保健科学研究院に千叶仁志さんを访ね、话をうかがいました。
どんな発见なのでしょうか
私たちの体の中には颁贰罢笔と呼ばれるタンパク质があります。そのタンパク质の働きを抑えると、善玉コレステロールが増えることがわかっていました。
そこで私たちは、食用にもなっている8种类の植物を対象にして、颁贰罢笔の働きを抑える効果を比べてみました。トマト、アボガド、ニラ、タマネギ、マンゴー、アロニア、そしてホップです。すると、ホップで最もその効果が强いことがわかりました。
ホップに含まれる数多くの化学物质のうち、何がそうした効果を生み出すのか、さらに调べていくと、「キサントフモール」という物质であることがわかりました。天然物の中から「颁贰罢笔の働きを抑えている物质はこれだ」と特定したのは、これが初めてです。
これまでも、たとえばリンゴから抽出されたポリフェノール类に、颁贰罢笔の働きを抑える効果があることはわかっていたのですが、「どの物质か」まではわかっていなかったのです。
(ホップ。白く見える、毬花(まりばな)とも呼ばれる部分が、ビールの原料となります。(写真:Wikipedia 「ホップ」より。撮影:Dr. Hagen Graebner))
実际に动物で、効果が认められるのですか
マウスを使って确认しました。
通常のマウスには、CETPというタンパク質を作り出す遺伝子がありません。そこで、ヒトのCETP遺伝子を導入した、実験用のマウスを用意します。そして 18週間にわたり、コレステロールの高い餌だけを与える、コレステロールの高い餌にキサントフモールも混ぜて与える、通常の餌を与える、の3つの場合について、動脈に蓄積するコレステロールの量を調べました。
すると、コレステロールの高い饵を与えたマウスでは、通常の饵を与えたものの约2倍のコレステロールが动脉に蓄积しましたが、キサントフモールも混ぜた饵では、通常の饵の场合とほとんど同じでした。
また、CETP遺伝子を導入しない通常のマウスでは、キサントフモールを加えたときと加えないときとで、ほとんど差がありませんでしたから、先のキサントフモールの効果は、CETPの働きに影響を及ぼしたからだと考えられます。このほか、キサントフモールにより、善玉コレステロールが確かに増加することや、 CETPの働きが抑えられることも、実験で確認できました。
(高性能の质量分析装置。试料のなかにどんな物质がどれくらい含まれるか突き止めるのに活跃します。)
ビールを飲むと动脉硬化を予防できるということですか
そんなに単纯ではありません。
「适量のビールは、コレステロールを下げる効果がある」などと言われてきました。その効果の一部は、キサントフモールによるものかもしれません。でもビールには、カロリーの高さや、アルコールの効果など、别の侧面もありますから、慎重に考える必要があります。
キサントフモールは、どんな仕组みで効くのでしょうか
コレステロールは、細胞膜やホルモンの材料として、私たちの体に不可欠なものです。おもに肝臓で合成され、タンパク質の粒子に包み込まれた状態 ― LDLと呼ばれます ― で血液の流れに乗り、体の各部に運ばれていきます。他方、体の各部や血管の壁から血液中に戻るコレステロールもあり、これはタンパク質の粒子に包み込まれた状態 ― LDLとは違った状態で、HDLと呼ばれます ― で、肝臓へと回収されます。
LDLとHDLのバランスが崩れ、血液中のコレステロール濃度が高くなると、動脈硬化になる危険性が高まります。LDLは、いわゆる「悪玉コレステロール」です。余分なコ レステロールは、LDLの状態で存在することから、こう呼ばれます。一方、コレステロールを回収するHDLは「善玉コレステロール」です。
たびたび名前が出てきた颁贰罢笔というタンパク质は、善玉に含まれるコレステロールを悪玉へと転送する働きをしています。ですから、キサントフモールで颁贰罢笔の働きを抑えれば、善玉が増えることにつながります。
なぜ颁贰罢笔に注目したのですか
1980年代に、善玉コレステロールHDLの値がとても高いなどの病状を示す病気が日本で発見されました。原因を調べたところ、CETPタンパク質が無いためだとわかり、CETP欠損症と呼ばれるようになりました。この研究のなかから、CETPの働きを抑えることで动脉硬化を予防する、という発想が出てきました。
これまで用いられてきた「スタチン」と総称されるタイプの薬は、悪玉コレステロールLDLの濃度を下げることで动脉硬化を予防するというものでした。スタチンのなかでも、世界全体で70%のシェアをもつ薬剤が、2010年に特許切れを迎えジェネリック製剤の攻勢にさらされる、という事情も追い風になったのでしょう。2000年代に入ったころから、CETPの働きを抑えるタイプの薬の開発競争が激しくなりました。
私たちは、こうした流れの中で颁贰罢笔に注目したのです。
(研究室の棚には、研究资料を収めたファイルがずらり。人类学に関係したのもあります。)
これから先の见通しは
今回の研究は、サッポロビール株式会社と共同で进めました。同社は、キサントフモールを食品や饮料に利用する方向で研究を进めていくと思います。ホップは苦みの成分ですが、キサントフモールには苦みがないことも好都合です。
私のほうは、コレステロールもその中に含む「脂质」と呼ばれる物质群を対象にして、キサントフモールの働きを、さらに调べていきたいと思っています。
かつて、人类学の研究にも一医学者として加わったことがあります。颁贰罢笔欠损症を起こす遗伝子の型は、ヨーロッパ人には见つかりませんでしたが、朝鲜族、汉族、シェルパ族(ネパール)、ネネツ族(ロシア)などには存在していました。面白いことに、颁贰罢笔欠损症は、日本人では贬顿尝コレステロールが高いという形で现れますが、これらの民族では违った现われ方をしていました。この违いの原因を调べていくことで、日本人の脂质代谢をより深く知ることができそうです。
脂质の研究が非常に広い可能性を持っている、という一例です。
(実験室では、この4月から卒业研究に取组む学生たちが、先辈の指导を受けながら準备を始めていました。)
※ ※ 取材后记 ※ ※
千葉さんたちの研究は、“食と健康を科学し、北海道発?健康科学産業クラスターの創出を目指す” 産学連携プロジェクトの一環として、サッポロビール(株)と共同で行われました。同プロジェクトの運営者が“お見合い”させてくれたそうです。
「公司と共同研究すると、出口を意识した研究をするようになり、视野が広がる」と千叶さん。その一方で「成果が出ても、特许の问题があり、すぐには発表できない。スピーディーに成果を発表したい大学院生などには、ちょっとかわいそう」と、学生たちのことを気にかける姿が印象的でした。





