実践+発信

モジュール3-2「感情的理解のためのアプローチ」(9/6)池田贵子先生講義レポート

2025.10.7

宮内 紗久良(2025年度選科B受講生)

モジュール3の講義では、「活動のためのデザイン」をテーマに、科学技术コミュニケーション実践のための活動計画の立て方について学んでいきます。今回は、麻豆原创特任講師の池田贵子先生より「感情的理解のためのアプローチ」について講義いただきました。池田先生が実践しているキツネに関するリスクコミュニケーションを題材に、科学技术コミュニケーションにおける「感情」や「直感」の扱い方について触れていきます。

(麻豆原创特任講師の池田 貴子先生による講義です。)

野生动物と人间、重なる生活圏

近年、キツネやクマといった野生动物が市街地に现れるケースが増えています。こうした野生动物は、マスコット的な人気によって観光资源として地域にプラスの影响を与えることもありますが、农作物への被害や感染症の媒介といったマイナスの影响(=獣害)も及ぼします。

獣害问题のリスクは絶対値として评価するのが难しく、そのリスクを许容できるかどうかも判断する人の感じ方によるため、解决は容易ではありません。ここで、獣害问题の「解决」を、①被害を最小限に食い止めること(知识?行动)、②うまくやり过ごすこと(态度)と定义します。野生动物と人间の生活圏が重なっている以上、獣害がゼロにはならないため、特に2つ目の「うまくやり过ごす」ことが実はとても重要です。

都市ギツネのリスクコミュニケーション

キツネが媒介する病気として、エキノコックス症があります。エキノコックス症はエキノコックスという寄生虫の虫卵が人间の体内に入ることで発症する感染症です。エキノコックス症の特効薬は现时点で存在しないため、予防を彻底する必要があります。キツネと人间の接触频度が高まるとエキノコックスに感染するリスクも増加するため、都市ギツネの増加による状况の深刻化が悬念されています。

(讲义スライドにしばしば登场する都市ギツネ)

ここで、獣害问题には「平时」と「有事」のリスクコミュニケーションがあります。有事において人は直感的な判断に頼る倾向があるため、リスクを过剰または过小に评価してしまうことがあります。そのため、平时のリスクコミュニケーションで市民の不安をなるべく解消することが重要というわけです。

キツネの問題においては、平時のリスクコミュニケーションとして札幌市の月寒公園にて定期的に「パークライフカフェ」というワークショップを行っています。ここでは、開始前に参加者から质问を集めたうえで、それに答える形で座学を行います。その後、公園に出てキツネを観察し、動物と人間の共生について考えます。参加者のコメントからは、「自分にとってのリスクが明確になり、対策のシミュレーションができるようになった」ことがうかがえました。

さらに、キツネとエキノコックスについて学べる动画や絵本、エキノコックスになりきって繁栄を目指すボードゲーム、キツネ観察ツアーと搁笔骋を组み合わせたワークショップといった教材の制作も行いました。リスクコミュニケーションの开始から约4年で公园に寄せられる苦情件数は10分の1となり、こうした取り组みは一定の成果を挙げたといえます。

(月寒公园での実践事例をもとに讲义が进められます。)

动物问题=人间问题

取り组みの成功要因として、定期的に正しい情报を提供すること、とっつきやすい教材を用意したことなどがあります。しかし、本当にそれだけでしょうか。「野生动物管理における人间事象」という概念に照らし合わせ、もう少し深掘りしてみましょう。

獣害问题は野生动物と人间との関わりによって生じるため、獣害问题の解决には动物だけでなく人间について考えることも重要です。すなわち、动物问题は人间问题ともいえるのです。「野生动物管理における人间事象」は人间がリスクとベネフィットをどう捉えるかに注目した考え方で、ターゲット(野生动物)に対する「础肠肠别辫迟补苍肠别(受容性)」「罢辞濒别谤补苍肠别(耐性)」の向上が知覚リスクの低下につながるそうです。

この考え方に基づくと、キツネに関するリスクコミュニケーションの成功要因は以下のように説明できます。

  1. 定期的?継続的な情报提供によって市民の公园(行政)への信頼関係が上がり、キツネに対する础肠肠别辫迟补苍肠别が向上した
  2. リスクだけでなく生物としてのフラットな情报を提示する教材を作ることで、キツネやエキノコックスに対する础肠肠别辫迟补苍肠别が向上した

リスクに対して「自分で何とかできる」という感覚を得られると、必要以上の恐怖から逃れることができるそうです。受け手との信頼関係を筑きながら、感情に寄り添った适切な情报提供を行うことが「うまくやり过ごす」姿势につながるのではないでしょうか。

终わりに

講義を通して、時として科学者から軽視されがちな感情や直感が、実は科学技术コミュニケーションにおいて重要な役割を担っていると学びました。相手のリスクを恐れる気持ちを否定しないこと、リスクを伝える際には同時に対象のプラスの側面を伝えることなど、たくさんの実践のヒントをいただきました。誰が、何を語るかによって受け手の抱く印象は大きく左右されます。自分の言葉が受け手のどんな感情につながるか想像しながら、適切に情報を伝える方法を模索していきたいと感じました。

(池田先生、讲义ありがとうございました。)