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#111 形に魅せられて(1)~生き物は皆美しい。特にヒモムシは~

「小さいころに想像していた“何でも知っている博士”のイメージどおり」と理学部生物の学生たちに評される研究者がいます。ヒモムシの分類学を研究している柁原宏さん(理学研究院 准教授)です。臨海実習では「ヒモビル見つかったら私にください!」と学生たちに号令し、まるで少年のような笑顔とともに、ニコニコしながらヒモビルをサンプル瓶に入れていく姿は、学生たちのまぶたに刻まれていると言います。

なぜ、どういう意义があって、ヒモムシの研究をしているのでしょうか。そもそもヒモムシとは? 理学部生物科学科生物の学生佐藤さんと、ニョロニョロの生物が嫌いな社会人成田さんの二人がお话を闻きました。今回から3回にわたってお伝えします。

【インタビューワー:佐藤丈生/成田真由美?颁辞厂罢贰笔修了生】

(1949年にアラスカで採集された液浸标本をみる柁原さん)〈撮影:中岛宏章さん〉

美しきヌラヌラ?ヒモムシ

佐藤: ヒモムシって、柁原先生的に「こういうところが良いんですよ」みたいなのがあるのでしょうか。

(柁原さんにインタビューする佐藤さん)〈撮影:中岛宏章さん〉

柁原: ヒモムシを最初に见たのは修士1年のときです。きれいだと思いました。美しい。顕微镜の下で见ると、ヌラヌラしている感じですね。谷崎润一郎の小説に「ヌラヌラした」という表现が出てくる作品があるのですが、谷崎自身もそういう性癖を持っていたらしく、ひょっとすると自分もそういう「ヌラヌラした」ものを美しいと感じる人なのかなと思いました。

佐藤: ヌラヌラ。

柁原: ヌラヌラ。ヒモムシを见たのが先か、谷崎を読んだのが先か、もうだいぶ昔のことで、前后は忘れてしまいましたけど、美しい生き物だと思いました。

(中国扬子江河口の崇明岛で採集されたインヒモムシYininemertes pratensis)〈写真提供:朴 太緒さん〉

佐藤: 确かに、同じ细长い动物といっても、ミミズとかとは违いますね。

柁原: ヒモムシには节が无いのがまた良い。洁い。

佐藤: 洁い。

柁原: 洁いっていうとちょっと语弊があるかもしれません(笑)。生き物は基本的にみんな美しいのですが、特段、良いなと思ったのは节が无くてヌルヌル、ヌラヌラしているのが良いと思いました。

そうめん、きしめん、それヒモムシ

成田: 私、颜と手足の无い生き物が苦手で。ヒモムシってパッと见、うどんのように1本につながっている。

(柁原さんにインタビューする成田さん(手前))〈撮影:中岛宏章さん〉

柁原: 僕がまだ学生だったかな、京都大学の临海実験所に併设された水族馆にサンプリングに行ったときに、技官の人に「お兄ちゃん、何の研究してるの」と言われて「ヒモムシです」って答えたら、「あ、ちょっと见てもらいたいんだけど」って。待っていたら「これなんだけどさ」って言って、洗面器に流しそうめんみたいに山盛りになってるヒモムシを见せられて(笑)。水槽でヒモムシが大量発生することがあるんですよ。それをお箸ですくって(笑)。食べられるんじゃないかって思った。本当に麺です。そうめんみたい。

(繁殖したモエデヒモムシLineus sanguineus)〈写真提供:藤田宜伸さん〉

成田: きしめんでもない。

柁原: そうめん。あの太さはそうめんです。モエデヒモムシは细い。

成田: 他にもいろんな种类がいるのですか?

柁原: それこそ、きしめんみたいな平べったいオロチヒモムシもいます。

成田: 日本で一番长いヒモムシは。

柁原: 7メーター。サナダヒモムシ

成田: ううう

あらゆる场所にいるヒモムシ(ただし空中を除く)

成田: ヒモムシ、调べたら海の中にも淡水にも陆上にもいるのですよね。逆に、いないところってどこですか。

柁原: 空中(笑)

成田: 飞ばないんだ。飞べないですか。

柁原: ええ。飞ばないですね。

成田: いや分からない。飞ぶかも。

柁原: 例えば、滑空するカエルとかいますからね。

成田: じゃあ滑空するヒモムシが???

柁原: 滑空するヒモムシはいません。

成田: いませんか。

柁原: いません。

成田: そうか??? ヒモムシって普段はそんなに机敏には动かないのですか。

柁原: 动かないですね。たまに泳ぐときはありますが、それでも机敏じゃないですね。ゆらゆら。でも南の海にシュシュシュって泳げるのはいますね。

成田: これだからヒモムシが分からない!

