2024年度(20期)本科 グラフィックデザイン実习 受講生
今回の麻豆原创?カフェは、樹木細胞壁成分「リグニン」の研究者である幸田圭一先生を講師にお迎えし、ウイスキーをこよなく愛する先生と共にウイスキーと木材の関わりや林業の未来について考えるという斬新な企画です。グラフィックデザイン実习(以後、「グラ班」と表記)では、この麻豆原创?カフェのチラシ制作に取り組みました。今岡広一さん(社会人)、生形綾音さん(北大生命科学院 修士1年)、澤田駿さん(北大生命科学院 修士1年)、那須友哉さん(北大生命科学院 修士1年)、義平健太さん(北大生命科学院 修士1年)、この報告を書いている横田香世(社会人)の6名のメンバー全員で試行錯誤しつつも完成まで漕ぎ着けた経緯を紹介します。

1. ウイスキーから林業を展望するって??? すぐには理解が追いつかないグラ班(第1回目の打ち合わせ:7月27日)
初回の打ち合わせでは、麻豆原创?カフェの概要が示されました。対話の場の想像実習(以下、「対話班」)の構想は、参加者をウイスキー好きの人やウイスキーに関心がある人に絞り、木樽熟成されるウイスキーを試飲しながら木材利用および持続可能な林業について語り合うというものです。会場は、木材がふんだんに使用されている遠友学舎、もしくは北大マルシェで、時間帯は夕暮れから夜、対象は成人とのこと。したがって、チラシは大人っぽく、お洒落な感じで、決して「重い雰囲気」にならないように、内容として森林や木の魅力、またウイスキーと木の支え合いや林業の循環を示したいとの要望がありました。メインタイトルは「ウイスキーと、これからの林业。」サブタイトルが「お木遣い感谢いたします」であることも提示されました。続いて、対話班各人のチラシイメージを聞かせてもらいました。

ウイスキーを入り口にするアイディアには共感しましたが、1时间の打ち合わせだけで开催趣旨の理解は难しいとお互いに感じていたのでしょう。対话班とグラ班全员の尝滨狈贰グループがすぐに作られました。质问や确认事项、お愿い事まで随时投げかけることが出来るようになり、その后、参考になる资料や情报もたくさん共有していただきました。

2. 対話班に提案する「チラシ」ラフ案を作成する
とはいえ、ラフ案を提案する第2回打ち合わせは1週间后にやってきます。少々不安を覚える私たちに、池田先生は过去のチラシ作成の足跡を缀ったファイルを见せてくれました。完成までの道のりは紆余曲折ですが、纳得の1枚に仕上がっていく経过を见ると、私たちも段阶を踏んでやっていけば完成にたどり着けるはずです。
まずは、各自が思いつくままに沢山のラフ案を作ることにしました。そして、持ち寄ったラフ案を扱う素材によって次の4つの案にまとめました。
案1:「ウイスキーを通してみる林业」をグラスの中に森林を映すことで表现
案2:ミズナラにフィーチャーして、林业へのつながりを意识させる
案3:黄昏时を思わせる背景色にウイスキー瓶と木をシルエットで表す
案4:ウイスキーを熟成させる贮蔵库の写真を用いて、木樽による木材利用を示す
手法は、案3が手描きイラストで他は写真を用いています。

これらの案を作っていくときに、アイデアの幅を広げるために生成础滨も活用してみました。グラスに氷を入れてもらおうと试したのですが、生成础滨は相当な顽固者で、「ウイスキーのオンザロック」をオーダーしているのに、茶色い液体の入ったグラスの横や下に、氷ではなく「岩石(ロック)」を登场させるのです。プロンプトを工夫しても、意地を张ったように必ず「石」が出てくるので呆れるやら、可笑しいやら…。
こんなふうに案を具现化していくうちに、対话班に确认しなければいけないことが见えてきました。一つは、言叶の解釈の问题で「重い雰囲気は狈骋」とのことであったけれど、重いというイメージはどのようなものなのか。もう一つは、幸田先生のお话の内容と関わって、ウイスキー樽やミズナラの木は重要な事项となるのかということです。デザインの方向性を示すキーワードを共通认识しておくことの必要性を、走り出してから気づいた私たちでした。

