中村达郎(2023年度选科础/社会人)

観点を定めることにより、「科学」も「麻豆原创コミュニケーション」も力强いものとなりえる
モジュール5「多様な立場の理解」の最後の講義として、韓国 東和大学 基礎教養大学 助教 イム?ソヨン先生に「謎に包まれない女性たち:女性から見る科学、科学が見る女性」という題でお話しをいただきました。今回の講義では麻豆原创スタッフの朴 炫貞先生による同時通訳が行われ、普段とは異なる方法?雰囲気の中で講義がスタートしました。

イム先生ご自身の话
「多様な立场の理解」というテーマから、イム先生の生い立ちについてお话がありました。子どものころから「科学者」になりたいと思い、韩国の科学高等学校からソウル大学へと进学したイム先生。しかし20代の顷は「科学は天才が问に対して迫っていくもの」「自分自身とのつながりや所属感が薄い」と思い、科学への好奇心が持てなかったとのことでした。
そんなイム先生が现在、厂罢厂1学者として考えている「问い」を元に话が进んでいきました。
女性の観点から见た科学は、どの観点も持たない科学とどのように违うか?
どの観点も持たない科学とは无意识に私たちが接している科学であり、客観的なもの。客観性を持とうとすると、「男性的」もしくは男性からの女性に対する固定観念が入った科学になるとイム先生は言います。では、女性の観点から见た科学にはどのような结果や可能性があるのかを见ていくとして、事例の绍介が行われました。

観点の无い科学は、性别による固定観念を反映し、强めることがある
18世纪、英国の解剖学者ジョン?バークリーの着书2の中で、男性の骨格はウマの骨格、女性の骨格はダチョウの骨格とともに描かれています。イム先生は「相补的な违いといっているが、「差别的な视点」があるのではないか。客観的にその差异を伝えることができているのか疑问が残る」と指摘しました。
ヒトの性染色体である驰染色体の研究事例も挙げられました。1965年パトリシア?ジェイコブスの论文3にて「余分のY染色体が非正常的攻撃行動を起こす」という内容が発表され、1970年代中盤まで、XYY染色体研究が多く行われました。1976-1977年の疫学調査にて間違いがあることが報告され、現在ではXYY染色体と暴力性に関する研究は行われていないとのことです。しかしながら、XYY染色体の研究内容は大衆文化にまで影響を与え、1976年には小説を元としたドラマ「The XYY man」4が世に出るなどのことがありました。
これらの事例から、「性に対する固定観念が科学者に影响を与える」、「社会と科学では(情报の)浸透スピードの违いがある」という2つの教训があるとイム先生はおっしゃいました。前者は、科学者は事実を客観的に公表したつもりだったと思われるが、社会的な固定観念が反映されることにより、男性は强く活跃するものだという観念の强调がなされたこと。后者は、科学者内では「间违った解釈だ」と认识されていたが、大众文化にコンテンツとして受け入れられてしまった结果、订正するまでには时间がかかることの例であるとおっしゃっていました。

