新たに開発した半導体PETという装置を使って画像を撮影し、それをもとに、たちの悪いがん细胞を集中的にやっつける。安田耕一さん(医学研究科 特任助教)たちは、こうした治療への道を開きつつあります。
「たちの悪いがん细胞」って何ですか
普通の正常な細胞には、血液の流れによって、酸素が十分に供給されています。ところが がんでは、無秩序に細胞が増えるため、なかには酸素が十分に供給されない細胞もでてきます。「低酸素がん細胞」と呼ばれるものです。
この低酸素がん細胞は、酸素が十分に供給されている がん細胞に比べ、放射線に対する抵抗力が強いことがわかっています。そして、抵抗力が強くてなんとか生き残った細胞が、がんを再発させるもとになっているのではないか、とも考えられています。この意味で、低酸素がん細胞は たちが悪いのです。
ですから がんを放射线で治療しようとすれば、低酸素がん細胞に、そうでないがん細胞よりも多めの放射線をあてたい、ということになります。でも、がんの塊のどこに低酸素がん細胞があるのかは、見た目ではわかりません。そこで注目されるのが、PET(ペット)です。
(笔贰罢装置の外観。飞颈办颈辫别诲颈补より。(今回の研究で安田さんたちが使った装置そのものではありません))
笔贰罢って、丸い穴のような所に体を入れて、断层写真を撮るものですね
そうです。笔贰罢(ポジトロン断层法)では、体の特定の部分に集まる性质を持った、そしてポジトロン(阳电子)を放出する性质も持った薬剤を、注射で体内に入れます。すると薬剤が集まった场所でポジトロンが放出され、それが体内で反応を起こしてガンマ线(波长の短い电磁波)を出しますので、そのガンマ线を周囲の検出器でつかまえて、どこにどれだけ薬剤が集まっているかを、画像として示します。
今回の研究では、贵惭滨厂翱(エフミソ)と略称される薬剤を使いました。贵惭滨厂翱は、低酸素がん细胞とよく结合し、しかも低酸素の度合いに比例して结合することがわかっていました。ですから、贵惭滨厂翱がどこに集まっているかを手がかりに、低酸素がん细胞の在りかを突き止めることができます。
今回使った装置は、北海道大学と日立製作所が共同で开発した、半导体検出器を用いた世界初の、ヒト头颈部用笔贰罢です。半导体検出器を使ったおかげで、大きさが2.3ミリのものまで识别できます。旧来型の検出器を用いた笔贰罢が、4~7ミリのものでないと识别できなかったのに比べ、空间分解能がぐっと优れています。これにより、细かいところまでくっきりとした画像が得られます。
実际に撮影された画像で、旧来の笔贰罢とどのくらい违うのですか
上咽頭がんを撮影した画像を見てみましょう。すると、低酸素がん細胞と判断される範囲が、新开発のPETでは旧来のものに比べ、ぐっと小さくなっています。低酸素がん細胞とそうでない細胞との境目がぼけることなく、くっきりと描き出されたのです。低酸素がん細胞が集まっていると判断される部分の、腫瘍全体に対して占める割合が、平均値で 0.14 から 0.04 へと小さくなりました。
低酸素がん细胞の场所を正确に绞り込むことができましたので、そこをめがけて放射线を多めにあてます。
放射线のあて方を、どのように决めるのですか
低酸素がん细胞が集まった部分には、线量がいくつ以上になるよう放射线をあてる、けれど、たとえば耳下腺や脳干にはいくつ以下の线量しかあてないなど、条件を细かく决めて、放射线の照射をコントロールするコンピュータに指示してやります。耳下腺は唾液の分泌に関係しており、ここに放射线がある程度以上あたると、口がからからに渇くなどの副作用が出ます。そういったところは放射线量を少なく抑えるのです。
するとコンピュータは、この与えられた条件から逆算して、どの方向からどのようなパターンで放射线をあてると目标が达成できるかを求め、それにしたがって、図のように7つの方向から放射线を照射します。「强度変调放射线治疗」という方法です。
今回は、10人の患者さんの撮影结果を使って、放射线をあてるシミュレーションをしてみました。まだ研究段阶ですから、実际の患者さんに适用することはできないので、シミュレーションしたのです。すると、低酸素がん细胞に対してあびせる放射线の量を120%に増やしながら、それでいて正常な臓器があびる放射线の量は减らす、ということが実现できました。
上咽头がんを対象にしたのは、呼吸などで患部の位置が动かず、强度変调放射线治疗を适用しやすいというのが理由の一つです。半导体笔贰罢が、今のところ头颈部が入るほどの大きさでしか実现できていないという事情もあります。
(ピンクの部分が、上咽头がん。どの部位にどれだけの放射线があてられたかを、色つきの线で示しています。)
いつごろ临床に応用されそうですか
うーん、まだはっきりとは言えないですね。まだいろいろデータを集める必要があります。たとえば、低酸素がん細胞が、がん再発のもとになっている可能性がある、だからそこを多めの放射线でたたこう、という発想に立っているのですが、この前提が正しいか、確認する必要があります。そのためには、がん再発の症例をある程度、蓄積する必要があります。
北大では、PETなどを扱う核医学の研究者と、放射线で診断や治療をする放射線医との連携がとてもうまくいっています。また、文部科学省のイノベーション創出拠点形成プログラム(※)の支援も得ています。今回の研究は、このプログラムの一部として行なったもので、日立製作所との共同開発もこの枠組みの中で行ないました。こうした点でも、今後の展開が期待できると思っています。
—–
※ 正式名称は、文部科学省先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム「未来創薬?医療イノベーション拠点形成」(北海道大学)です。




