现在、「週刊少年ジャンプ」で絶賛连载中の『』。2022年に连载3周年を迎え、11月时点の全世界累计発行部数は150万部を突破。大人気のスパイバトルコメディ漫画ですが、実はその作者、権平ひつじさんが北大の翱叠であることはご存じでしょうか。2014年に北大水产学部を卒业し、漫画家の道へ进んだ异色の経歴。大学では何を学び、漫画制作にどう活かしたか。一问一答でインタビューしました。
【江口 剛?麻豆原创本科生/水産科学院博士2年】【取材協力:集英社】

将来の梦は「漫画家」ではなく「海洋学者」だった
なぜ水产学部から漫画家という进路を选ばれたのでしょうか。
実は入学したばかりの顷、漫画家になるつもりは全くありませんでした。
なかったのですか!?
趣味でノートに漫画を描くことはありましたが、漫画家の素质が自分にあるとはとても思えませんでした。実际、小さい顷の梦は海洋学者です。昔から虫や植物が好きでしたが、特に海の生き物が大好きで。小学生の时にはじめてパソコンで描いた絵もミノカサゴでした。奥颈苍诲辞飞蝉のペイントで描き、フロッピーに保存して…さすがにもうなくしましたが(笑)。
子どもの顷から生き物好きですね。
とりわけ深海生物は本当に素敌です。特にコウモリダコ。青い瞳、足を开いたときの伞のような优雅さ。「地狱の吸血鬼イカ」という意味の学名もおしゃれですね。実は『夜桜さん』の7巻コミックスカバーの里表纸にも描いています。

大好きな海の生き物を勉强できると思うとわくわくして、高校时代から水产学部に行きたい気持ちが高まりました。北大なら大好きな漫画『动物のお医者さん』の舞台として知っていましたし、実家から自転车で通えるほど近いので。のちに水产学部生は进级途中で札幌から函馆キャンパスに移行することを知り一瞬ためらいましたが、もう受験间近だったので「まあいいや」と腹をくくりました。渔师の祖父が函馆出身だったことも后押ししたように思います。
では、漫画家を目指し始めたきっかけは。
大学1年の后期の顷に「试さずに諦めるよりは一度试してから諦めた方がいいかな」と思い立ち、ジャンプの月例赏に応募しました1)。数カ月経って出したことすら忘れた顷、一本の电话が入りまして。留守録に切り替わり「週刊少年ジャンプ编集部の…」という声が闻こえた瞬间、一気に思い出して急いで受话器を取りました。当时は东京の市外局番が03から始まることすら知らず、「迷惑电话だろうな」と呼び铃を闻き流していたので……ものすごく慌てましたね。佳作を受赏した旨や担当がつくことを闻きながら、混乱して腰が抜けたまま受け答えした记忆です。
19歳の时に初投稿で初受赏。人生最大の転机ですね。
漫画家になるなんて絶対ありえないと思っていたのが「もうちょっと试していいかも」と考えるようになりました。それから复数の読み切りや连载を経ましたが、いまだに自分が漫画家だと信じられず、时おり変な梦を见ている感覚になります。ただ、今思うと僕の头じゃ学者になれないと在学中に痛感したので、漫画家を选んで良かったなとホッとしています。

水产学部では実験や実習も多いかと思います。大学生活と執筆活動、どう両立させましたか。
両立自体はあまり难しくなかったです。人付き合いが苦手なので、时间はわりと余ってました。
例えば1年生の楡陵祭の时にクラスの罢シャツデザインを担当したのですが、それがデザイン赏を受赏し副赏として约50人前のジンギスカンを顶いたことがありました。それで皆がジンパ(ジンギスカンパーティー)を开くからと诱ってくれたのですが、ほぼ话したことがなく。优しい人达だから内気な僕がいたら気を遣わせちゃうと思うとしんどくなり……丁重にお断りしました。そんな具合で友人は少なく恋爱とも无縁の大学生だったので、漫画制作の时间は悲しくなるくらいあったと思います(笑)。
授业料免除や给付型の奨学金のおかげで、アルバイトせずやりたいことに打ち込めた点も大きいですね。原稿料も贵重な収入源でした。ですが何より大きいのが、大学时代に出会った方々の谁もが优しくサポートしてくださったことです。
周囲のサポートですか。
游ぶ友人こそ研究室の同期や先辈ぐらいと少ないものの、多くの人に支えられて研究と漫画を両立できました。あまり面识のない同期も漫画の感想を伝えてくれたり、サークルのライブに呼んでくれたり。大学の事务职员の方々も优しく、选りすぐりの漫画コレクションをプレゼントして下さる方もいました。
研究室の嵯峨直恆教授(さが?なおつね、现:名誉教授)や宇治利树先生(うじ?としき、现:助教)の理解も大きかったです。たまに研究室の机でこっそりネーム作业をしていても目をつぶって下さいました。今思うと本当に申し訳ない限りです…。

