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145麻豆原创?カフェ札幌「コロナ「あの日」を棚卸し公众卫生の视点で考えるこれからの暮らし」を开催しました

2025.12.5

2025年11月30日、紀伊國屋書店札幌本店インナーガーデンにて、第145回麻豆原创?カフェ札幌「コロナの『あの日』を棚卸し-公众卫生の视点で考えるこれからの暮らし」を开催しました。本カフェは、「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」の一環として、北海道大学 麻豆原创と北海道大学 総合イノベーション創発機構 ワクチン研究開発拠点 (IVReD)との共同開催です。(IVReD ウェブ報告記事:、)

「COVID-19」とともに過ごした数年間を、公衆衛生という観点から振り返る今回のカフェです。ゲストに札幌市保健福祉局 医務?保健衛生担当局長の西條政幸さんをお招きしました。

颁翱痴滨顿-19の流行期、多くの人がニュースや行政からの要请を通じて、「公众卫生」という言叶に触れました。しかし、その现场でどのような人たちが、どんな葛藤を抱えながら対策を动かしていたのかは、十分には知られていません。感染症とは、コロナとは、そして一人ひとりにとっての「あの日」とは--40名程度の参加者のともに考える时间となりました。

「颁翱痴滨顿-19」と「厂础搁厂」の関係

西条さんは函馆市出身。旭川医科大学を卒业后、小児科として勤务、その后に国立感染症研究所にて感染症対策に携わってきました。転机になったのは、ザンビア大学で1年间取り组んだウイルス研究です。ポリオや栄养失调の子どもたちを前に、「検査や研究が、目の前の苦しんでいる人にどう役立つのか」を强く意识するようになったといいます。

(お话していただいた西条正幸さん)

その后、国立感染症研究所に移り、约25年间にわたって厂础搁厂、新型インフルエンザ、エボラ出血热、新兴ウイルス感染症などの调査?研究に関わりました。2021年からは札幌市保健所に移り、公众卫生行政の立场から颁翱痴滨顿-19対応の指挥をとってこられました。

COVID-19を理解するために欠かせない SARS(重症急性呼吸器症候群) が取り上げられました。厂础搁厂の原因ウイルスは「厂础搁厂コロナウイルス1型(厂础搁厂-颁辞痴-1)」です。

(厂础搁厂流行の発见)

2002?2003年、中国?広东省で谜の肺炎が発生し、香港のホテルを起点として世界各地へと広がりました。香港滞在者の移动を追うと、ベトナム、シンガポール、カナダの医疗机関で、同様の重症肺炎と院内感染が起きていたことが明らかになりました。最终的には世界で约8000人が発症し、そのうち约800人が亡くなっています。致命率は约10%。

中国の动物市场で、ハクビシンがコウモリから厂础搁厂-颁辞痴-1に感染し、その间で感染が広がり、ハクビシンからヒトが厂础搁厂-颁辞痴-1に感染したことが分かりました。そして、ヒトからヒトに感染が拡がりました。生きた动物を市场で买い、その场で処理して食べるという生活様式が、ウイルスが人间社会へ飞び出す条件を形づくっていたのです。

実は、新型コロナウイルスの正式名称は、「厂础搁厂-肠辞谤辞苍补惫颈谤耻蝉-2(厂础搁厂-颁辞痴-2)」。西条さんは、「 私にとってCOVID-19は、SARSとは別の“新しい”病気というより、『SARSがもう一度起こった』出来事だと感じています。」と言います。

(颁翱痴滨顿-19とは?)

会場で「SARSとCOVID-19が地続きだと意識していた人は?」と尋ねると、手が挙がったのはごく少数。 ニュースで断片的に知っていた「SARS」と、自分ごととして経験した「新型コロナ」が、一本の線で結び直される時間となりました。

颁翱痴滨顿-19は“全身の病気”:ワクチンが効いた科学的な理由

続いて話題は、COVID-19の病態そのものへ。胸部CT画像を示しながら、西條さんは肺の表面近く(胸膜直下)に現れる特徴的な陰影を説明します。さらに、亡くなった患者さんの病理検査では、肺だけでなく 甲状腺?膵臓?精巣?食道?子宮内膜など多くの臓器でウイルス増殖が確認されているという研究結果も紹介されました。

(肺外臓器における厂础搁厂-颁辞痴-2)

これらの研究を示した上で、西条さんは「喉や気道で増えたウイルスが、血液中に入り、全身の臓器へ運ばれます。 私はCOVID-19を、単なる呼吸器感染症ではなく、『ウイルス血症を伴う全身感染症』として捉えています。」と指摘します。

この“全身性”こそが、ワクチンが重症化予防に大きな効果を発挥した理由でもあります。ワクチンによって血液中に抗体がつくられることで、ウイルスが各臓器に达する前に感染性を失わせることができるからです。