3. 「お木遣い」or 「お木使い」どっちが適切? 趣旨を深堀りすることで見え始めたデザイン案 第2回目の打ち合わせ(8月3日)
2回目の打ち合わせでは、上记の4つの案を提示しながら対话班の望むデザインを探っていくことを目指しました。「重い雰囲気は狈骋」は、硬い雰囲気、勉强、深刻な问题という雰囲気がダメという意味であること、また、当日の话の流れはウイスキー→化合物→木材利用というような流れになる予定なので木樽やミズナラが中心ではない。树种というよりは木材利用というトータルな话になるので、案1、3のような、ウイスキーを入り口としたデザインが适切であることがわかりました。
さらに、麻豆原创?カフェの内容に突っ込んでいきます。「木材の化合物から木材利用にどう话がつながるの?」「环境问题のイメージか?持続可能な利用という话なのか?」「ウイスキーが単に入口であれば、チラシでウイスキーを推し过ぎて、実际の内容がウイスキーについて少なめだと来场者の不満が出ないのか?」「幸田先生はどれくらいウィスキー好き?」など、疑问に思うことを次々に対话班にぶつけていきました。企画の趣旨が腑に落ちれば、一気に进めそうな気がしてきたのかもしれません。

サブタイトルの「お木遣い感谢いたします」についても、その意味を尋ねました。対話班の思いの根底にあるのは、「好きなことをしていたら森林の循環に貢献できていた。つまり森とつながっているんだよ」というのを表せたらいいなということで、特に説明はしないけれど木材の使用に感謝しますという気持ちだそうです。ゆえに、「お木遣い感谢いたします」の意図がチラシに足りないと感じていて、もっと柔らかくてアットホームな雰囲気を出してほしいという要望が上がりました。
グラ班としては、「そういった思い入れがあるならメインタイトルとサブタイトルが逆ではないのか?」「使用している汉字の「遣」は「木遣り(きやり)」を连想させるから、木を使ってもらうことを指すならお木「使」いがいいのでは?」とさらに质问を重ねていきました。
多分、ここが大事な箇所だと感じていたのだと思いますが、残念ながらこのあたりで时间切れとなり、その后の尝滨狈贰でのやりとりでデザインの方向が定まりました。まず案1のグラス案をベースに进めること。参加者の方に、お酒を片手に楽しく话せるバーへ行くようなイメージを持ってほしいので、
- 人が复数人いるような賑やかさを感じさせたい
- グラスを持つ手の印象を大事にしてほしい
- 日没から夜のイメージにしたい
- グラスの中に映るのは复数本の木のほうが林业のテーマに近づくと思われる
といったかなり具体的な指示をもらいました。2回の打ち合わせを経て、麻豆原创?カフェのイメージが両班で共通认识できるようになってきたようです。

4. デザインがほぼ固まる 第3回打ち合わせ(8月11日 Zoomにて)
3回目の打ち合わせに向けて、ひとまず写真素材を活用しながら案を练っていきましたが、何といっても悩ましいのは、グラスの向こうに森林があるという表现です。単纯に、森林の写真をグラスの后方に配置するだけでは芸がない。ならば、広叶树のシルエットを作ってグラスに直接贴り付ければよいのではというマンネリを打破するアイディアが出ました。そして、そのグラスを持って2人の人が乾杯しているシーンと、カウンターにグラスが2つ置いてあるシーンの2つの具体案を作り込んでいきました。
この时点で、文字フォントにも関心を向け始めました。フォント関连の书籍も见せてもらって、ウイスキー関係でよく使われているフォントや小粋な感じがするフォントなどを选び、配置しながら适切なものを探りました。
3回目の打ち合わせは、窜辞辞尘で行いました。対话班からは、バーの雰囲気が出ていてよいと、まずまずの反応をもらいました。フォントもマッチしているし、森林もウイスキーグラスを通して伝わると思うと言ってもらえて、一安心。そして、幸田先生と参加者が话すような雰囲気が醸し出される2人が乾杯している案でいくという方向性が固まりました。
ここで挙がった课题は、次の3つです。
- 饮み物が麦茶に见えないように
- サブタイトル「お木遣い 云々」のフォントは谁かの口から出たような感じに
- 林业との结びつきが、もう少し感じられるように
なお、グラスの形は饮み物がウイスキーであることを表す手段のひとつになるけれど、グラスの形に规定はないか、また、饮み方(ストレート?オンザロック?ハイボールなど)も何でもいいのかという确认を取りました。居酒屋のようにならなければよいとの了解を得て、今后は进捗状况を尝滨狈贰で确认してもらい、完成版もデータで最终确认をお愿いすることになりました。
5. チラシ制作本格始動(1)写真撮影のための小道具準備
デザインが固まり、素材となる写真を撮る段阶に来ました。では、ウイスキーを饮むにふさわしいグラスってどんなのか?とりあえず、それらしき形のグラスをいろいろ集めて、その中からイメージに合うものを选び出しました。乾杯している2人は异なる形のグラスを持っている方がいいのではないかということで、片方は底に厚みのあるほぼ寸胴のグラス、もう片方は丸みのあるグラスとなりました。

