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#143 数理モデルを利用して感染症を制御せよ!(1)?流行を予测し、社会の政策につなげる?

感染症予防、どれくらいの人が予防をすれば、流行を食い止めることができるか。なんと数式で导くことができます。「医学」という言叶を闻くと、多くの人は、近所の内科の先生や、手术をする外科医の先生のことを思い浮かべるでしょう。こうした皆さんがよく知っている、患者さんの治疗をするのが目的である医学の事を「临床医学」といいます。一方で、社会の中で病気の原因となっているものを探り、それを无くすことが目的である医学を「社会医学」といいます。

今回、私たちはそんな社会医学の一つである「疫学」の第一人者、西浦博さん(北海道大学大学院医学研究院 教授)にインタビューしました。西浦さんの研究内容、医学の道に進んだきっかけ、愛してやまない趣味など多くの話を伺ってきました。

【種田 陸人?総合理系1年/池田 夕太郎?医学部1年/倉本? 実佳?法学部1年】

现在どのような研究をされているのですか。

私は感染症の研究をしています。感染症の中でも疫学という、集団の中で感染症がどのように増えていくかということを研究しています。疫学は医学の中でも社会医学と言って、社会と医学の関わりを特に研究する学问分野です。集団のデータをかき集めて、分析することによって感染や伝播といった事象をつまびらかにして、予防につなげていきます。疫学はデータを集积して分析することが社会の政策に直结するという分野で、とても面白いですね。もともと统计やデータ分析は嫌いではなかったので、すごくやりがいのある学问だと思っています。

数理モデルとはどのような式なのでしょうか。

代表的なものをひとつ绍介して説明します。临床医になろうとしていた僕を心変わりさせた式です。例えば、ある1人の感染源の人が二次感染者を4人生み出すはずだったという状况を考えます。その时にもしも人口全体の3/4の人が予防接种をしているとすると、4人のうち感染者は1人に减りますね。この人から出ていく二次感染者も本来は4人だったとすると、また次の世代の二次感染者も1人です。

以下は、これを繰り返していくと、こんな感じになりますよという模式図です。1人ずつしか感染者を生み出せないので、大流行は防がれたことになります。

(図1:感染症の模式図)

これを式にすると、辫の比率の人が防がれているときは、防がれていない人が(1-辫)となり、(1-辫)の人の间だけで搁?人の二次感染がおこるため、実际の2次感染者数は(1-辫)×搁?となります。この数値が1を下回ると大规模流行が防がれるということになります。

このように、この式が感染の流行を决める閾値としての役割もしています。例えば、インフルエンザの基本再生产数が2だとすると、完璧な予防接种で免疫を得る人が50%以上いると大规模流行は防げるということになります。

すごく简単な论理だけで记述できるけれども、今の世の中で予防接种率の目标値を决めている数式です。一つの式だけなのに、集団の中の未来を左右するような理论があるのはすごいなと、相当の衝撃がありましたね。

数理モデルの精度はどのくらいなのでしょうか。

まず大切な原则として理解しておくべきことは、数理モデルで现実に起こることを完全に予测できることはないということです(あくまで模倣にすぎません)。そのうえで、数理モデルの精度というのは「どれだけ正确に感染症の流行をとらえることができるか」という话になります。

いま、私たちが取り组んでいるのは人の移动のデータを感染症の流行の予测に使えないかということです。最近わかってきたことですが、感染症の伝播のモデルは国ごとにあって国と国とを结ぶネットワークを人が移动するデータで置き换えてやると、国际的な感染症の流行拡大はほぼ确実に捉えられます。

実は数理モデルだけで1つの国の伝播のメカニズムを捉えようとすると1週间先の未来ぐらいしか予测できないのですが、気象データや人の移动のデータ等の今まで谁も目を向けなかったようなデータを数理モデルの中のパラメーターとしてファクターするだけで予测精度は大幅に向上します。

1ヶ月先の未来や、この流行を通じて何百万人が死ぬのか等はまだ全然予测できないのですが、数週间先くらいまではだいたいわかるようになってきました。今はそういった予测値というものを医疗机関等で少しずつ役立てられるようになってきています。

日本でも、数理モデルによる予测は受け入れられてきていますか?

