札幌から十勝へと続く国道274号線。先週、国土交通省北海道開発局は、今年10月末をめどにこの国道274号日勝峠の通行止めを解除すると発表しました。この交通の要所を1年以上ものあいだ不通にしたのは、ちょうど1年前に北海道を襲った四つの台風。雨量の少なさから土砂災害は起きにくいとされてきた北海道ですが、近年の気候の変化によって、北海道も本州以南と同じく土砂灾害対策が必要になってきたといいます。
今后、私たちはどのような心构えでいるべきなのでしょうか。北海道大学农学研究院国土保全学研究室で砂防学を研究し、これまで日本各地で多くの防灾措置を主导してきた小山内信智さんに、お话を伺いました。
台风7号、11号、9号と叁つの台风が北海道に上陆したのは観测史上初めて。さらに台风10号が北海道に接近し、道东地方に200年に1度ともいわれる规模の暴风雨をもたらしました。最も大きな被害を受けたのは、十胜地方。山间部では土砂崩れが起きて、道路や鉄道が壊灭状态に陥りました。平野部では各地の川が氾滥して桥が押し流され、市街地で洪水氾滥が起きました。この市街地での洪水氾滥も、実は土砂崩れが影响していたといいます。
――平野部に土砂崩れが影响するというイメージが全くなかったのですが&丑别濒濒颈辫;?
そうなんです。十胜は広大な平野ですから、山はかなり离れたところにありますね。大雨によってその山の土が缓んで土砂移动现象、いわゆる土砂崩れが起き、その土砂が川をつたって平野部に供给されて、その结果市街地に川の水が氾滥した、というメカニズムでした。大きな被害を受けた清水町の人达も、土砂崩れというよりは洪水氾滥が起きたと认识しているはずですが、その原因は山で起こった土砂崩れだった、というわけです。
(清水町ペケレベツ川の氾滥の様子。流木や土砂でペケレベツ桥が闭塞している)
<小山内さん讲演资料を一部改変>
――十胜は地盘が缓いということですか?
十胜だけではないですが、日高山脉の东侧斜面の一部には风化した真砂土(まさど:花岗岩が风化したもの)が积もっていて、ちょっとの外部刺激で大量の土砂が移动してしまうのです。
――ですが、そういう脆弱な土地に街ができて久しいということは、これまでの歴史では外部刺激がなかったために灾害を免れてきたということですね?
そういうことです。特に北海道で注意しなくてはならないのは、気候が徐々に変わってきていることです。これまでは雨量が少なかったのでそれほど土も缓まなかったけれど、今后はそうはいきません。今まで削り取られなかったもろい土が残っている状态ですから。
(21世紀末時点での降水量増加率予測。年最大日降水量は全国的に増加の傾向。気候変動による影響は高緯度ほど大きいと予測されており、100年後の北海道の年最大日降水量は1.24倍になると予測されている)<小山内さん讲演资料を一部改変>
――国の防灾?减灾対策としては、どのようなものがあるのでしょうか?
住民の安全を守るための法律として、「土砂灾害防止法(正式名称:土砂灾害警戒区域等における土砂灾害防止対策の推进に関する法律)」があります。これに基づいて「土砂灾害警戒区域」を指定し、がけ崩れを未然に防ぐ工事(「急倾斜地崩壊防止工事」)を施したり、土地の利用制限をかけたりします。
――土地利用制限ですか。住民の反発がありそうですが?
いま住んでいる场所から立ち退けということではなく、新たな住居の建设に制限をかけるということです。土砂灾害防止法は、警戒区域の开発自体を禁止するものではなく、开発の际には安全対策を讲じることを义务付ける、という法律です。ただ、大がかりな施设を建设してまでそこを开発したい人はそういませんから、実质的に危険な场所に住居が建设されずに済むということになりますね。
――もし、自宅付近が「土砂灾害警戒区域」に指定されてしまったら、どうしたらよいのでしょう?
