ベレムナイトとは、イカやアンモナイトと同じく、軟体動物の頭足類に属する生きもので、海中に棲んでいました。形はイカに似ていますが、体の内部に石灰質の殻をもち、それが化石として、2億年前から6500万年前(恐竜の生きていた、中生代と呼ばれる時期)の地層から、世界各地で発见されていました。
そのベレムナイトをめぐって、伊庭さんは何を発见したのでしょうか。
(ベレムナイトの復元図)
何を新しく発见したのですか
これまでベレムナイトは、约2亿年前、ジュラ纪の最初期に、殻の直径が5ミリほどの小型のものが北西ヨーロッパに出现し、その后2000年ほどはヨーロッパだけに生息し、种类も少なかったと考えられてきました。
ところが今回、同じ时代の宫城県南叁陆町の地层から、中型と超大型のベレムナイトの化石が多く出ることがわかったのです。しかも、通常は腹侧にある沟が、南叁陆のものでは背中侧にあり、形态が大きく违います。ベレムナイトがヨーロッパで出现したとされていた时期に、それとは违うグループのものが、日本にすでにいたのです。
さらに、日本で見つかったのと同じ特徴を持つベレムナイトが、中国の南部で、約2億3000年前の地層から出ていることも確認しました。日本と中国で発见されたこれらは、ヨーロッパのものとは別の、ベレムナイトの进化の初期を代表する原始的なグループだと考えられます。
これらを総合すると、「ベレムナイトはジュラ纪の最初期にヨーロッパで出现した」というこれまでの通説を全面的に书き改める必要があります。「后期叁畳纪~前期ジュラ纪に现在の南中国や日本周辺に原始的なグループが生息し,ジュラ纪最初期にはすでに多様化もしていた」とすべきなのです。
(ベレムナイトの化石。左の写真では、中央に丸く断面が见えます。右の写真は、日本で1904年に报告されていたベレムナイトの化石)
今回の発见に、どういう意義があるのですか
ベレムナイトは、叁畳纪とジュラ纪の境目で起きた大量絶灭を生き延びていたのです。一方、同じ头足类のアンモナイトは、多くのグループが、この大量絶灭の时期に姿を消しました。この违いは、头足类の进化と大量絶灭イベントの関係について、新しい知见をもたらしてくれる可能性があります。
また、中生代の前半ころは、ベレムナイトが、海に栖む大型の爬虫类(鱼竜)やサメ类にとって重要なエサでした。ベレムナイトが海の生态系で重要な地位を占めていたのです。ですから、ベレムナイトの进化や絶灭を手がかりに、海洋生态系の进化を解明することができそうです。
今回の発见は、南三陸町で新たにベレムナイトの化石を発掘するだけでなく、すでに報告されていた、日本や中国のベレムナイトの化石を再評価することで、なされたものです。アジアに注目することで、これまでの学説が大きく変わることがある、という一例です。
僕はドイツに留学して研究手法を学んできました。これからも、向こうの人たちがやらないことを日本でやろうかなと思っています。
(ベレムナイトの化石(カリフォルニア产))
この分野の研究者になるきっかけは?
いろいろありますけど、一番最初のルーツを考えると、幼稚園のころに病院のベッドで見た絵本かな。リン?バートンの『せいめい の れきし』です。
とても子どもに読める内容じゃない、难しくて。絵も、子どもに媚びていない。科学者が监修したわけじゃないので、内容的にはメチャメチャ古い。
でも、ちゃんとした絵本作家のものだったから、强い印象を受けたんだと思います。今でも持っています、ぼろぼろだけど。
(『せいめい の れきし』は今も読み継がれ、日本語訳は62刷にも達しています。原書は1962年にアメリカで出版されました)
化石には兴味がなかったのですか?
もちろん、ありました。でも、ちょっと违うんです。僕は化石という「窓」を通して、その先を见たいんです。ベレムナイトの进化や絶灭を通して、ベレムナイトをエサにしていた生きものについて知る、あるいは地球环境の変动を知る、という具合に。
なので、対象とする化石も、二枚贝とか底生有孔虫とかアンモナイトとか、ころころ変えます。知りたいと思ったことにあわせて、分类を勉强し、一から始めます。
(伊庭さんは、化石を2合炊きの飯盒(はんごう)に入れて保管しています。「僕が300個 購入しておくと、もし何かあったときに600人がご飯を食べられる。プラスチックの標本箱を使うこともあるけど、こうするだけでも違うかなと思って」)
南叁陆町といえば、津波の被害が大きかったのでは?
南叁陆町の歌津地区は、鱼竜を中心に、贵重な化石がたくさん発掘されてきた地域です。その南叁陆町でベレムナイト化石の调査をしたのは、2010年10月でした。その半年后、东日本大地震による津波で、南叁陆町は大きな被害を受けました。「鱼竜馆」に展示されていた化石も、多くが流されてしまいました。
この南三陸町の復興に、化石の研究者として協力したいと考えています。調査に協力してくださった方々への感謝の気持ちもあって、今回発见した新種のベレムナイトに、「歌津」にちなんだ名前をつけました。シチュアノベルス?ウタツエンシス(Sichuanobelus utatsuensis)です。
今回の研究に使った化石标本を、仮设の「歌津コミュニティ図书馆?鱼竜」に、解説つきで展示することも计画しています。学问的に重要な化石を、地元の文化遗产として认识してもらえれば、と思っています。