卒业论文でも宇治先生が付きっきりで面倒を见て下さって。「若手研究者も漫画家みたく将来への不安を抱えながらの仕事だから、少し気持ちがわかるよ」と、よく実験の傍ら亲身に话して下さいました。
卒论テーマは海藻のストレス耐性、大学卒业后も研究生活
卒业论文はどのようなテーマで研究していましたか。
海苔の原料であるスサビノリのストレス耐性遗伝子についてです。ノリの生育环境が暑かったり栄养が少なかったりしてストレスがかかる时、遗伝子の発现にどう影响するか调べていました。
地道な作业をひたすら繰り返してデータを取ってましたね。パーティクルガンで细胞に顿狈础を入れて、笔颁搁にかけて、电気泳动で确认して……友达とビーカーやフラスコを洗ったり、オートクレーブで灭菌する日々も全て楽しい思い出です

楽しかった研究生活、大学院进学という道もあったのでしょうか。
大学4年の顷には既にジャンプ本誌に読み切り2)を载せたりと漫画家への道が固まりつつあったので、研究が楽しいとはいえ学部での卒业は决めていました。そんな折、宇治先生のご厚意で研究のお手伝いを少しさせて顶くことに。卒业した后も研究生として2ヵ月ほど大学に残り、院に进学した友达や先生と一绪に研究できたことはとても楽しく、本当に恵まれていたと思います。

自分よりずっと凄くて尊敬できる方々に出会えた経験は漫画にも良い影响でした。それこそ小さい顷、僕は身の回りで谁よりも生き物に详しい自信がありました。でもいざ水产学部に入ったら、僕より様々な鱼を知っている人、自宅に大量の水槽を置いて生き物を饲育する人、さらには海鸟を远目の姿や鸣き声だけで正确に种を同定できる人など…もう比べるのもおこがましいほど生き物ハカセがいっぱいいて。どんな分野にも素晴らしい人が沢山いると実感し、今の仕事にひたむきに临むうえで大切な経験になりました。
あとものすごく変わった人が多かったので……漫画のキャラ作りに多少影响したかもしれません(笑)。

海の生き物が后押しする、荒唐无稽な物语
漫画制作において、水产学部の経験が活かせたと思う瞬间はありますか。
やっぱり大学で学んだ経験は、科学ネタ的な语りを漫画に入れる时にすごく助かっています。ただ、间违った内容や嘘ばかり描いているので「いつか怒られるんじゃないかな」と少し不安です…(笑)。
例えば『夜桜さん』の第74话で海洋大循环を利用するような説明があります。けどアレも本来、千年単位の现象と习いました。数年で沿岸诸国をくまなく网罗できる海流なんておそらく存在しません。そういったデタラメを本当っぽく妄想して描くのは结构楽しいですね。

确かに、海洋学の授业で习いました。
海洋大循环や春季ブルーム3)のような、温度や塩分、风といった様々な要因によって有机物や栄养塩がぐるぐる巡り、生き物が育まれる。精密で面白い机械の歯车みたいで「地球ってうまくできてるな~」と何となく嬉しくなります。ほかにも以前読み切りで描いた『幻獣医トテク』4)という作品では、游び要素として架空の生き物に学名を付けていました。せっかくなら属名と种小名だけじゃなく、大学で勉强した亜属の概念とかも取り入れたら面白かったかもしれません。
大学で得た知识が漫画での「リアリティ」を生み出しているのですね。
厂贵映画とかでも「空気が无いのに音が闻こえる宇宙」や「水分が多く燃えないはずの畑で大火事」がありますよね。そういう厂贵要素を拙くても自分なりに描きたいです。何より海の中には、鉄の鳞を持つウロコフネタマガイや、ガラス质の骨格をしたカイロウドウケツ、不死と呼ばれるベニクラゲなど漫画みたいな生き物がいっぱいいます。僕の想像力なんかより现実はずっと広くて深い确信があるから、荒唐无稽な架空の物语も臆せずに作れるのかもしれません。
あと『夜桜さん』であった水产らしさは……第39话の水族馆デートが一番それっぽいかもですね。この时はサラサラとネームが进みました(笑)。

ちなみに逆のケースですが、漫画を描く技术が大学で役に立った瞬间もあります。写真は授业であったクロソイの标本スケッチで、漫画を描く技术がこれ以上ないほど活きました。大学の授业では一番楽な时间だったと思います。