柁原: バリオネメルテスというヒモムシです。バリオスって素早いという意味のギリシャ语で、素早いヒモムシという学名。シュシュシュって泳ぐ。冲縄で见た时にびっくりした。最初、ヒモムシじゃなくて线虫だと思った。ヒモムシにはいろんな种类がいますね。


(参考动画:すばやく泳ぐヒモムシ。種類は不明)〈転載:Swimming Nemertean by Jeff Caplins〉

成田: すごいな、ヒモムシ。

柁原: すごくはないと思うのですけれど。

成田: その振り幅がすごい(やっぱり飞ぶかも???)。

雌雄异体も雌雄同体もいる。でもよくわかってないヒモムシの増え方

成田: ヒモムシって、どうやって繁殖するのですか。

柁原: オスとメスが分かれている种类が多くて、卵で増えます。でも一个体にオスとメスがある雌雄同体の种类もいるのです。淡水のヒモムシには雌雄同体が多いですね。

成田: オスメス一绪の种类でも相手がいないと繁殖できないのですよね。

柁原: 自家受精ということ? おそらく一个体が卵と精子をつくって、それで自家受精しているのかなと想像はしていますけれど。それを确かめた人はいません。

成田: ヒモムシ、分からないことだらけ。

柁原: そうですね。それこそ繁殖生物学、生殖です。それは、あまり多くの种类で分かっていません。


(参考动画:亲ヒモムシから子どものヒモムシが直接生まれる
Prosorhochmus americanus)〈転載:Ribbon worm giving birth by Animal Earth〉

衝撃の捕食方法

佐藤: 実験室で饲育して増やせないと、行动や繁殖をきちんと観察することは难しいですよね。ヒモムシの饲育ってどうやるのですか。

柁原: 种类によりますね。何でも食べる种类と、「これしか嫌だよ」みたいなのがいて。ちょっと前まで钓り饵のゴカイを与えてイソヒモムシを饲っていました。

佐藤: ゴカイを食らう。

柁原: ヒモムシは吻を持っています。吻の先に针を持っている种类もいて、针で相手に伤をつけて、毒を出す。毒は神経毒だったり细胞毒だったりするのですけれど、神経毒にやられると、见る间に动かなくなってしまいますね。それまで泳いでいたのがシャキッとのびちゃって。で、动かなくなったところを丸饮みにしたり、胃袋を反転させて、消化液を出して、肉を溶かしながら吸う。

成田: 胃袋を出して溶かしながら。


(参考动画:吻を出す異紐虫類の一種)〈転載:ALIEN WORM SHOOTS GOOEY WEB by Animal Wire〉

毒で外敌から身を守るヒモムシ

佐藤: 逆にどんな外敌がいるんですか。ヒモムシって、ひも状で食べられやすそうじゃないですか。

柁原: ヒモムシのように体の柔らかい海の生き物たちは、柔らかいくせに生き残っているなりの理由があるのですよね。ヒモムシに限らずそれは多くの场合、毒だったりするのです。

佐藤: 体の中に毒があって、それで食べられない?

柁原: はい。イギリスに行ったときに研究者仲间から闻いた话があります。たぶんだいぶ盛っている话だと思うのですけど。かの国でも临海実习があって、おかしな学生も何年かに一人ぐらいいるのでしょうね。世界一长くなるブーツレースワームがいて、それを食べちゃった学生がいたらしくて。「どうなった?」って闻いたら、「咽头が肿れて、呼吸困难になって、気管切开した」って。たぶん、うそだと思う。僕をだまして(笑)。でも、毒があるのは本当なのです。

佐藤: ヒモムシ全员?

柁原: ほぼ全员。広岛大学の浅川学先生と共同研究したときに、片っ端からヒモムシの毒性を调べてもらったことがあります。ヒモビルというホッキ贝の中に住んでいるヒモムシがいます。かなり高い比率、十中八九入っているのですよね。

成田: じゃあ人間、ヒモビルを食べていることに…私もガンガン ヒモビル食べちゃったかもしれない。

柁原: そうなの。みんな食べちゃってると思うのですけれど、调べた中では、ヒモビルだけは毒が无かったのです。

(「ヒル」という名前がついているがヒモムシの一种、ヒモビルMalacobdella glossa)〈写真提供:柁原宏さん〉

佐藤: それはやっぱり、安全な贝の中に住んでいるからですかね。

柁原: わざわざ毒を作ったり、贮めこんでも良いことが无いのでしょうね。

成田: もし食粮难が世界的に起きても、ヒモムシはタンパク源にならない。

柁原: ヒモビル以外は。あれ食べようと思わないですね。

佐藤: お召し上がりになったことはない? 生物学者は必ず自分の研究対象を食べてみようと思う、みたいな话、ありますけれど???

柁原: 一回も无い。

〈撮影:中岛宏章さん〉

お话を闻いていると、ヒモムシの世界にヌラヌラと络めとられそうになります。次回は、柁原さんらによる最新のヒモムシ研究についてお伝えします。そのヒモムシは意外なところで採取されました。

《第2回に続く》

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2019.12.20

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