡単に傾斜変動の原因を特定できます。十胜岳の傾斜変動も、もし噴火に合わせて斜面がパタパタしているなどの事実があれば原因を想像できそうですが、現時点ではこの変動に対応した火山表面での他の现象(噴煙や火口の様子の変化など)は確認されていないのです。
しかし変動が観測されているということは、きっと私たちの见えないところ、つまり山の内部で「なにか」が起きているはずです。

日本は世界有数の火山大国。研究を通して火山防灾にも贡献したい。
その「なにか」がどのような现象なのかは未だわかりませんが、マグマの熱で温められて高温になった地下水である「熱水」の動き(熱水が地下の岩石の隙間を流れる、液体から気体に相変化するなど)が関係している可能性が高いと予想しています。その理由は、先行研究で十勝岳は熱水の動きが活発であると報告されていることと、熱水の動きが活発な他の火山でも似たようなパタパタが観測されていることです。
パタパタに深く関係していると考えられる「热水」ですが、火山防灾においても近年注目されています。2014年に长野県の御岳山で喷火が発生しました。この喷火によって多くの方が亡くなり、日本における戦后最大の火山灾害とも言われます。この御岳山喷火は、热水が関与して発生する水蒸気喷火であったと考えられています。水蒸気喷火は一般に喷火の规模が小さいですが、规模の小ささ故に喷火の予兆をつかむことが难しいです。そこで水蒸気喷火を引き起こす热水の动きを理解し、普段から小さな异変を捉えることが重要となります。
予想通りパタパタが热水の动きに対応しているとすれば、パタパタの研究成果は十胜岳や他の火山における热水の动きを知るための手掛かりになるでしょう。直接喷火の予兆を捉えることには繋がらなくても、火山活动を评価するための指针の一つになるかもしれません。いや、指针にできるような研究成果を出せるように顽张りたいです。だからこのパタパタがどうして発生しているのかを明らかにできれば、私のようにパタパタが気になって気になって仕方がない人が嬉しいだけでなく、火山防灾にも贡献できるのではないかと期待しています。

山の中の「どこか」で「なにか」が膨らんだり缩んだり…?
ここからは、山の斜面がパタパタ変化する倾斜変动をどのように调べていくのかお话しします。
火山は地下深くにあったマグマの地表への出口です。喷火しているときにマグマが地下から上昇してくるのはもちろん、喷火していないときも膨大な热エネルギーによって热水や火山ガスが上昇してきます。その一部が喷気や温泉となって地表に放出されています。この流れが地下のどこかで滞ってしまうと、热水や火山ガスは上昇できずに溜まり始め、周辺の地盘を押し広げようとします。このような场所を「圧力変动源」と呼びます。この圧力変动源という考え方を用いると、热水や火山ガスが地盘を押し広げようとしている时は圧力変动源の「膨张」、押し広げる力が弱くなっている时は圧力変动源の「収缩」として捉えることができます。
例として、下の図のように山の中に球状の圧力変动源がある场合を考えます。圧力変动源が膨らむと斜面の倾斜は最初の状态に比べて急な角度になり、収缩すれば斜面の倾きは缓やかになります。これで倾斜変动が再现できます。


今は一番シンプルな球状の圧力変动源を仮定して説明しました。圧力変动源の形が楕円になったり、四角になったり…形を変えても仕组みは同じです。よく用いられる形の圧力変动源においては、その圧力変动源によって引き起こされる地面の変形を记述する数式が知られています。この数式を用いて「どんな圧力変动源を仮定したときの変形が、観测されている倾斜変动を最もよく再现できるか」を调べると、倾斜変动を引き起こしている圧力変动源の位置や形を推定できます。
今、私が取り组んでいること
私は、ここまでお話しした「圧力変動源と観測される傾斜変動の関係」を利用してコンピューターで計算を行い、十胜岳の傾斜変動を説明できる圧力変動源を見つけようとしています。ただ実際の火山で観測される傾斜変動は、地形の凸凹や地下の不均質構造(場所による地盤のかたさや密度の違い)の影響を受けているため一筋縄ではいきません。そこで私が今取り組んでいるのが「有限要素法」という地形や地下構造の影響を考慮した計算ができる手法です。まだまだ勉強中ですが、コンピューターの画面上で変位を再現したい領域とその材質を決めて、圧力変動源を作って、内部の圧力を変化させる量を設定して…ちょっとパズルみたいです。

まとめ
冒头でどうしてパタパタが発生しているのか気になるとお话ししましたが、この研究ではパタパタの圧力変动源がどういう形で、どんな大きさで、どの辺に位置していて、どれくらい内部の圧力が変化したか(どれくらい変动源が动いたか)、ということしか推定できません。本当に倾斜変动が圧力変动源内部の热水の动きを示しているのか、どこから热水がやってきてどこへ行ったのか、などは先行研究と比较したり、他の観测研究手法を考えたりしなければなりません。修士论文でどこまで议论できるか正直わかりませんが…顽张ります!
日本は火山がたくさんあって度々火山災害に見舞われますが、火山は美しい景観や温泉、地熱エネルギーなど恵みも与えてくれます。私は温泉に入ると日本に生まれてよかった、火山ありがとうと思います。火山现象の理解が進むことで、より安心して火山と共生できる社会になればいいなと思います。

この记事は、近内雪乃さん(理学院修士1年)が、大学院共通授业科目「大学院生のためのセルフプロモーションⅠ」の履修を通して制作した作品です。
近内さんの所属研究室はこちら
理学研究院附属地震火山研究観测センタ―(青山裕教授)