2012年1月21日(土)に开催した第61回麻豆原创?カフェ札幌 『「くすり」よ届け。?ナノサイズ船细胞の宇宙を行く?』は、たくさんの方にご来场いただきました。(当日のカフェレポートは)
当日は50を超える质问をお寄せいただきましたが、短い时间内では十分にお答えすることができませんでした。质问件数の多かったものを中心に、秋田先生にお答えいただきました。
_________________________________________
■「くすり」の働きに関する质问
Q1:くすりはどのような形で体内に取り込まれるのですか?(カプセルとか点滴とか)
皆さんがよく使われている薬の多くは口から饮む薬が多いと思いますが(経口投与)、遗伝子を「くすり」として用いる场合、临床试験などで行われている投与方法の多くは、筋肉などの局所に直接投与するものや、生体内から细胞を取り出して、试験管内で遗伝子を导入し、その细胞を体の中に戻す方法などがあげられます。私たちも、これらの投与経路を想定して実用化などをめざしていますが、さらに将来を见据え、注射によって血液中に投与する方法(静脉内投与)にも研究を进めています。カフェでは、船を细胞内にいれて、どうやって核まで运ぶか?というお话をしました。血液から投与した场合を考えると、その前段阶として、どうやったら「くすり」を运ぶ船を血液中に安定に存在させることができるか。また、どうやって患部に届けるか(标的化するか)?というような、さらなる课题も克服することが必要になります。この技术は困难ですが、なんとか革新的な技术を创製したいと、日々研究を続けています。
Q2.膜融合はどういう仕组みで起きるのでしょうか? またそのトリガーは?
膜というのは、厳密にいうと、脂质と呼ばれるものからできています。脂质は、その一つの分子の中に水に溶けやすい部分と溶けにくい部分を持つ分子で、これらの领域の空间的な大きさ(かさだかさ)などで、膜融合性が起きやすい、起きにくいなどが决まっています。ただ、厳密に、细胞膜や核膜など、どのような脂质が融合しやすいのか?という问いに関しまして、その理论や法则性に関しては、答えがまだありません。
トリガーという点に関しては、先日のカフェではお伝えできませんでしたが、细胞の中の环境を利用して融合活性のオン、オフを制御しています。具体的には、细胞の中の局所的な酸性度を利用しています。遗伝子を运ぶ船は、细胞の中に小胞に取り込まれる形で侵入しますが、小胞の中は酸性(贬+イオンが多い环境)になっています。この环境をうまく利用すれば、小胞の中に入ってからはじめて膜融合活性が高まる设计ができるようになります。
Q3.核内に入った遗伝子は染色体や遗伝子にどのように取り込まれ、どのように働くのですか?
遗伝子が机能するためには、船が核に到达した细胞の力を借りる必要があります。遗伝子が机能するということは、送り込んだ遗伝子に书かれたタンパク质の设计図が正しく読まれ、最终的にはタンパク质ができるということです。
送り込む遗伝子は、顿狈础とよばれるものですが、タンパク质ができるまでには、まず细胞内の核内にある転写因子とよばれるたんぱく质(これは、细胞の中にあります)が结合し、メッセンジャー搁狈础(尘搁狈础)という中间体分子に情报が写しとられます(これを転写といいます)。この尘搁狈础は、核から细胞质のほうに输送され、この尘搁狈础情报に基づいて细胞质でタンパク质が作られます(この过程は翻訳といいます)。このように、核内の遗伝子から尘搁狈础に転写され、またタンパク质まで翻訳される过程は「セントラルドグマ」と呼ばれています。生物学をこれから学ぶ方々は一番初めに习うと思いますので、参考にしていただければと思います。
Q4.このくすりを使うことにより想定される弊害はありますか?
私たちが作る船は、极力人工的な材料をもちいて、ウイルス由来のものはなるべく持たないように设计したいと考えています。これは、ウイルスの持つ免疫原性を回避するための设计です。ただ、场合によっては、设计した材料が何らかの毒性をしめす可能性もありますので、材料の安全性は、慎重に调べる必要があります。
また、遗伝子を「くすり」として使う上では、送った遗伝子が、もともと私たちのもつ遗伝子(染色体遗伝子)の中に组み込まれる场合も想定されます。染色体顿狈础の中に挿入されると、染色体ごと导入した遗伝子が复製されていきますので、细胞の分裂とともに长期にわたって导入した遗伝子が维持されていくという长所があります。しかし、遗伝子がよくない部分に挿入されてしまった场合、思わぬ毒性を示してしまう可能性もあります。ゲノム遗伝子の中に外来の送り込んだ遗伝子を组み込むべきか、それとも组み込まないほうが良いのか。対象とする疾患にもよりますので、どちらが良いかという点もはっきりした答えは出ていません。今、両方の観点から世界中で开発がすすめられています。私たちの研究室では、基本的にゲノム遗伝子の中には组み込まない方向で研究を进めています。
Q5.抗ガン剤との併用、免疫细胞疗法とのちがいは?
癌を遗伝子治疗で克服することを想定したとき、抗がん剤やサイトカイン製剤などの既存の薬との併用は有用だと思います。実际、动物実験でも、両者の併用で肿疡の増殖がより强く抑えられるという研究报告は多くあります。
また、今回のカフェの最后に、顿狈础ワクチンのお话もさせていただきました。今の免疫细胞疗法(タンパクワクチン)との大きな违いは重要なポイントです。肿疡の抗原は、个々の患者さんによって个性があります。また、よく新型インフルエンザなどという言叶も耳にすることもあるかと思いますが、ウイルスの抗原は高い频度で変异してしまいます。これまでのタンパクワクチンは、タンパクの合成、精製に多くの手间と时间を要するために、変异の高いウイルス抗原や、多様性のある肿疡抗原に対応するのが困难です。顿狈础ワクチンは、导入する遗伝子の情报を変えるだけで、原理的にはこれらの抗原に素早く対応可能という点で、次世代のワクチンとして期待されています。
■「くすり」の作り方について
Q6.具体的には船はどうやって作るのですか?
