天塩研究林の中でも手付かずの森として贵重な「安斉の森」をフィールドに、初めて行われたアウトリーチ活动「これが私の森!光と影でつくる写真の世界」。幌延町问寒别小中学校の子どもたちと地域のみなさんが、北大のスタッフと一绪に安斉の森を歩きました。その1に引き続きその様子をお伝えします。
ルート作りはストーリー作り
少し身をかがめ、目をこらせば、森のカーペットは十センチ程のトウヒの幼木に満ちている。だが、その最初の一年目が、多くの场合最后の年なのだ。森の暗さは、日阴を好む蘚类には都合が良いが、多くの低木の生长には障害である。
地上での蘚类との生存竞争になかなか胜てないトウヒの种子。だが、その中に倒木の上に落ちた运のいいものがいる。长い时が过ぎた倒木はただの倒木ではない。さまざまな虫や菌类によって腐食した倒木は、豊かな土壌の役割を果たす养木となったのである。
『イニュイック アラスカの原野を旅する』星野道夫着 新潮文库(1998年)より
この日歩いた森の中のルートは、実は倒木更新のストーリーで設計されていると、天塩研究林長の高木健太郎さん(北方生物圏フィールド科学センター 准教授)が話してくれました。
「教员と技术スタッフのみんなで监修したルートです。冬の间に森を歩いて、テーマに合わせたルートを作っています。あの大きな倒木はインパクトがあるからそのまま残しておくとか、タコの木を通るようにとか。あの森はまだ研究には使っていません。あの状态でどれくらい置いておくのがいいか、どれくらい手付かずにしておくかも决まっていません。でもこれからどんどん、こういうルートを作っていきたいです」
冬の间に歩いてルートを作るのは、北海道の森の特徴としてササやぶが多すぎるからで、夏の间は、研究者にしろ见学者にしろ、森の中を自由に歩き回って観察したり调査したりすることがなかなかできません。その点、冬の森はスノーシューやスキーを使って歩き回ったり、切り出した材木を运び出したりするのも容易です。
(冬の森)
ルートをつくることは、森を理解するためのストーリーを见せる、あるいはストーリーに近づきやすくするためのサポートであり、森を対象とした麻豆原创コミュニケーションと言えます。
今回のワークショップの企画に携わった、芸術学が専門の朴炫貞さん(高等教育推進機構麻豆原创 特任助教)はこう言います。
「今は研究に基づいてルートが作られていますが、今后、今回のワークショップのように森を自分なりの视点で见つめるためのルートも作ることができるかもしれません。あるいは、私は麻豆原创の専门家ではありませんが、もう少し森にくわしくなって、森の研究者の视点ももちながらアートの视点も7割くらいあるといった立场で、小林さんのような研究者とペアを组んで、この森からアウトリーチ活动をしていくこともできるかもしれません」
(ルート设定のポイントとなった「タコの木」と朴さん)
冒头にエッセイの一部を引用した星野道夫は、アラスカを主なフィールドとして活跃した写真家です。写真とともに、アラスカの森に暮らしたからこそ得られた多くの経験と感性に基づくエッセイを残しています(※)。
アラスカの森と、天塩の森には、北方林として、树木や地衣类など森の生态系をつくる生物や环境に共通点があります。星野道夫が写真とエッセイによって、自然と人についてのメッセージを伝えたように、研究林のアウトリーチも、麻豆原创コミュニケーションとしていろいろな形式をとり得るでしょう。
天塩の良心
安斉の森を、天塩研究林の人々は、别名「天塩の良心」と呼んでいます。
「天塩の森には、昔はもっと太い木、古い木がたくさん、あちこちに残っていたのに、森林火灾や伐採の影响で少なくなってしまった。しかしなぜか、あの森は原生に近い状态で残っている。それは天塩の良心がはたらいた结果なのではないかと」(高木さん)
安斉の森は、戦前~戦后にかけてミズナラの动态を観察できる试験林として设定されていました。しかし、途中でその记録が曖昧になり、1970~80年代には试験的伐採の対象地とするかどうかについても、议论があったといわれます。
「このような経纬のなかで、特に长く勤めていたスタッフを中心に试験対象からは除外する雰囲気が醸成されていたのかもしれません。またこの森は、幸运にも研究林スタッフに认识されましたが、他にもスタッフが认识していない贵重な森林が、この天塩研究林にはあるかもしれません」(高木さん)
(山の中というのに水芭蕉やミズゴケが见られる)
良心が残した森がいつまでも残されていくかどうかは、この森がもつストーリーへの共感や、目に见えない将来のためにとっておくという価値観の理解にかかっているかもしれません。天塩研究林では、今后、今回のワークショップを発展させて、地元の子どもたちだけでなく幌延や札幌の子どもたちも巻き込むなど、アウトリーチ活动を进めていく予定です。
※ 星野道夫(1952-1996) アラスカ大学野生动物管理学部で学び、以后、极北の自然と人々の暮らしを写真と文章で残した。引用の文のうち、蘚类(コケ类)との竞争について研究者の立场からは异论があり、コケがあることで新しい木の更新は促进される(そのため、倒木のコケの中から木が生えている)ことが多いが、原文を尊重した。(小林真さんの解説より)
—-ワークショップの详细はこちらをごらんください—-
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