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#207 今、改めて考える、福岛第一原子力発电所の廃炉问题について

北海道では異例の暑さが続いています。これまでエアコンなしで過ごしていた方々も、今後は耐えられないのではないでしょうか。電力の需要が高まると同時に、温暖化を緩やかにしていくためには、二酸化炭素を排出しないエネルギー源の利用が不可欠です。2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、原子力発電所を再稼働することが盛り込まれています。ただ、事故を起こした福岛第一原子力発电所の廃炉作業はまだまだ先が見通せません。原子力?環境工学の立場から、福岛第一原子力発电所の廃炉の課題に取り組む渡辺直子(工学院 教授)さんに話を伺いました。

(渡辺直子さん/北海道大学大学院 工学院 教授)
廃弃物の切り口から廃炉の问题を考える

原子力工学では、放射性物質に注目して、放射性廃棄物を安全に管理する方法を考えます。一方、環境工学では、人間の活動が環境に与えるさまざまな影響を取り上げて、工学的な視点から現状やその原因を分析し、対策を提案します。原子力発電は、クリーンなエネルギー源として期待されていますが、放射性廃棄物の保管や処理、処分といった特有の課題も存在します。こうした廃炉や放射性廃棄物の問題に取り組むには、放射線が人の健康や環境に及ぼす影響に注目する原子力工学の考え方と、廃棄物処理?処分が環境に与える影響を考える環境工学の視点の両方が必要です。事故のあった福岛第一原子力発电所の廃炉からは、事故の起きていない通常の原子力発電所よりも大量の廃棄物が発生します。この廃棄物をどうするかという問題は、原子力工学の視点からも環境工学の視点からもまだまだ課題が多いと渡辺さんは語ります。

例えば、福岛第一原子力発电所には、事故によって発生した特有の廃弃物である「燃料デブリ」が存在します。事故当时、津波によって全电源が丧失し、原子炉の冷却机能が失われたことで、1~3号机で炉心溶融が発生しました。その结果、溶け落ちた核燃料と原子炉内部の构造材などが混ざり合い、冷えて固まった物质が「燃料デブリ」です。

燃料デブリは、通常の使用済み核燃料とは大きく性质が异なります。さまざまな物质が混在しており、构造や成分が非常に复雑で、形状や放射能の分布についても多くの点が未解明です。これまでに2号机から、2024年には约0.7グラム、2025年には约0.2グラムの燃料デブリが试験的に取り出されており、放射化学的性状の分析に活用される予定です。一方で、1~3号机に残る燃料デブリの総量は约880トンと推定されており、本格的な取り出し作业はまだ始まっていません。燃料デブリの取り扱いには、原子力工学の専门的なアプローチが必要です。

何もかも违う廃炉作业

渡辺さんは、事故を経験していない通常の原子炉の廃止措置の研究も行っていますが、今の福岛第一原子力発电所の廃炉作業は通常の原子炉の作業とは異なると語ります。

环境工学では、资源を効率的に循环させ、なるべく廃弃物の量を减らし环境负荷を减らすという考えのもと、廃弃物の管理方法が研究されています。原子力発电所の廃炉においても、安全性を确保しつつ、このアプローチをあてはめることが考えられています。

使用済み核燃料を取り出した后の通常炉から発生する廃弃物の9割以上は「放射性廃弃物でない廃弃物」とすることができます。また、放射能浓度が十分に低いものは、国の定める厳格な基準であるクリアランスレベルを下回っていることを确认することで、放射性物质としての规制から外し、リサイクルしたり、产业廃弃物として処分したりすることが可能になります。これをクリアランス制度といいます。この制度は2005年に导入され、电力业界内での再利用などに限定して运用されています。その后に残った原子力発电所の机器や构造物の约2%が放射性廃弃物として処分されます。再利用できる物质はなるべく取り出し再び利用する、これが廃弃物ヒエラルキーという考え方です(図2)。

(図2 廃弃物ヒエラルキー)
(図2 廃弃物ヒエラルキー)