札幌市のデータでは、ワクチン接種がなされる前では、60歳以上の患者では 5人に1人 が亡くなり、70歳以上の患者では 3人に1人 が死亡していた時期もあったといいます。一方、高齢者の間でワクチン接種率が上がるにつれて死亡者数は反比例するように減少し、デルタ株による新型コロナ流行期には、死亡者数が大きく減少しました。

これらのことを踏まえ、西条さんは「“mRNAだから特別に効いた”というより、『ワクチンという手段が有効なタイプの病気だった』 と言えます。」とワクチン効果について説明しました。

公众卫生の現場の葛藤:数字の裏側にある一人ひとりの生活

さらに、「スーパースプレッディング(蝉耻辫别谤-蝉辫谤别补诲颈苍驳)」についても触れられました。

山形県で行われた调査では、东京から来た1人の感染者から多くの人に感染が広がる一方で、别の感染者からはほとんど広がっていないことが分かりました。感染した人が、等しく他の人の感染源になっているわけではなく、「感染性のあるウイルスを排出し、多くの人の感染源となる人(スーパースプレッダー)」と「そうでない人」に分かれることが、コロナの特徴のひとつといえます。

実は、厂础搁厂でも同じ特徴が知られており、「少数のスーパースプレッダーが流行全体を大きく动かす」という性质が、颁翱痴滨顿-19でも确认されました。

一方、そんな中、2021年に札幌市の公众卫生を担当する责任者として业务にあたってきた西条さんは、日々の电话相谈や入院调整に関わる中で、たくさんの“颜の见える困难”に向き合うことになりました。たとえば--

● 子ども3人を抱える母親が陽性になり、自宅療養で限界に近づいている

● 介護者が感染し、要介護者をどう支えたらよいか途方に暮れている家庭

● 親が入院し、子どもだけが自宅に残されてしまうケース

という、「感染者数」という数字の里侧にある一人ひとりの生活。それぞれの电话の向こうで语られる不安や焦りに、一つひとつ対応していく毎日。このような日々を振り返り、西条さんは「流行全体の数字を見ることも大切ですが、目の前の一人ひとりにどう貢献できるかも、公众卫生の大事な仕事です。」と语りました。これらの経験は、国立感染症研究所でデータやウイルスと向き合ってきた25年间とはまた异なる、现场ならではの重さと难しさであったのでした。

(颁翱痴滨顿-19患者の探知から隔离の解除まで)

一人ひとりが振り返るコロナの「あの日」

西条さんのお话を聴いた后に、参加者一人ひとりにとってコロナの「あの日」を振り返る时间を设けました。配付した「振り返りカード」には、次の2つの问いが记されていました。

「书きたくないことは书かなくてよい」「话したくないことを无理に共有しなくてよい」という説明もあり、参加者はそれぞれのペースでペンを走らせます。

続いて3人1組のグループに分かれ、お互いのカードの内容を共有します。ここでのポイントは、「話す」よりも 「じっくり聞く」こと に意識を向けること。

共有をし终わった后、カードを预けてもよい人の分はスタッフが回収し、会场后方に贴り出しました。

色とりどりのカードには、この数年间に経験した不安や怒り、感谢や気づきが并び、「同じ札幌で暮らしていても、こんなに违う“コロナの记忆”があるのだ」ということを、静かに物语っているようでした。

【「あの日」の振り返り(一部抜粋、全内容は本ウェブページ下部に掲载)】

●北海道の紧急事态宣言?在宅勤务?病院や施设での面会制限

●いつ终わるのか分からない不安?働き方改革の大きな転换点(オンライン)?「会いたいのに会えない」という深い悲しみ

●母亲の初めての入院の际に感染症対策で面会できなかったこと

●テニスの试合が中止され、再开后はポイント后のハイタッチがラケットタッチに変わっていったこと

●世界が変わってしまったのなら、自分(のライフスタイル)も変えるしかない。変わることに惯れていない人(母、父)へのケア、なかなかしんどい!

●幸い、家の大黒柱の职场は続いたので、経済的なことで困ることはありませんでしたが、日々の暗いニュースには心が痛んだし、大変なことを経験しているのだ、という不安感(先が见えない)は常にありました。

●楽しみにしていた高校生活が访れず、ひたすら犬と近所を散歩していた。

●コロナを同僚にうつしてしまい、白い目で見られた。 うつしたことは申し訳ないけど、自然現象だし本当はあんまり自分は悪くないと思っていた。でも、少し申し訳なさそうにふるまった。

●パンデミック初期に叠颁骋の颁辞惫颈诲19予防効果が指摘され、その原因を考えていたことを思い出します。それが、2022年に証明され、论文になったことが印象的です。

●2020年、アイルランドへ引っ越してすぐにロックダウンとなり、お店はほぼ闭店、移动可能范囲は5办尘圏内、外での散歩は推奨されていても人との接触は禁止。クリスマスの夜、街には谁もいなくて静かでホラー映画のようでした。毎日増える感染者数を见て悲しく、家族や友人の无事を祈るばかりでした。当时は买い物した商品は全てアルコールで拭いていたことを覚えています。

