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#12 中谷宇吉郎の书画と「雪の化石」、北大に寄赠

「雪の科学者」として著名で、随筆家でもある北大の中谷宇吉郎(1900-1962)による色紙2枚と書1点、そして彼が作製したと考えられる雪の結晶の標本「雪の化石」が、低温科学研究所に寄赠されました。寄赠をしたのは中谷と親交のあった札幌市在住の小林國子さん(92)です。中谷の研究をしている杉山滋郎さん(北大名誉教授)は一報を受け、品々について調べました。そして、5月25日に開催された講演会「エルムの杜の宝もの:中谷宇吉郎と雪の研究」の中で紹介し、寄赠品は一般に初公開されました。

【川本思心?麻豆原创/理学研究院 准教授】

(「雪の化石」)
ゆかりの品、寄赠の経緯

2018年6月、低温学研究所の杉山慎さん(教授)に「中谷宇吉郎博士の品があるが、北大に寄赠できないか」と相談が持ちかけられました。持ち主は現在介護施設で暮らしている小林國子さんです。中谷は1954年から亡くなる1962年まで、家族は東京に住まわせて、自らは山鼻地区に下宿していました。その斜め向かいに住んでいたのが当時30代だった小林さんです1)。小林さんは华道の先生をしており、中谷の部屋にお花を生けていました。その縁で、中谷から品々をもらったそうです。

中谷は「今は売るんじゃないよ。でも、もし必要があれば売って役に立てなさい」ということを小林さんに言ったそうです。しかし小林さんは貴重な品を北大に寄赠したいということで、介護を担当されている浅野理恵さんが知人を通じて杉山慎さんに連絡をしました。杉山慎さんは2018年9月中旬にそれらを受け取り、さらに中谷の研究をしている杉山滋郎さんに相談をしました。そして4月16日に、改めてふたりの杉山さんは現物を確認しました。

(寄赠の相談を受けた杉山慎さん)
人柄が忍ばれる书画

寄赠された書画は、「八代世界総豊饒」と書かれた色紙、黄山谷の詩が書かれた色紙、杜甫の詩が書かれた書の3点です。どの色紙にも茶碗や花が描かれています。中谷が下宿していた伊達家の夫人は茶道の先生をしていました。中谷と小林さん、伊達夫人の華道と茶道を介した関係が忍ばれます。また、黄山谷と杜甫の詩からは、研究に打ち込む学者の矜持や、家族を東京においてフィールド研究に勤しむ中谷の姿が伺えるようです。

(「八代世界総豊饒/國子へ 宇吉郎」と記された色紙)〈低温科学研究所 所蔵〉
(「帰来坐虚堂 夕陽在吾西/為國子先生 宇吉郎」。詩は宋の詩人?黄山谷によるもの2)。「遠くを求めるばかりでは、結局、何も得られない。それより近きをしっかりと身につけなければならぬ」という意味)〈低温科学研究所 所蔵〉

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(「早行石上水 暮宿天追烟/録杜诗 宇吉郎」。诗は杜甫の五言古诗「彭衙行」の一部3)。「朝には川の石を渡り、夕べにはもやの中で野宿した」という意味)〈低温科学研究所 所蔵〉
贵重な「雪の化石」

今回寄赠を受けた「雪の化石」は、特殊な樹脂で雪の型をとったものです。中谷は、雪の結晶をより正確に長時間観察するために、標本化の方法を戦前から探っていました。しかし、中谷の方法では1週間ほどしか標本は持ちませんでした。その後、中谷は1949年に3ヵ月アメリカに遊学します。そのときヴィンセント?シェファー(1906-1993)から、ポリビニルホルマールの塩化エチレン溶液を用いた作製法を教えてもらい、溶液も譲り受けます。

中谷はこの雪の标本づくりについて「雪の化石」と题して随笔を书いています4)。「雪の化石」とはどういう意味か、どうやって标本をつくるのか。分かりやすいので以下に引用してみましょう。

雪の结晶を布かガラス板の上に载せて、摂氏マイナス五度以下に冷やしたこの溶液を一滴落す。そうすると、溶液は结晶表面のすみまで、よく行き渡る。この状态で、摂氏マイナス五度くらいのところに、数时间放置する。すると塩化エチレンは蒸発して、ポリビニルの薄膜が雪の结晶の表面に残る。ちょうど天ぷらの衣ころものようなものになる。このとき标本を暖かい部屋に持ち込むと、雪は溶けて水となり、この水はポリビニルの薄膜を通して蒸発してしまう。あとには、天ぷらの皮だけが残るわけである。この皮は非常に薄いもので、结晶の形はもちろんのこと、表面の微细な构造までも、よく现わしている。顕微镜で见ても、もとの结晶そのままに见える。

杉山滋郎さんによると「今回寄赠された雪の化石も恐らく同じ方法で、1950年代に作られたものだろう」とのことです。雪の化石の作製方法や、標本が作られていたこと自体は良く知られていました。しかし、杉山慎さんも杉山滋郎さんもこれまで「見たことがない」と口をそろえます。もちろん中谷が作った雪の化石も、北大での所蔵は確認されていませんでした。北大にとって貴重な品になることは間違いなさそうです。

(杉山慎さん(向って左)と杉山滋郎さん(右)。额装をはずして雪の化石を确认します)
(雪のレプリカ。形の違う12個の結晶があります)〈低温科学研究所 所蔵〉

讲演会で一般に初公开

5月25日(土)に讲演会「エルムの杜の宝もの:中谷宇吉郎と雪の研究」(主催:道新ぶんぶんクラブ?共催:北大総合博物馆)が総合博物馆で开催されました。杉山滋郎さんは、中谷の研究について多数の资料を用いながらお话をしました。

杉山さんの讲演の力点はまず、中谷の研究の背景と位置付けにありました。中谷は雪の研究者として有名ですが、他にも雪の研究者はいました。しかしそれは积雪、つまり积もった后の雪を対象とするものでした。一方の中谷は、降ってくる雪の研究をしました。つまり彼は降雪の研究者として特徴づけられるのです。

もう一つは中谷の研究の幅広さです。中谷は雪以外にも、火花、スキーの滑走、航空机の结氷、雾の発生など幅広い研究を行っていたことを、杉山さんは强调されていました。

(中谷が作製し撮影した雪の结晶をうつしながら説明する杉山さん)

講演会の後半は見学です。まず、中谷が実際に使ってたN123号室を復元した研究室を訪れ、杉山滋郎さんが解説をしました。そして総合博物館内の中谷関連展示を見学し、最後に今回初公開となる寄赠品4点を鑑賞しました。

(中谷の復元研究室を见学する参加者)
(雪の结晶の写真を撮影した乾板を収めた箱を手にしながら解説をする杉山滋郎さん)

?寄赠された書と雪の化石は、今後の一般公開は予定されていませんが、低温科学研究所が所蔵することになりました。杉山慎さんは「中谷宇吉郎にゆかりがある低温科学研究所に、今回の資料を展示できるのは嬉しいですね。彼の研究を引き継いで雪と氷を研究している自分にとって、みなさんと一緒に当時のことを偲ぶのは興味い機会でした」とお話していました。北大の歴史を語る貴重な資料として末永く受け継がれることでしょう。

参考文献?注

  1. 色纸には「帰来坐虚堂」とあるが、元の诗は「帰来坐虚室」
  2. 色纸には「暮宿天追烟」とあるが、元の诗は「暮宿天边烟」

 

中谷宇吉郎を绍介しているこちらの记事もご覧ください

  • (2013年07月04日)

 

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