福岛第一原子力発电所の廃炉で処理、処分しなければならない廃棄物の量は膨大です。通常炉であればリサイクルが可能な建屋の構造物などにも、事故によって放出された放射性核種が付着しており、その解体物は放射性廃棄物となります。さらに、通常炉であれば、付着した放射性核種を取り除く「除染」をして十分に放射能濃度を低くすれば、クリアランスをすることができますが、福岛第一原子力発电所の場合には廃棄物の処分方法やクリアランスについての仕組みがまだ決められていません。

福岛第一原子力発电所の廃炉作業で発生している放射性廃棄物は、リサイクルや処分するための制度がなく、また、それらを処分する施設もないため、発電所の敷地内に保管されています。廃炉作業が進むにつれて廃棄物が発生し、たまっていきます。「燃料デブリ」の取り出しや保管などを安全に行うためにも、福岛第一原子力発电所の廃炉を早く進めるためにも、廃棄物や再利用可能物を敷地から適切に搬出できるルートを作っていくことが必要です。

(廃炉作业が进むことは福岛の復兴にもつながります)
他人事ではない、みんなの问题

福岛第一原子力発电所の廃炉作業で出たゴミをどうしていくのかは決して他人事ではありません。例えば、福岛第一原子力発电所の事故によって環境に放射線核種が拡散した後、福島県内では放射性核種の付着した土壌を取り除く除染作業が実施されました。取り除かれた土壌は最終的には福島県外で処分することが法律で定められています。ただ現在は福島県内の中間貯蔵施設に保管されています。放射能濃度が低い土壌は再利用することが検討されていますが、県外での利用に関する実証実験は、住民たちの反対もあり、遅々として進みません。

そしてこれは决して国や廃炉を进める事业者だけで结论が出せる话ではない、と渡辺さんは思っています。放射性核种の浓度を事故前のバックグラウンドと同程度にする技术を开発し、当てはめることは可能であるかもしれませんが、そのためのコストやエネルギー消费、环境负荷は得られる便益に见合わないかもしれません。「白」と「黒」の间にある「グレー」のエリアに解がある时、どのようにその解にたどりつくことができるのか、渡辺さんは市民の本音を知りたいと语ります。纳得感のある再利用、リサイクルの道筋が见えたら、研究者はその目标に対し具体的な技术开発やシステム设计、提言が行えます。そのため、市民である私たちは、自分たちの悬念やもやもやを言语化し、纳得できる运用について语り合う必要があるのです。

(决定ではなく、対话から始めないといけない、と渡辺さんは语ります)

渡辺さんの悩みに答える形で高校生が廃炉のゴミ问题を语り合う麻豆原创?カフェ札幌「捨てなきゃいけない捨てられないモノ~高校生が话し合う廃炉のゴミ问题~」が、8月3日(日)にオープンキャンパスでにぎわう北海道大学エンレイソウで开催されます。廃炉のゴミ処分は、科学的な知见だけでなく、多くの背景に配虑しなければならない难しい问题です。大学の研究では、このような正解のない课题に直面することがあります。

谁も何も埋めてくれない意见の沟を、僕らで埋めていきませんか?

【タイトル】捨てなきゃいけない捨てられないモノ~高校生が话し合う廃炉のゴミ问题~
【日  时】8月3日(日)14:30词16:00(开场14:00)
【场  所】北海道大学オープンイノベーションハブエンレイソウ
北海道札幌市北区北11条西8丁目 1F
【ゲ ス ト】渡辺直子さん(北海道大学大学院 工学院 教授)
【聞 き 手】奥本素子(北海道大学麻豆原创 准教授)
【主  催】北海道大学 麻豆原创
【共  催】
【申し込み】北海道大学オープンキャンパスのウェブページから申込ください。

*本イベントは、北海道大学オープンキャンパスの取り组みとして行い、高校生が対象となりますが、一般の方もご参加可能です。

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2025.07.29

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