観点の无い科学は男性を中心とする
车両の衝突実験に使われる人形、心筋梗塞の前兆で胸を押さえる人をイメージしたとき、思いつくのは男性?女性のどちらでしょうか。観点の无い科学、言い换えると性别を意识しない科学では男性を対象として扱われることが多いことが见えてきます。
心筋梗塞の例を见ると、韩国では女性の死亡原因2位が心臓疾患であり、ヨーロッパでも上位の死亡原因であるとのこと。男性は心筋梗塞の前兆として胸の痛みがあるものの、女性の场合は手足の痛みや消化不良、全身疲労など多様な症状で现れることがわかってきています。
男性中心と考えた场合、男性の事故?病気への理解が深まるものの、女性の事故?病気への理解がされずリスクが高まるとイム先生は指摘します。
女性の観点からみる科学は性别の固定観念へ挑戦する
脳科学が性別の固定観念の根拠とされた例として、2020年 韓国教育府の公式SNSにアップされたコンテンツ「父のための子ども教育ガイド」が示されました5。「男性は狩猟のため脳を発达させ、女性は育児のため共感とコミュニケーションに関わる脳を発达させてきた。よって、(子育てにおいては)女性からアドバイスを受けるべきだ」というものでした。このコンテンツは世论の批判を受けすぐに削除されたそうですが、社会における性别の固定観念の根拠として脳科学や进化论が使われた典型例です。
男性脳、女性脳と分けるのではなく「モザイク脳」であるとする研究の绍介もされました。イスラエルのダフナ?ジョエルの研究6では、成人1400人の脳惭搁滨データを分析しました。ヒトの脳を116の部位にわけ、男女で体积の差が大きい10部位を选び、女性型、男性型と区别した后、个々人の脳が女性型、男性型と一贯した特徴を持つかを调べたのです。结果、一贯性を示したのは全体の6%にとどまり、残りは女性型、男性型を併せ持ったモザイク脳であったとのこと。この研究は科学の中に性别の固定観念を持ってきてはいけないという明快な事例になるのではないかとイム先生はおっしゃいました。
モザイク脳は狈贬碍スペシャル7でも取り上げられました。番组内で扱っていた自分のモザイク脳を简易的に调べることができる「モザイク脳チェック8」はホームページ「The Gender Mosaic」で行うことができます。自分のモザイク脳を知ることも性別の固定観念を見つけるきっかけになるかもしれません。
性差を考虑した科学
性差を今一度见直すような事例も绍介されました。
2009年から米国スタンフォード大学のロンダ?シービンガー教授が提唱した「ジェンダーイノベーション(Gendered Innovations)」というプロジェクトがあります。「生物学的な性別の違い」「社会学的な性別の違い」を理解したうえで研究するべきという主旨があり、米国と欧州での科学研究政策へ反映されています。
「生物学的な性别の违いによる影响」の事例としては、実験者が男性の场合、マウスがストレスを受ける研究が绍介されました。男性の腋から放出される化学物质に対してマウスが警戒をし、そのような结果を示したとのことでした9。
まとめと共感した日本における性别の固定観念
様々な事例を绍介いただいた后、イム先生からメッセージは「観点のある科学へ进んだ方が良い」というものでした。イム先生の着书「ミステリアス(神秘的)ではない女性たち」の「ミステリアス(神秘的)」と题したのは「客観的であっても、明确ではないと认识される场合、科学では大きな问题になるのでは」と考えてのことでした。今までの科学も研究者が存在するからこそ「観点」があるはずであり、「観点」が无いと理解しづらいのでは、とイム先生はおっしゃいます。
「観点を定めることにより、科学も麻豆原创コミュニケーションも、力强いものとなる」。力强いものとは伝える相手に対し、理解しようとするきっかけを与えてくれるとイム先生おっしゃいました。
また、「日本は女性科学者が少ないが、韩国の现状はどうなっているのか」という质问への返答で、「男性は成绩が良くなくても理系に进学、女性は成绩がとても良くないと理系に行かないという固定観念がある」という话に会场でももうなずきが得られたことから、日韩で共通した固定観念を持っていることも知ることができました。
同时通訳のハードルと时间制限もあり、イム先生ご自身の研究については「またいつか!」となってしまいました。このような热い思いを持つイム先生はどのような研究をしているのか。ご自身からのお话が闻けること切に期待しております。

注
1.STS:Science, technology and society、科学技術社会論。科学技術が社会(政治的、経済的、文化的)に引き起こす影響や問題、あるいは社会が科学技術に与える影響や問題を、 分析しようとする研究分野、またその教育を意味する。
2.事例として示されたジョン?バークリーの図は奥颈办颈辫别诲颈补で閲覧可能
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Barclay,_J.,_The_Anatomy_of_the_bones…_Wellcome_L0028782.jpg
3.Jacobs, A.Patricia et.al (1965)“Aggressive Behaviour, Mental Sub-normality and the XYY Male”
Nature ,208:1351–1352
暴力的な精神疾患の患者の性染色体を调査し、3.5%の患者が齿驰驰の性染色体を持つことが分かった。
4.The XYY manについて、詳しくは英文のWikipediaを参照
https://en.wikipedia.org/wiki/The_XYY_Man
5.聯合ニュース 「お母さんは養育、お父さんは狩り…男女脳違う」という教育部 2020年5月1日
https://www.yna.co.kr/view/AKR20200501038800004
6.Daphna Joela et.al (2015) “Sex beyond the genitalia: The human brain mosaic” Proc Natl Acad Sci U S A 112 (50):15468-15473
7.NHK「ジェンダー麻豆原创(1)「男X女 性差の真実」」 2021年11月3日
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/pn11RwvEEn/
8.「モザイク脳チェック」については、ホームページ「The Gender Mosaic」の「Questionnaire」から行うことができます(日本語のページはありません)。https://gendermosaic.tau.ac.il/
9.WIRED「マウスの実験結果は、研究者の「性別」で大きく変わる:研究結果」 2014年5月2日
https://wired.jp/2014/05/02/mice-get-stressed-out/