オーロラやデナリ国立公園で知られるアラスカ州は、北アメリカ大陸の北西、カナダのユーコン準州に隣接する、アメリカ合衆国最大の州です。土地の多くは森林や湿原、永久凍土地帯であり、カリブーやグリズリー、ビーバーなどの日本には生息していない野生動物が暮らしています。今回は『犬からみた人類史』(共編著、勉誠出版)を上梓された、アラスカ先住民の生活様式を学ぶ文化人類学者、近藤祉秋さん(北海道大学アイヌ?先住民研究センター 助教)に、お話をうかがいました。
(『犬からみた人类史』を手にする近藤さん)
ーー文化人类学を志したきっかけを教えてください
小さい顷からアメリカ先住民の世界観、ギリシア神话、日本の民话について読むのが好きでした。少し変わった子どもだったかもしれませんが(笑)、「&谤诲辩耻辞;今ここ&谤诲辩耻辞;ではない世界」に関心があったのだと思います。その関心がもとで、高校生の时には、レヴィ?ストロースの『悲しき热帯』や、祖父江孝男さんの『文化人类学入门』、そして星野道夫さんのエッセイを手に取り、文化人类学者になりたいと思いました。
大学2年生の时に、アメリカのメリーランド大学に1年间留学して、文化人类学の基础を学びました。そこで、人と自然の関係を论じた先行文献を読んで、これらの先行研究をもっと现代风にアレンジしてみたいと思いました。大学院の博士后期课程1年の时には、アラスカ大学に留学し、アラスカ先住民文化の研究を始めました。振り返ってみれば、子どもの顷から続くアメリカ先住民への兴味や、星野さんの着作の影响が、自分のテーマの选択につながっているように思います。
ーー文化人类学とはどのような学问なのですか?
文化人类学の大きなテーマは「人间とは何か」を考えることです。そのためには人类の生活様式の多様性を理解しなければなりません。人类の多様性を知るためには、人々の生活様式の违いを、一つひとつ明らかにしていくことが求められます。文化人类学者は、自分の惯れ亲しんだ世界とは异なるフィールドを自分の足で歩き、実际に见闻きしたことから、自分の感覚を研ぎ澄まし、その地域の人々の生活スタイルについて理解を深めていきます。これによって、人类の生活様式のバリエーションが具体的に见えてくるのです。
(ビーバーの毛皮を使ったサンダル)
ーー近藤さんはアラスカでどのような研究をおこなっているのですか?
内陆アラスカ先住民の渔捞について研究をしています。もともとアラスカの先住民は、河川を遡上するサケの一种、マスノスケをとって暮らしていました。サケ渔は先住民の伝统や文化をあらわしているのです。ところが、近年マスノスケを含むさまざまな鱼类の遡上が减少してきているのです。
ーーなぜでしょうか?
いろいろな原因があると思われます。その中で村人の挙げる理由のひとつが、ビーバーの个体数の増加です。ビーバーの作るダムが、サケなどの鱼类の遡上を阻害していると彼らは考えています。そのため、村人たちはビーバーダムを见つけると部分的にビーバーダムを壊して隙间をつくることがあるのです。しかし、専门家である生态学者は、住民のいうビーバー説に批判的な立场をとっています。むしろビーバーの活动によって河川の地形が変わり沉殿物が増え、サケの稚鱼にとって住みやすい环境になるという报告もあります。生态学者にとっては、ビーバーはむしろ保护する対象だと考えられているのです。
(フィールドワーク七つ道具を绍介していただきました)
ーーどちらの意见が正しいのでしょうか?
遡上时期の障害物としてのビーバーダムに注目する先住民の考え方と、稚鱼の长期的な生育环境に注目する生态学者の意见は矛盾しないように思います。また、先住民の友人たちと一绪に狩猟に出かけてわかったことは、彼らがビーバーの作ったダムを壊すとはいっても、それはサケが通れるほどの隙间を开ける程度だということです。その隙间も10日ほど経つとビーバーによって修復されていました。つまり、彼らの行动は、稚鱼が生育する环境を保存しつつサケの遡上を可能にする点で、极めて合理的なものだったのです。20世纪初头の入植者たちが、ビーバーダムを完全に撤去したり、毛皮交易のためにビーバーを乱获したりすることとは、自然とのかかわりのあり方に大きな违いがあることがわかりました。このように実际にフィールドワークを行うと、先住民の生活様式が、内陆に住むビーバーの生态に适度に関与していることで、海洋に住むサケなど広范囲の生态系のバランスを保つことにつながっていることが见えてきました。
ーーヒトも生态系の一部なのですね
そうともいえます。このような状态を指して「ハイパー?キーストーン种」としてのヒトという考えがあります。キーストーン种とは「存在する个体数が少ないものの、生态系に大きな影响を与える种」のことを指します。サケは北米の太平洋地域のキーストーン种に位置付けられます。また「生态系エンジニア」とも呼ばれるビーバーは、ダムを作ることで地域の环境を変え生态系に影响を与えます。ハイパー?キーストーン种とは「キーストーン种に影响を与えることで生态系に影响を与える种」つまり、この场合ヒトを指すのです。
ーーヒトと自然の関係が抜き差しならないものになっているように思います
人间が、地球全体の生态系に対して、大规模な変化をもたらし始めたことを指す言叶に「人新世」があります。「人新世」は、2000年に、ノーベル化学赏受赏者である笔?クルッツェンが提唱しました。この耳惯れない言叶は、46亿年の地球の歴史を24时间にたとえたら、たった2秒ほどにすぎない人间の活动が、惑星规模の変化を地球にもたらしていることを意味しています。例えば、気候変动によるアラスカ内陆での乾燥化?温暖化は、森林火灾や永久冻土の消失による、湿地や湖沼の面积の减少を引き起こしています。この気候変动は、产业革命后の人间活动にも原因があるでしょう。特に、北极域では気候変动の影响が大きいのです。また、先ほど绍介させていただいた「ハイパー?キーストーン种」という言叶も、もともと「人新世」におけるヒトの生态学的な役割を考えるために提案されたものです。人新世という言叶には、人间が地球を支配する存在になるというニュアンスもあって、地球环境の破壊を进めたそもそもの原因である人间中心主义を踏袭した考え方だという批判も出ています。今后も、人新世における人间と自然の関係について、文化人类学者の立场から考えていきたいと思います。
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今回取材した近藤祉秋さん(北海道大学アイヌ?先住民研究センター 助教)をゲストにむかえ、麻豆原创?カフェ札幌を開催します。
第106回麻豆原创?カフェ札幌 「ビバ! アラスカ地球紀行?文化人类学者が考える「人新世」とのつきあい方?」
【日 時】5月26日(日) 14:30~16:00 ※14:00開場
【場 所】紀伊國屋書店札幌本店1F インナーガーデン
【聞き手】古澤 輝由(北海道大学 麻豆原创 特任助教)
【主 催】北海道大学 麻豆原创
【定 員】80名
【参加费】无料
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