僕が入门したときと比べると、社会や政府から相当受け入れられるようになりました。昔はこんな学问は日本にはないというような扱いでした。日本も少しずつ変わってきているのですが、他の国と比べると话にならないくらいスピードが遅いです。私がトレーニングを受けてきたイギリスとオランダの2カ国が世界でも例外的なトップクラスです。そういったところで勉强してきたので、日本だと少し不利を感じてしまいます。日本でこの専门の研究室を主宰しているのは僕だけなのですが、运のいいことに、研究室の门をたたいてくれる若手の人たちが、顽张って质の良い研究を出せるようになってきています。

感染症以外の领域でも新しい数理モデルが活跃する场面は结构あって、人口学やがん予测といった面でも少しずつ新しい展开としての研究をアウトプットし始めています。日本は他の国と比べるとちょっと时间はかかっていますが、质の良い研究を根気强くやっていてちゃんと発信することを忘れずにやっていけば、少しずつ変わっていくと思います。

东京オリンピックが2020年にありますが、外国からいろんな人が入ってくる中で、感染症の流行を予测して対策などはされてますか?

皆さんは往々にして新しい感染症、つまり、新兴感染症といって、过去に国内では见られたことのないようなものを想像するかもしれません。でも、流行の危険性が予测されている新兴感染症は今の所はありません。

しかしひとつ问题なのが既知の感染症で「风疹」です。今东京で流行しています。これがオリンピックまで続くと大変なことになる可能性がありますね。感染症の问题は国が威信をかけて制御しないといけないので、予防接种法自体が改定されました。予防接种をプランニングしないといけないので、「どれくらい予防接种をしたら止まるのかを计算してくれ」とは言われています。海外からの感染症の移入を考える前に、まず国内のものをなくしておくという方针で、数理モデルの専门家侧からも协力をして分析をしてきました。

予防接种に何か课题はありますか。

日本国内だけでマーケットができてしまっていることが问题の一つですね。日本では安全性を担保するために、予防接种をすべて国产にしています。これには良い事もありますが、悪い事もあって、インフルエンザなど国内の多くの予防接种で使われているワクチンの値段が、海外のものと比べて高めに设定されてしまうんです。今は海外のワクチンの质も向上していて、例えば风疹のワクチンなんて国产だと1人分で1万円くらいしますが、输入できれば1人分で100円ぐらいで使えます。しかし、日本で输入が始まると、それを担当している国内の公司の竞争相手が増えることになります。日本の公司を守るためにも、海外から输入をしていないんですね。

また日本では、他の先进国に比べて、新しいワクチンの导入が大きく遅れていることも问题です。海外で审议や研究を経て、安全性や効果が认証されている予防接种でも、日本では海外より10年以上遅れて导入されています。この沟を「ワクチンギャップ」と言いますが、まだまだ埋まっていません。それでも最近、日本は色々なワクチンを导入してきています。水疱疮が导入されて、叠型肝炎、肺炎球菌も始まりました。こういう流れもあって、ワクチンの宣伝も始まっています。

数理モデルの今后の展望についてはどうお考えですか?

高齢社会が进むこれからの日本の感染症の分野では、「高齢者の感染にどう対応するか」ということが中心になっていくと思われます。私自身は、前から决めていたことなのですが、数理モデルを利用して次のステップに进もうと考えています。今取り组みはじめているもののひとつが、(感染症にとどまらず)より広い公众卫生の分野の问题と数理モデルを组み合わせてがんの予测をすることです。今はがんの予测に力を入れていて、肺がんとか胃がんとかの予测が、ほぼ确実にできそうなのでウキウキしています。

感染症の研究の目标は?

これまでは予测するための基盘の情报を公的な情报に頼りすぎていたんですけど、デジタル化时代を迎え、それを涂り変えようと思っています。具体的には、母子手帐に书いてある一人一人の予防接种のレコードをデジタル化するっていうプロジェクトを、公司との共同研究、それから市町村を巻き込んでやろうと考えています。それぞれの家庭で予防接种歴のある人ない人を色分けして図示化すると「このあたりの地域が风疹のリスクが高い」ということが、指を指すようにわかるんですよ!一人一人の基盘になる情报は、もう电子化できる时代に突入しています。だいたい10年くらいかけての壮大なプロジェクトを、野望を持って取り组み始めています。

西浦さんの素颜に迫る后编は、こちら。

この記事は、種田 陸人さん(総合理系1年)、池田 夕太郎さん(医学部1年)、倉本 実佳さん(法学部1年)が、全学教育科目「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果物です

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2019.09.23

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