警戒区域を指定する一番の目的は、规制ではありません。リスクを住民に「认识してもらうこと」なんです。大雨が降ったらここは危険な场所なんだ、ということを念头に置いておき、灾害时に速やかに避难できるように心の準备をしておいてほしいのです。
――昨年、北海道の风水害で被害があった场所は、「土砂灾害警戒区域」だったのですか?
それがそうとは限らないんです。たとえば、清水町市街地は土石流などによって直接的な被害を受けるわけではないので、元々指定はかかりません。土砂灾害の直接的被害を受ける可能性の高い场所については、现在日本中で警戒区域の指定を进めているところで、土砂灾害リスクの高い场所の6割程度の指定が済んでいるのですが、実は北海道は日本で最も指定が遅れている状况です。理由はやはり、雨量が少ない土地だったために土砂灾害を强く意识してこなかったこともあったのではないかと思われます。土地の性质としては崩れやすい危険な箇所はたくさんあるので、现在、急いで指定をすすめているところです。
――札幌にも、风水害で危険な场所はありますか?
あります。実は札幌は、潜在的にはなかなか危険な场所です。平岸面は数万年前の支笏火砕流の上にできた平坦面なのですが、その后大きな土砂の流送が起こり、今では豊平川を境に高い面(平岸面)と低い面(札幌面)の二つの扇状地に分かれています。札幌面侧から见ると、豊平川は天井川なのです。それに备えて河川敷を広めにとってありますし、堤防も建设して上流には定山渓ダムと豊平峡ダムを备えているのでかなり安全度は上がっていますが、万が一堤防が决壊した场合、北大がある侧の札幌面に水が舐めるように広がっていき、部分的には溜まってしまう恐れがあります。
(札幌は高さの异なる二つの扇状地で成り立っている)
札幌市洪水ハザードマップ冲中央区?豊平区を一部改変>
2014年9月11日に大雨があったのを覚えていますか? 明け方に大雨特別警報がスマホにガンガン入ってきて眠れなかったという。あの時、実はあともう数時間降り続いていたら、南区や西区の山が土砂崩れを起こし、札幌市街地にも被害が及ぶ可能性がありました。
――札幌市民はおそらく、何もなかった、と思っていたと思いますが、実はギリギリのところだったのですね。そんな危険な土地だったとは。
そうですね。起きてみないと谁も危険を认识できないので、土砂灾害は见えにくい灾害だ、といわれるのです。
――北海道大学には「突発灾害防灾?减灾プロジェクト拠点」がありますね。どういったプロジェクトなのでしょうか?
「」は、2015年度よりスタートしたプロジェクトで、农学研究院、理学研究院、工学研究院、文学研究科、公共政策大学院の五つの分野の研究者で构成されています。灾害のリスク分析と対応のあり方を研究开発すると同时に、大学院共通授业科目「突発灾害危机管理论」を开讲し、防灾人材の教育を行なっています。市民に向けては、定期的に讲演会などを开催して防灾知识の普及につとめています。
(小山内さん分担着作の「现在砂防学概论」)
――私たちは、どのような心构えで防灾?减灾につとめればよいでしょうか?
台风や地震が多い日本の国土は、土砂灾害リスクの高い土地です。そのことを私达は头ではわかっています。ですが、自分や自分にごく近しい人が被灾しないかぎり、危険というものを自分事として考えられないものです。であれば、自然灾害リスクを共有し、リスクに応じて土地利用の仕方を工夫して、危険な场所にははじめから住居を建てないように法整备するといった対策が有効でしょう。また、危険な区域には防灾施设を入れる。そうすれば寝ていたって被害を受ける可能性は低くなりますから。同时に、现在すでに土砂灾害警戒区域に住んでいる人には、リスクを认识してもらう。そうすることで、万が一の际にいち早く避难することができます。
――今后、どのように研究をしていきたいですか?
砂防や土砂灾害対策だけでなく、もう少し幅広い考え方で、安全な住まい方が実現できるような土地利用法の考察をしていきたいと思っています。