现在、いろいろな原理に基づいて多重膜のものから、1枚膜のもの、さらには、2种の膜でコーティングされたものなどが开発されています。基本的な原理は、プラスイオンとマイナスイオンの间の静电的な相互作用に基づいています。遗伝子はマイナスのイオンを帯びている长い锁状の分子です。ここに、プラスのイオンを帯びた别の长い分子を混ぜると、プラスとマイナスの电気がひきつけあい、さらに、両者がお互い纽同士が络まるようにして、小さな粒子ができます。この粒子の表面も、プラス、あるいは、マイナスの电荷を帯びています。この粒子を、反対のイオンを持つ脂质の膜の上に入れ、超音波などで力を与えることで、膜と粒子が引き付けあいながら、粒子を膜で包み込むことが可能となります。
Q7.ひとつの船にはどれくらいの遗伝子が入っているのですか?
遗伝子が船の中にいくつ入っているかを测定するということは非常に难しい技术になりますので、明确な答えは持っていません。ただ、やはり粒子の中にもいくつもの遗伝子が入っているのではないかと考えています。ある粒子の中には2つ入っていて、别の粒子には3つ入っているなどの状况が起きてしまうと、粒子の大きさも不均一になってしまいます。そこで、遗伝子は1粒子に1つずつ均一に封入することができれば、粒子の均一性を高めるためにも重要と考えています。私たちは、いかにして一遗伝子ずつ粒子にくるむかという技术开発も进めています。
Q8.船の膜を増やすことでコストが上がったりしませんか?
膜を形成するために必要な脂质という分子自身、それほどコストはかかりません。ただ、多重化などの操作が复雑になればなるほど、そのための时间などは多くかかってしまうと思います。いかに大量に、さらになるべくシンプルかつ均一につくるかという点は、今の研究室レベルから実用化研究へ発展させるためのプロセスとして重要と思います。
Q9.膜のプラスの物质とはなんですか?
私たちの体を形成するタンパク质は、アミノ酸というものが连なってできています。アミノ酸にもいろいろ种类があり、アルギニンやリジンなどは、プラスのイオンを有するアミノ酸です。このアミノ酸をいくつかつなげた短い锁などを粒子の表面に修饰することによって、表面をプラスにすることができます。
■薬学一般について
Q10.薬学部を志望する高校生で、物理化学で受験した生徒は、生物を履修していなくても大丈夫でしょうか?
北海道大学のオープンキャンパスに来られた高校生や父母の方々からも同じような质问を何度かされたことがあります。御质问に端的に答えると、履修していなくても大丈夫です。私も高校では物理でしたが、大学から生物を勉强しても十分だとおもいます。それだけ、今では新闻などでも多く生物の话题にあふれています。勉强していて、闻いたことがあるという言叶も多いと思いますので、比较的早くなじめるのではないでしょうか。
Q11.40年前の薬学のイメージと全く违う。新薬开発の现状について教えてください(世界的に头打ちと闻いたが???)。
歴史を紐解くと、1805年、ドイツの薬剤師ゼルチュルナーが初めて阿片からモルヒネの抽出?結晶化に成功したことから、薬の歴史は大きく動きました。その後、この19世紀は有機化学が発展し、合成された有機化合物を医薬へと利用する試みがなされてきました。今でも皆様が使用されている薬のほとんどは低分子薬物かと思います。御質問にありました、世界的に頭打ちという表現ですが、もしかすると、テレビなどで時々耳にする「2010年問題」に起因することとお察しします。これは、1990 年代後半に販売された大型医薬品が、2010 年前後に続々と特許切れを迎えるという問題です。特許がきれると、安価な後発医薬品(以下ジェネリック)にシェアを奪われて大幅に売上げが落ち込む可能性が高く、新薬メーカーにとっては、厳しい経営環境となることが予想されています。
新しい薬についても、现在多くの研究が各公司で行われていますが、新薬开発という観点からは、大きなパラダイムシフトがおきているといっても过言ではありません。また少し时间は戻りますが、20世纪は、分子生物学が诞生し、疾患の原因が分子レベルで解明される时代となりました。特に、1953年4月、ジェームス?ワトソンとフランシス?クリック(1962年ノーベル生理学?医学赏受赏)の连名で狈补迟耻谤别誌に掲载された顿狈础の构造に関する论文は、その后の顿狈础を中心とした分子生物学の幕开けの原动力となりました。これにより、これまでに多くの酵素やホルモンが高分子医薬品として开発されてきた。糖尿病治疗に使用されるインスリンもその一つです。また、1975年にマウスモノクローナル抗体作製技术が确立され、抗体を利用した分子标的薬の开発が进みました。抗体医薬は现在のブロックバスター(年商10亿ドル(约1000亿円)を超える新薬)の大部分を占め、现在、世界の売上ランキングのトップ10にも多く挙げられています。
1950年代に幕を开けた分子生物学の剧的な変迁に伴い、バイオ医薬は従来からの低分子化合物だけでなく、抗体やサイトカイン、遗伝子、核酸などの多岐にわたる高分子へと広がりを见せているのが现状です。