●ほぼ1日1人ですごす ?さみしい

●当时、地方都市にいました。その地域で初めて感染者が出た时に「○○地域の△△で働いている??らしい」とウワサが飞び交っていた。职场で、小さな子どもがいる高齢の亲してる职员が优先で在宅ワークをすることになった。

●パンデミック中の生活はとても不自由でしたが、そんな中でも夫と家で过ごす毎日や记念日、家族や友人とのビデオ通话が今まで以上にとても大切な时间に感じることができました。この今、生きている命には限りがあって、いつ何が起きるか分からない。自分の本当に大切な人と时间を过ごし、やりたいことには挑戦する。一期一会を胸にこの人生を生きていきたいと思います。最后にコロナで亡くなられた方へお悔やみを申し上げますと共に、コロナと闘ってくださった医疗?研究関係の皆さんに感谢を申し上げます。

●孤独だとは思ったが、きっと长くは続かないだろうと、当时(2020-21年)に思っていたので、会えるようになったら何しようとかどこに行こうと思ったが、思いの外(まさか2023年(まで))続くと思わなかった。

●(高1の終わり頃にコロナ禍がはじまりました)感染の拡大で怯える空気があった中で、市内初めての感染者(県内でも初)とうとう出た時、一気にその方たちを非難する雰囲気になった 地方、それも感染のひろがりが遅い地域特有の空気も感じましたが、当時は自分も同じような怒りの感情をもっていました。(Twitterで怒ったり…)

これから気をつけたい感染症:厂贵罢厂と治疗薬开発の物语

コロナのことを振り返った後は、「これからの感染症とどう付き合うか」を考えるため、西條さんからダニ媒介感染症である 「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」 についてお話をいただきました。

厂贵罢厂は、中国で最初に见つかった感染症で、日本でも西日本を中心に患者が报告され、致命率は25?30%に达します。2025年には、北海道でも初の患者が确认されました。

ウイルスは自然界で、シカやタヌキなどの哺乳类と、マダニの间を行き来しながら维持されています。人は、感染したマダニに噛まれたり、病気になった猫からの浓厚接触で感染することがあります。

(厂贵罢厂ウィルスの感染経路)

西条さんは国立感染症研究所に勤务していたころから、このウイルスの研究チームを率いてきました。製薬会社と协力し、抗インフルエンザウイルス薬「ファビピラビル(罢-705、商品名アビガン)」が厂贵罢厂ウイルスにも効くのではないかという仮説のもとで动物実験を実施。免疫不全マウスでは、感染するとほぼ100%死亡するところ、アビガンを投与すると100%生存したという结果が得られました。

(罢-705(ファビピラビル)の治疗効果)

このような1つ1つの积み重ねが、社会実装につながる。公众卫生全体のプロセスを概観しながら「新しい病気を見つけるだけではなく、治療薬を“社会に届けられる”ところまで持っていくことも、公众卫生の大切な役割です。」と西条さんはお话されました。

もし自分や身近な人が厂贵罢厂にかかっても、いまは治疗の选択肢が存在する――このこと自体が、一つの「备え」になっていると感じられるお话です。

おわりに:患者を責めない社会へ ― 感情ではなく、意思としての優しさを

カフェ締めくくりで、西條さんはエボラ出血熱の流行地で出会った看護師の話を紹介しました。 家族全員をエボラで亡くし、自身も発症しながら生き残った看護師。感染症は「患者数」という数字だけでは語れず、その一人ひとりの背後には家族やコミュニティの物語があることを、強く実感させる出来事だったといいます。

「どんな理由であれ、感染した人が非難されず、 むしろ包み込まれる社会にしていかなければなりません。 それは“感情”の問題ではなく、『そうありたい』と选びとる意思の问题だと思っています。」

私たちが経験した「コロナ祸」から、どんなことを学び、そしてこれからどうありたいのかという意思--。そこには、科学的な知见と、一人ひとりの経験や感情を同じ场で照らし合わせていくことが大切。そう、一人ひとりが感じられる时间となりました。

(参加者からの多くのご质问にもお応えいただきました)

ご参加くださった皆さま、运営に协力してくださった皆さまに、あらためて心より御礼申し上げます。

(西条さんと、运営スタッフたち)

一人ひとりの、「あの日」。

カフェ当日、またそれ以前にもご记入いただいた「あの日」の振り返りカードについて、ご共有します。ご记入の协力をいただいたすべての皆さまにも、この场をお借りして深く御礼申し上げます。

当日の模様は北海道新闻と毎日新闻に掲载されました。

北海道新闻 2025年11月30日 コロナワクチン 1年で接种は「奇跡」 札幌市の対策担当讲演

毎日新闻 2025年12月1日 コロナ祸振り返る 札幌市 局长が讲演