権平さんにとって、北大とはどんな场所でしたか。
适切じゃないかもしれませんが、札幌キャンパスは今も昔も大きくて楽しい地元の公园のイメージです。あと东京に引っ越してから様々な博物馆に行きましたが、改めて函馆キャンパスにある水产科学馆の资料の素晴らしさを実感しました。もっと広く知れ渡ってほしいといつも思います。
今でも水产学部时代が懐かしくなった时は、驰辞耻罢耻产别で5)や水产科学院の动画を拝见しています。僕が乗った时の実习船「おしょろ丸」は4代目でした。数キロ先で见たクジラのジャンプは今でも目に焼き付いてますし、海洋深层水に触れた时の痛いくらいの冷たさや、钓りたてのイカで作ったイカそうめんの美味しさも覚えています。最近は「5代目おしょろ丸もかっこいいなー」とか思いながら见てますね(笑)。
最后に、学生に向けメッセージをお愿いします。
この仕事をしていると、他の漫画家さんも编集者さんも个性的で面白い方ばかりですが、大学で出会った学生や教员、関係者の方々も引けを取らないくらい面白い方ばかりでした。きっといい出会いや気づきが沢山あると思います。人生の中で时间や行动の自由度が最も高い时期だと思うので、ぜひ伸び伸びと过ごして下さい。
あと最后に、もしお暇があれば僕の漫画を手に取ってみて顶けると嬉しいです。
编集后记:塩分浓度と塩分の话
「水产の卒业生がジャンプで连载しているらしい」。北大水产の学生间でよく话题にあがる噂话です。実际に権平さんからお话を伺うと「本当に卒业生なんだ」と実感する瞬间が何度もありました。
例えば海洋大循环のくだりで権平さんは「温度や塩分、风といった~~」とお话しています。「塩分浓度」ではなく「塩分」です。
というのも、海洋学において「塩分濃度」は使いません。「塩分」は「塩の濃度」を意味するので、「塩分濃度」だと「塩の濃度の濃度」という意味になってしまうからです。権平さんは半ば無意識でのご返答だったと思いますが、水产学部で学んだことが強く息づいていた瞬間でした。
なお今回の取材は『夜桜さん』连载3周年を迎えたばかりの非常に多忙な时期であったにも関わらず「多くの方々にお世话になったので、少しでもお役に立てるのならば」とご快诺顶きました。
権平さん、改めてありがとうございました!
権平ひつじ
北海道出身。小学生の顷の梦は海洋学者や天文学者。気象予报士に憧れた时期もあり、试験用の教材を购入するも物理が苦手で断念。教材は将来の楽しみとして捨てずに保管している。
2011年に第43回闯鲍惭笔トレジャー新人漫画赏に『滨叠滨厂』を初投稿し佳作を受赏。同年に『少年ジャンプ狈贰齿罢!』にて『チャコの脱狱论』を、翌2012年『机械仕掛けの神父様』を掲载。2013年に読切『こっくり屋ぁい!』で『週刊少年ジャンプ』の本誌掲载デビューを果たす。
2014年3月に北海道大学水产学部を卒业。卒业后も2カ月ほど海藻の研究を手伝うも、その后は漫画制作に専念。2015年に『幻獣医トテク』をジャンプ本誌に掲载,第10回金未来杯にてグランプリを受赏する。2017年には魔界王子の人间界外游コメディ『』(全2巻)でジャンプの本誌连载デビューを果たし、2019年から家族爱を描いたスパイバトルコメディ『夜桜さんちの大作戦』を连载开始。现在も絶賛连载中であり、2022年11月时点で既刊15巻。
趣味は生物标本の収集で、特にカイロウドウケツのアクリル封入标本がお気に入り。在学时には北大の水产科学馆用の展示パネル「北海道昆布分布図」を作成した。水产科学馆によると「现在は展示していないが、仓库に保管している」という。
注
- 『』権平さんの初投稿作。空を飞び子どもを届ける仕事「コウノトリ」と家族爱を描いた作品。第43回闯鲍惭笔トレジャー新人漫画赏で2011年に佳作受赏。
- 『こっくり屋ぁい!』週刊少年ジャンプ2013年12号に掲载した読み切り作品。狐のこっくりさんと不良少年との友情を描いた、ジャンプ本誌への掲载デビュー作品。
- 春になって日差しが强くなり、海面が温められることで起きる植物プランクトンの大増殖。
- 『幻獣医トテク』週刊少年ジャンプ2015年39号に掲载した読み切り作品。第10回ジャンプ金未来杯でグランプリ受赏。架空の生物に学名が付けられており、人狼ならHomo lupus、スライムならAmoeba multus、ドラゴンならDraco deinusと名付けている。
- 北大が提供する海の分野に関するオンライン型の教育プログラム。驰辞耻迟耻产别での动画教材チャンネルのほか、教育システムの惭辞辞诲濒别を用いた别ラーニング教材を公开している。