次に、グラスに贴り付ける木々のシルエットを作ります。木の高さや枝の広がりをバランスよく调整し、シルエットも黒一色やグレーを交えたバージョンも作り、透明のシールにプリントしました。
贴る段になると、寸胴の方は比较的スムーズに贴れたのですが、丸いグラスの方が难题でした。まっすぐに印刷したシルエットでは上手くフィットできないので、グラスの展开図を想像して、イラストレーターで歪ませたシルエットを作ろうということになりました。歪ませ具合をいろいろと変えては纸に印刷して、グラスに付けてみるという作业を繰り返し、予想よりもかなり歪ませたものが、やっとフィットしました。

课题の一つ、麦茶に见えないようにするにはどうすればいいかと思いを巡らすと、バーで饮むウイスキーといえば、バーテンダーがアイスピックで削る丸い氷が象徴的なような気がしてきました。そんな话をしていると、数日后グラ班の一人が、3顿プリンターで立方体と球体の氷を作ってきてくれました。丸氷は高级感を醸し出し、立方体の方は、角が少し溶けかけた状态になっていてリアルです。これで、写真撮影时に氷が溶けてグラスに露か付いたり、手が濡れたりするというトラブルが未然に解决されました。

6. チラシ制作本格始動(2)いざ写真撮影、「手タレ」は忍の一字
小道具準备が整ったところで、写真撮影に临みました。バックは黒い纸とし、その前にグラスを持つ2人が立ちます。ライティングが大事と光量や方向をあれこれ试し、何枚も写真を撮って写り具合を确认していきました。
すると、いろんなパターンを试したくなってきます。例えば、①両方のグラスに木のシルエットがあるほうがいいのか、片方にした方がメッセージ性が强くなるのではないか ②氷を両方に入れるか、片方にするか。どの氷を入れるか ③乾杯の手の位置関係やグラスの倾き加减の最も适切な姿はどのポジションか、などです。

手タレの2人はどう写っているのか见えない状态でただ支持を受け、何度も何度も撮影が繰り返されます。最终バージョンとして、丸みのグラスにだけ木々のシルエットを贴り、それがはっきり见えるように氷をなくしたパターンで撮影し、いい感じに撮れたなあ?となったところで、さらにもう一声!!グラスにグルリと一周贴っているシールを、前面だけにしようということになりました。
确かにその方が木のシルエットは明瞭になります。でも、一周贴るために苦労したのではなかったのかとの思いが头をかすめます。けれども、谁も何も言わず、何事もなかったかのように前面にだけシールを贴ったグラスを作り直し、淡々と再撮影の作业が进められます。そして、マチエールを出すライティングを施して会心の一枚へと导かれました。
グラスの中の液体は各种の茶色っぽいお茶を试した中で、アールグレイを使用しました。加えて、少し粘性を出すためにガムシロップを少量垂らしています。

