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#36 薬物依存、そのとき脳で何が起きているのか?

金田勝幸さん(大学院薬学研究院 准教授)らが、コカインを慢性的に摂取することで活動が活発になる脳の場所を、ラットを使った実験で新たに発見しました。「モチベーションとは何か」を解明する手がかりにもなる成果です。

 

 

 

今回の発见の意义は、どこにあるのですか?

 

动物の脳には「报酬系」と呼ばれる场所(神経回路)があります。何か特定の行动を行って「望ましい」结果がもたらされたり、「気持ちいい」と感じると报酬系が活性化し、同じ行动を再び行うよう促します。薬物依存のときにはこの报酬系に、简単には元に戻らない変化(可塑的変化)が生じることが、これまでの多くの研究から分かってきました。

 

でも、この报酬系の活动とは别の、それをさらに制御するような场所が脳の中にあるのではないか、という点については、よく分かっていませんでした。私たちは今回、そうした场所、报酬系の神経回路(図の赤い矢印)を取り巻いていてそれを制御する「さらに大きな回路」(図の青い矢印)が実际に存在し、そこでも可塑的変化が生じていることを発见したのです。

 

 

この発见により、解剖学的に「近い」部位をつなぐ回路ではなく、もっと「远回りの回路」が予想以上に大きな役割を果たしている可能性が出てきました。今回の発见の一番大きな意义は、この点です。

 

 

报酬系そのものの役割について、もう少し详しく教えてください

 

报酬系は、动物が何か成功体験をしたときに、それを今后の行动に採り入れるよう学习を促し、适応的な行动パターンを获得するのに役立ちます。嬉しい、気持ちいいなど、「报酬」と感じられるようなものが与えられると、「腹侧被盖野」という场所にある神経细胞がドーパミンと呼ばれる神経伝达物质を放出し、この神経回路が働くことで行动が强化される(=再び同じような行动を行うようになる)のです。

 

この神経回路が无くなってしまうと、美味しいものを食べたり他人からほめられたりしても嬉しいと感じることができず、再び同じ行动を行おうと思わなくなります。ですから报酬系は动物にとって、とても大切なものです。

 

 

 

どうして「背外侧被盖核」という场所に注目したのですか?

 

报酬系に影响を与えている场所には、いくつか候补がありました。そのうち背外侧披盖核(はいがいそくひがいかく)は、腹侧被盖野のドーパミンニューロンと解剖学的に结びつきがあり、アセチルコリンという重要な物质を作っていることは分かっていたものの、どんな働きをしているのかは不明でした。

 

でも私たちは考えました。これだけ示唆的な「手掛かり」があるのだから、背外侧披盖核が薬物依存の际のドーパミンニューロンの制御に関係していても、おかしくないのではないかと。

 

オリジナルな研究成果をあげられる可能性が高いとも考えました。ここに注目した研究を谁もしていなかったからです。他の研究者より遅れて薬物依存の研究を始めたので、谁もやっていないところに手をつけようとの思いもありました。

 

 

 

どうして薬物依存のメカニズムに兴味を持ったのですか?

 

人间の「モチベーション」に兴味があるからです。モチベーションがどうやって脳の中で生まれるのか、どうして无くなってしまうのか、こうした问题を解きたいのです。

 

モチベーションは「依存」と深く関係しています。报酬系が过剰に働き、モチベーションが过剰に生じてしまうのが、薬物やコカインへの依存だからです。ですから、薬物依存のメカニズムを解明することで、モチベーションの问题を解く手がかりが得られるはずです。

 

 

 

「过剰」と「正常」の境目はどこなのですか?

 

非常に重要な质问ですが、答えるのが难しいですね。たとえば行动のレベルで言うと、美味しいものを食べたいから、がんばってお金を稼ぎまた食べに行くというのは、适切なレベルで过剰とは言いません。一方で、薬物が欲しくて犯罪に走ってしまうのは、过剰と言えるでしょう。个人个人によって「过剰」と「正常」の线引きは変わるでしょうが、非常に强い欲求を持続的に维持し、自分で抑えきれないレベルになったときは、过剰と言えるのではないでしょうか。

 

(今回の论文は、同じ薬学研究院の、黒泽谅さん、田冈直史さん、篠原史弥さん、南雅文さんとの共同研究の成果です。写真は左から、田冈さん、金田さん、篠原さん、黒泽さん)

 

 

「モチベーション」に兴味を持ったきっかけは?

 

脳が担っている机能には、记忆や、学习、运动の制御、意思决定など、いろいろあります。いずれをとっても、根本にはモチベーションがあるのではないかと思っています。「脳を调べて、心のことなどわかるものか」と言われた时代もありましたが、実験装置や技术の进歩、実験パラダイムの工夫などによって、だんだん、「心」に科学的にアプローチできるようになってきました。

 

そこで、こうしたアプローチでも「一番たどりつきにくそうな」対象の一つ、「モチベーション」に兴味を持つようになりました。难しいテーマであれば、研究者として一生仕事のネタが尽きないだろう、と考えました。もちろん、モチベーションの研究を通じて何らかの形で社会に贡献できればとも考えています。

 

今のところ、「薬物によってモチベーションが异常に上がった状态」を调べているわけですが、いずれは、「普通の状况」でのモチベーションを制御する生理学的なしくみを、神経细胞の活动を捉えながら调べていきたいと思っています。

 


(ラボの案内図。似颜絵が印象的です)

 

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2014.04.04

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