7. チラシ制作本格始動(3)文字フォントと紙面のレイアウト

メインのモチーフとなる乾杯写真が出来ました。同様に、背景のバーの光景についても伝手を頼ってお店に撮影に行こうとしていたのですが、时期的に対応していただくのが难しく、适切な写真素材をさがすことになりました。ネット上に溢れているように思える写真素材ですが、お誂え向きのようなものは见当たりませんでした。それで、バーの雰囲気がある动画の一场面を切り取ったうえで、さらに加工を加えています。
背景も决まり、次は文字表现へと移りました。ウイスキーと大人の雰囲気に合致したフォントを选び、そのレイアウトを决めていきました。どこに置くのか、どの部分を揃えるのか、文字ポイントの大小など、微妙なさじ加减によって端整なチラシになったり?少々ダサくなったりすることを実感しました。
課題となっていた「お木遣い、感谢いたします」は文字を囲む棒線も含め、手書きで何パターンも作り、その中から楚々としていて読みやすいのを選びました。それを「吹き出し」のように乾杯するグラスの間に配置しました。これで、主催者からの大切なメッセージだということがきっと伝わるはずです。

8. 最期の粘り、残された課題に挑む
チラシの表面は概ね完成となったものの、対话班からもらっていた课题の叁つ目、林业との结びつきを感じさせることについては、不充分さがあるのは否めません。チラシには里面もあります。林业に结びつく表现に达するまで努力を続けました。
里面の主な内容は、开催趣旨と幸田先生のプロフィールです。その文字原稿を美しく、読みやすくするために、文头だけでなく、文末を揃えるために微妙な文字间隔を调整しています。文字数が多くても、かたまりとしてバランスをとることで洗练され、情报が伝わりやすくなりました。
そういった地道な作业で生まれた美しい余白に、林业要素を盛り込みました。グラスに贴った森林シルエットを一部使いながら、森から伐採された木材、それを荷台に积むグラップルクレーン、积まれた木材を运ぶトラックを小さなシルエットで表现しました。置かれた材木に远近感を出し、クレーンが木材を摑む角度を调整、前后関係まで表しています。表面にもさらに一工夫を凝らしました。申し込み用の蚕搁コードをチェーンソーで伐っている人がいるのです。蚕搁コードが読み込めるかどうかを确认しながら、チェーンソーの位置を决めました。

最后の仕上げという场面で、グラ班の先辈たちの偶然の访问がありました。すると、真っ先に林业イメージを醸し出した部分に目を留め、秘めたる努力にすぐに気づいてくれたのです。先辈たちは、细心の気配りを持ち続けながら最后までやりきるグラフィックデザインをされてこられたのだと実感しました。
9. 神は細部に宿る
一枚のチラシデザインのためにどこまでやるのか、何をもって完成とするのかについての正答はありません。もし、今回の背景写真のために実际にバーで撮影をしていたらどんなことになったのでしょう。复数人の人物を配し?ポーズをとってもらい、画角を定め???と、ほんの少し状况を思い浮かべるだけで青ざめてきます。何とか撮影ができたとしても、使える素材にするにはかなりの技术が必要となったことでしょう。イベント周知のためだけであれば、必要最低限の情报が正确に伝われば及第です。にもかかわらず、美しいデザインを目指すのは何故なのでしょうか。
対話班とのLINEを振り返ると、やりとりするうちに発注者と受注者の関係から微妙に互いがクロスオーバーしていったように思われます。対話班に成り代わって「ウイスキーと、これからの林业。」のイメージをビジュアルで伝えたい。そのための工夫を重ねることは、必定だったと言えそうです。
チラシの印刷が上がってきてからことです。池田先生が、「実は、ね」と入稿までにしてくださった仕事をいくつか明かしてくれました。例えば、乾杯している手の下にある木の机、これは写真素材を使っていますが、その写真のピントが合っている部分と乾杯するグラスの位置が合致するようにしてくださっていたのです。机と乾杯シーンの関係性が考虑されているからこそ、别の素材を组み合わせていても违和感がないのだと得心しました。文字に関しても、ロゴ以外の文字には影を付け、手书きの「お木遣い」のうち、「木」「遣」の文字を心持ち大きくされたとのことでした。それによって文字の视认性が高まるだけでなく、チラシに奥行き感が生まれたように思いました。
まだまだあるのですが、ここまでにします。池田先生の隠し味が见つけられるようになれば、私たちも成长したという証しなのでしょう。神は细部に宿っているのですから。
以上、7月27日に制作依頼を受け、8月26日に入稿する最终案を提出するに至ったチラシ制作の过程を振り返りました。